[本文・魔戦プラクティカ]ヴェルナの小さな我が儘〈ヴェルナ、ブリゼール/ラブラブ?〉
19th.Dec.2015
「ねぇブリゼール様。一つだけ、私の我が儘聞いてくれませんか」
「我が儘?」
「しばらく……抱いててほしいんです」
ヴェルナがそう言うと、ブリゼールは無言で彼女の体をかき抱いた。
思いを寄せる人の胸に抱き締められて、その顔を見上げられる位置を頭を動かして探す。幾度か試みたのちに丁度いい場所を見つけたけれど、見上げた上官の顔はぼやけてよく見えなかった。
(まぁいいや、見えるもの以外でブリゼール様の感触を味わっとこう)
彼女は目を閉じて上官の胸に身を預け、その肩に頭をもたせかけた。ブリゼールの匂いに包まれて、体の温もりが衣服越しに伝わってくる。
「ヴェルナ。ヴェルナ……」
氷使いの声が彼女の名を呼び、骨ばった大きな手が気遣わしげに髪を撫でる。
(ブリゼール様。今、あなたの腕が私を抱いて、あなたの唇が私の名前を呼んでる。あなたの瞳が私だけを見てる……。やっとあなたは私だけのものになったんだ)
目を閉じてブリゼールの存在をすぐ近くに感じながら、ヴェルナは微笑した。