胸に残る一番星 | ナノ

  毎日140字挑戦(2ー3月)


*時間軸はバラバラ
*ついったで載せたものより修正、加筆してることもあります

*お題元
○○を使わない140字小説お題
140文字で綴るSS小説お題

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『無敵』/0303

その呪文をかければ鉄の塊と化して、攻撃を受けなくなる代わりに一切行動はできない。使い所が難しいよねと勇者がぼやいた。
カミュとしては防御に徹するより攻撃したいからごめんだ。それに、あの姿は思い出してしまうものもある。
……と口にしたら二度と使わないとか言い出しそうなので黙っておこう。


『孤独』/0302

王国の城門が遠くからでも見えて、果たしてあそこで何が待ち受けているのか、膨らむ期待と不安。
村を出てからずっと高揚感は続いているけれど、それらを何気なく話しかけられる相手がいないのはやっぱりさびしいものだな。と思っていたら一緒にここまで来た馬が不意にいなないた。
ああそうだね、おまえがいたね。それじゃあ行こうか。


『お気に召すまま』/0301

旅している間は守備力第一、動きやすさ重視の装備品をつけていたものだが、平和になった今は何を着たって自由だ。確かにそうだけど。
カミュに着てみてほしいものがたくさんあるなあと目を輝かせる相棒に、どうしたらいいのやら。
あんまド派手なやつはやめてくれよ。それ以外だったら、まあいいけどさ。


『すれ違わない』/0228

カミュはイレブンを見つけるのが上手い。我らが勇者さまは何にでも興味津々ですぐ首を突っ込むたちだから、新しい街に来たときにはよくはぐれるものだが、カミュのおかげですぐに合流出来る。
何かにおいでも嗅ぎつけてるわけ?と聞いたら、ま 元盗賊のカンってとこかな、って。いやそれ盗賊関係ある?


『やわらかい』/0224

「僕のおじいちゃんも母さんも大きかったんだ」
「大きい?」
「えっと…デルカの女将さんみたいな…?」
「…なるほどな」
「だから君みたいな細身の人にこうされるの、新鮮だ」
「…ふくよかじゃなくてごめんな」
「どうして謝るの。…あったかいよ、すごく」
「…そっか」
「うん。…ありがとう」
「おう」

 
『交渉決裂』/0224

使わなくなった道具を売ることをカミュに任せきりなのが申し訳ない。
「僕もやるよ!」
「…待て待て、まずはオレと練習しようぜ」
それじゃあ袋の中から適当に取り出した短剣をひとつ、100Gでどうですか。
「はあ?お前が作ったものがそんな安いわけないだろ」
ええ、逆値上げしてくる商人さんなんている?


『狭い』/0213

「なあ相棒、クレイモラン出る前に一つ聞きたいんだが」
「えっ何?」
「……今のテント、ちっとぎゅうぎゅうじゃねえか?」
「……あー、グレイグが入って人数増えたからね……」
「ほんとは密かに前から思ってたんだけどよ……お前も寝辛くないか」
「思ってたなら言ってよ!買いに行こう!」
「おう」


『まどろむ時間』/0211

ぬくいものを感じて、ぼんやりと目を開ける。左には白い獣…ムンババがいて、右の方は相棒がぐうぐう寝ていた。
彼はいつの間にここに来ていたのだろうか。わからない。
そんなことより、ああ、涼しさを求めてこの穴蔵に来たのに、相棒のぬくもりがほどよく心地よくて、また眠気に誘われる。
すっかりだらだらした生活が染みついちまったなあと思いながら、カミュは再び目を閉じた。


『暑い』/0210

やっぱりここにいた。ムフォ〜。
お昼になっても散歩から帰ってこないカミュを探して村中を探し回っていたら、ムンババのいる穴蔵で発見した。ここは元々ひんやりしていて夏でも涼しいのだ。
もしかしたら、故郷の洞穴を思い出して…ということもあるのかな。だとしたら切なくなるけど、すやすやと眠るその顔は安寧そのものといった感じだから、まあいいか。


『裏切りの洞窟』/0209

薄暗い洞窟で、はぐれてしまった相棒と再会した。「かみゅ!やっと見つけた!」と嬉しそうなそのカオに、躊躇いなく一発拳をぶち込んだ。不意打ちが効いたのか、ニセ者の野郎はあっさりと崩れ落ちながら、ナゼ、と問うてきたので嘲笑する。
まったく、オレの勇者さまがこんな弱っちいわけないだろう。

加筆


『利き手』/0208

何を落ち込んでるんだ相棒。ん?左利きは右利きと比べて寿命が短いってこの本に書いてた?ちょっと読ませてくれ。
……これって要は世の中右利き用に作られたものが多くて、ストレスがかかるからってことだろ。じゃあ今のオレには無関係な話だ。お前と暮らしてて毎日楽しいからな。
……今度は何だ、100歳まで一緒に生きよう?途方もねえけど、お前となら悪くないな。


『それで良かったのに』/0207

大樹からの帰り道、あんたはこれから何がしたいの?と突然問われて戸惑う。自由になった今、望むこと。
何もないなんて言わせないわよ!とベロニカが言い、また一緒に旅をしたいですねとセーニャが微笑む。
けれど、君たちがそうやって笑っていて、みんなも帰りたい場所に帰れたのだから、僕はそれ以上なんて。
いいじゃない、欲張りなさいよ!


『キス』/0206

望むことなら何でもしてやりたいが、さすがに気恥ずかしい。だってそんな、いかにもなこと。
「……だ、だめならいいから……」
ごめんね変なこと頼んで!行ってくる!と背を向けたイレブンの腕を慌てて掴んで、勢いでその頬に口付けた。
「……気をつけて行ってきな」
「は、はい……」
「って、お前の方が照れるなよな……」


『記憶の中の二人』/0205

あの青髪の盗賊は、“悪魔の子”と共に脱獄した後も、追われることを知りながら共にいるのは何故なのか。よほどの物好きか、あるいは元から同胞だったのだろうか。
ある意味では悪魔の子よりも奇怪で、長らくの疑問だったその答えが、“勇者”の口からぽつぽつと語られる。
「カミュがどうしてついてきてくれたのかは、僕にもわからないけど、……大事な相棒だよ」
「……そうか」
早く再会できたらいいな、などと言えた立場でないので、頷くほかなかった。


『時計』/0204

塔の中心で落ちゆく砂を見ていると、焦燥感を覚えるのは何故だろうか。
また初めて来た気がしないこの感覚も、先を行くイレブンのカオが強張っているのと関係はあるのか。
なあ、オレたちはあの砂のように、気付かないうちに大事なもんが零れ落ちてるんじゃないか。
その背中に、心の中だけで問いかけてみても、当然、答えは得られなかった。


『節分』/0203

困ったな。今日は節分という行事をするらしく、詳しく話を聞いて「じゃあオレが鬼役をやるよ」と申し出たのだが。
相棒が仕立てた鬼の面と赤い衣の出来がよすぎて、村の子どもたちは怖がるどころか、カミュ兄ちゃんかっこいい〜!と取り囲んできたのだ。
おいおいお前たち、豆まきやってくれよ。お前も笑ってないで何とかしてくれイレブン。


『自由』/0202

「君とふたり旅してて気づいたんだけどさ」
「おう」
「すべきことがたくさんあったあの旅と今は全然違うけれど、…でもやっぱり、変わらないものもあるなって」
「…例えば?」
「…蒸し風呂上がりに飲む牛乳はおいしい!」
「…ははっ!違いねえな」
「もう1本飲も」
「飲みすぎるなよ」
「はーい」


『ごく普通』/0201

 妹からの手紙を読むときの相棒は内容によって百面相になるのでおかしくて愛しい。
「マヤちゃん、何て?」
「ああ、すっかり学校にも慣れたし特に書くべきこともないからってたった一枚だぜ、まったく」
 なんて言いながらも嬉しそうに微笑んでいて、よかったねえと返す。ああほんとに、こんな日々の為に頑張ってきて、よかった。



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