◆任務初日

　　ルミナスメイズの森　魔女の森　マリアの広間

……！
これは……鉄の壁が急に……？

チッ

イーリス、無事か？

おおっ、トウヤか！
問題無い！ありがとう！

ウッゼェんだよ！！！！！(警棒で思い切りトウヤに 殴りかかる)

ガキンッ(左腕を鉄で覆ってガード)
……ッ、何なんだよ、急に……！

お、おい、ナンバー！？

ウゼェ、ウゼェ！
ウゼェんだよ！！！
何勝手に俺の目の前に立ってんだよ、目障りなんだよ、どけよクズが！！！(左脚でトウヤの脇腹を蹴る)

ぐっ……(受け止める)
お前こそウザったい……！
会う度突っかかってくるな、鬱陶しい……！

お、おいナンバー落ち着け！(間に入って引き剥がす)

触んじゃねぇよクソアマ！

ほぉら、口悪くなってきたぞー？
いいか2人とも、こうなった理由は全く分からんが、とりあえずここでやり合うのは無しだ。

俺はそんなつもりは無い。

原因はてめぇだよクソ野郎。

あーはいはい、口論も止めような。
トウヤ、どうしてこっちに？

……戦力が足りないと……。
向かっていたらセイルが居なかったから何かあったんだと思ってここまで入った。

ハッ、やっぱてめぇはノロマだ。

……あ？

おい煽るんじゃない。
今そこに伸びてるやつ2人なんだが……

伸びてる……？
死んでるんじゃないのか？

あー、多分生きてる、はず。
こいつらがこの森を襲ってきたんだ。
セイルもそっちのでかいヤツに喰われかけて……

喰われ……？

ああ、今治療中だ。
きっと大丈夫だ、フレデリシアもそう言ってた。

……そうか。

こいつらの仲間が軍の方にも攻撃したらしくて、そっちを片付けて話を聞いたところ、別のやつがこの森を襲うつもりだと吐いた。
ってことで、ナンバーとシンゲツが遣わされたそうだ。

……なるほど。
……。
……捜索班は、未だ発見に至らず。

そうか……難航しているな。

今は、デッドラッドやラカルト、新人のラピート、その他に捜索に長けた者が十数名加わって捜索を続けている。
痕跡は残っているが……追いつけていない。
確実に跡は追っているんだ。
もう少しかかる。

なるべく早く見つけないと、こうしている間にもセナちゃんの体力は消耗する……。
私はマリアさんに残れと言われたんだ。
それに従おうと思う。

分かった。
お前がそうしたいならそうしてくれ。
あと……(ナンバーを見る)

あ、ナンバーは帰るらしい。
こいつらのことも報告する必要もあるしな。

……。

んだよ腹立つな、こっち見てんじゃねーよ、殺すぞ？

……少しいいか。
言っておきたいことがある。

……あ？
テメェの言葉に従う気はねぇ。

……まずお前だけの耳に入れるべき内容だ。
帰る前に聞け。
お前の仕事に関わる。

……チッ。
調子に乗んなよなまくら。
手短に済ませろ。

……。(いちいちうるさいヤツだ)
……イーリス、何かあったら呼んでくれ。
すぐ戻る。

了解。







……手短に話す。
単刀直入だが、お前のところのミカヅキが、さっきのバンギラスの男と会っているところを見かけた。

……あ？

敵同士という感じではなかった。
知り合いと会話をしているような……
殺伐とした雰囲気ではなかったから、そのまま見逃したが、さっきのバンギラスを見て……あまりいい話をしていないんじゃないかと思ってな。
……ミカヅキが任務に出て以降、お前は本人と会ったか？

テメェはうちの隊員が敵と取引でもしたと言いてぇのか？

……悪いが……

何が悪ぃだよ、そう思ってることには変わりねぇんだろうがハッキリ言え愚図が。
アイツは馬鹿だからな、有り得ねぇ話じゃねぇ。

……。

勘違いすんなよ、テメェを擁護してるわけじゃねぇからな。
単にアイツは自分のやりたいことを通すための過程に善悪を考慮しないだけだ。
ただ、馬鹿だから黒幕にもなれなければ、下っ端として動くにも不十分だろう。
命令に従えないんだからな。
目先しか見ていない、小賢しい女だ。

……アイツは……、こちらの対処能力を伝えたかもしれない。
だから……

だから、なんだよ？
アイツがネタバレしてるからガキ1人見つけられない？
クソバンギにイーリスが弄ばれた？
笑わせんなよ、ネタバレがどうしたよ？
第一部隊が出ておいて、手の内明かされたくらいで手こずってんのか？
そこまで無能の集まりだったか？

……。
数が若いから有能だとは誰も言ってないと、何度言わせる……

お前がイーリスについてれば傷つかなかったろうが。
ババァの意思を尊重だ？
ただのワガママだろうが。
付き合う必要ねぇだろ、くだらねぇ。

……やっぱりお前とは合わない。

合ってたまるかよ。

イーリスのやり方があるのは確かだ。
俺は交渉には向かない。
お前もだろう。
だからそちらには口出す気は無い。

ボルドーの交渉は一度見た事がある。
それをイーリスがどれほど盗めているか確かめる価値はあるだろうが、あいにく俺にそんな暇はない。
お前らのガキ探しが終わってんなら少し留まってもいいかとも考えるがそんな段階でもねぇ。
テメェらは甘いんだよ。
……。
ミカヅキ！！！！！

！

……ッ、は、はいっ、ご主人様、ミカヅキはここにいますッ！(飛び出して膝をつく)

……いたのか。

テメェ、今日の任務、俺はお前になんて命じた？

……ッ！
実地調査です……

分かってるじゃねぇか。
じゃあお前はこの数時間ここで何をしてたんだ？
言ってみろ。

……、あ……実地調査を……

ぁあ？

……うぅっ(ビクッ)

何をしてたか、聞いてんだよ、ミカヅキ？

……っ、第一部隊長を、差し上げるために……

……は？

で？

そのカラスを攻撃したり……男に、森を襲わせました……
第一部隊長がいると知ったので……

お前……

俺はそう命じたか？

い……いいえ……ッ

バチンッ(ナンバーがミカヅキに平手打ちする)

ひッ……

テメェは命じたこともまともにできねぇ癖に無駄なことで貴重な時間を浪費したのか？
俺が命じてる以上お前のその時間も俺のものだ、分かってんのか？

……あ、ああ、も、申し訳ありませんッ、ご主人様、お許しください……！！

許されたいなら端から命令通りに動け。
何のために傍に置いてると思ってる？
役に立たねぇんなら軍にも必要ねぇ。
当然俺の傍に置く必要もねぇぞ。

い、嫌です！
お傍に置いてください！！
何でもします！！
ご命令通りにお仕え致します！！！

黙れ。
テメェの言葉は信用しねぇ。
態度で示すしかねぇぞ。
調査ならジャックが一通り済ませてる。
役に立たねぇテメェの分までな。

……！
そんな……

分かったら、さっさと帰って茶でも淹れろや。
俺はこれから帰るぞ。
俺が帰るまでに茶も淹れられないんなら本気でお前を捨てる。

！！！
承知しました、失礼致します！！！！！(全速力で帰る)

……。
馬鹿だからだ。
自分のこと以外何も考えちゃいねぇ。
テメェらみてぇな生温い環境で育ってねぇんだよ。

……。

この軍にも、命じられなきゃ動けない人種はいる。
そうしなきゃ生きてこられなかった、そんな場所もガラルにはある。
反吐が出る。
……俺の時間を無駄なことで費やしやがったな。

……費やした時間はミカヅキに襲われた詫びとして貰っておく。

……ハッ、上等だわ、釣りはいらねぇ。
あんなクズの制圧とこの時間が釣り合うとでも思ってんのか？
それよりテメェは早よガキ探しに行けや。

分かってる。




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