◆イーリスの勤務日

　　ガラル軍　ロビー

あっ、イーリス、トウヤ！お疲れ様！(手を振る)

キーウェン、どうしたんだ？

あの、さっき総隊長から出張を頼まれてね……

出張？

うん、それにイーリスとトウヤも一緒に行ってほしいって、それを伝えようと思って……

なるほど。

それが急な話で、出張が明日なんだ。

明日！？

また総隊長の思いつきか？

あ、いや、そうじゃないみたい。
突発的なものみたいな言い方はしてたけど……。
詳細は2人も揃ってから話すって言われてるから、俺もまだ予定しか聞いてないんだ。

そうか。

だからこのあと、総隊長の部屋に行こう。

了解。準備できたら声掛けるよ。

うん、よろしく。
じゃあまた後でね。

おう。
出張か〜何するんだろ。

さあな。
総隊長が絡む突発的な事案なら、あまり簡単なものじゃないかもしれん。

そうなのか。

例とすれば、デッドラッドの捕縛がそのひとつだ。

わー、難易度高めだな。

とにかく、話を聞いてみなければなんとも。

よし、さっさと聞きに行こう。
ああ、明日もう一度第三部隊を訪ねようと思ったが、難しいかもな。

……まあ、仕方ない。









よし、じゃあキーウェン拾って総隊長室へ行こう。

ああ。
……。
うわ……(向こうから来た……)

ん。
おやおや、トウヤくん、ヘラもいなくなった事だしようやく隊長になれましたかねぇ！？
第一部隊の隊長ともなればさぞ鼻が高かろう！

……。

ほら何か言ってみろよ、第一部隊隊長様のありがたぁ〜いお言葉、頂けますかぁ？

……お前と会話をするつもりは無い。

……お、おい、どうした……？

ん？
誰だそいつは……(トウヤどける)

おおっ、な、なんだ？

やめろ、触るな……っ

……おま……、！！？///(ｷﾞｭﾝｯ)

うお……
トウヤ、もしかして第三部隊の隊長の……？

……ああ。

トウヤ……お前、女ができたのか？ぁあ？
は〜第一部隊の隊長ともなれば余裕綽々、女まで作るってわけか、良いご身分だなぁ？

絡むな。
お前と口論する気は無い。

トウヤ、ちょうどいい、私が挨拶しておく。
隊長同士、いい関係を作っておかないと……(ｺｿｺｿ)

いい関係……？
この通り最初から喧嘩腰だ、こいつに限って、いい関係になれる人間なんていない。
こいつが考えるこいつと対等な人間はほとんどいないに等しい。
こいつの上か、大概が下だ。

それでも、顔を合わせないのも失礼だ。
1度も顔を合わせないまま、人づてに聞いた話だけを頼りに避けていてはダメだ。

俺の言うことが信じられないのか？

お前こそその発言は傲慢だと思わないか？

ッ……

……いや、信じているよ。
だからそのつもりで話をする。
心配するな、これでも外交部にいたんだ、話し合いや駆け引きには慣れてる。
何を言われようと止めてくれるな。

！
……ったく馬鹿……、馬鹿真面目……。

隊長らしく、堂々とさせてもらうぞ。

……どうぞ。

この俺様を放置して、こうも堂々とイチャイチャを見せつけられるとは思わなかったぞ。

こちらの話で大変失礼しました。
私は第一部隊隊長、ストリンダーのイーリスといいます。

……。
……は？お前が隊長？
じゃあそこのデカいのはどうした？

私の隊の、隊員の1人です。
私の補佐をしてくれております。

……あっははははっ、おま、お前、また隊長になれなかったのか！！？
デカいだけの無能かよ、あっはは、お前ここに、第一部隊に何年いるんだよぉ！
っくく……だっせぇ、ほんとだせぇなぁトウヤくん？

申し遅れ誤解が生まれてしまっていたようで、失礼いたしました。

んで？
その隊長さんとデキてるって？

調子に乗るなよ……。

……部隊長ともあろうお方がそのような物言いをなさるとは……
第三部隊の底が知れよう事かと思います。

あ？

これも誤解が生じてしまっているようですので訂正しますと、私とトウヤは交際などしておりません。
信頼のおける仲間と認識しております。
なにぶん初めての隊長ですので、至らぬ部分にはトウヤからの助力が不可欠なのです。
今後現場を同じくする際には、未熟な部隊長へのご指導ご鞭撻をよろしく願います。

……へぇ、お前こんないい女そばに置いといてモノにできてないのか……
やっぱトロイのは変わらねえのなぁ……さっさと襲っちまえばいいのに。

……。(ﾋﾟｸｯ)

なあ隊長さん、俺の女になれよ。
俺の隊に来て、俺の補佐役になれ。
いい思いさせてやるよ、そこの木偶の坊なんか捨てちまえ……(触れようとする)

触るな。(ｷﾞﾁｯ)

自分のモノでもないのに、しゃしゃり出てくるんじゃねぇよ腰抜け。
黙って指くわえて見てろ。

……ふっ、言わせておけば、謗りしか聞こえんな……

……何だと？

品のないやつだ！
汚い言葉で自らの評価を落としているということに気づいていないのか？
周りを見れば焦って貶し飛ばして、そうやって相手を見下して、上に立ったつもりか？
そう見えているのはお前だけで、他人を卑下しても何も変わらないぞ。
自身の立場を悪くするだけだ。

……ッ、てめぇ舐めたクチ聞いてんじゃねぇよ！！
こないだ隊長になったようなやつがずいぶんと偉そうだなぁ！！恥ずかしいと思わないのか！？
女だから優しくしてやったと思えばすぐ付け上がる！これだから女は！！

ははは面白いやつだ、どこからツッコんでやろうか！
舐めたクチ聞いてんのはどっちだ！！
お前にもその｢恥じらい｣ってものがあるならこんなことにはなっていないだろうよ！
それが人と会話をする態度か！？まず礼儀を学べ！
そして、女だから、なんだ！
女はどうだから優しくしてやらねばならん？言ってみろ。
お前の言う｢優しく｣は｢女を口説いて傍に置いてやること｣か？聞いて呆れるな！
お前の下に付くことになるならば組織を辞する方がまだマシだ！
お前は私の何を知っている？
何も知ろうともせずそう人を小馬鹿にするのも大概にしろ。
ここには階級も地位もない。
誰がどんな力を秘めているか、どれほどの実力を持っているか……知ろうとしなければ分からないことだ。
お前は行動隊にいる時間の長いトウヤのことでさえ何も知らないだろう。
でなければそんな軽口が叩けるものか！

……ッ、！！？
……お、前こそ、俺を知らないだろうが……ッ

だから！
お前を知るためにも！！
こうやって挨拶をしているのに！！！
お前が拒んでるんだろうが！！！！！！！
言わないと分からないか！！！！！！！！(ﾋﾞｼｯ)

……ッッ

……。(ひと息)
初対面で説教など私もしたくないが、そうも言ってられない。
誰も叱らなかったんだろうな。
隊長が何のために存在しているか考えてみなさい。
ただ隊の中で一番武力のある者、社会的地位の高い者が上に立ち、独裁するのが役柄ではないぞ。
隊の顔になることを重々承知するべきだ。

テメェ……

……ええ、きっと、あなたの隊の方々も実力者揃いでしょうから。

……！

私も私の隊の皆のことを誇りに思っています。
とても優秀で、大切な仲間であり家族であり……
あなたも隊の皆さんを大切にしてあげてください。
その方々の顔に、泥を塗らぬよう、恥じぬような、理解のある隊長に努めていただきたい。
私はそうありたい。
同じく隊長として、お互い精進しましょう。
初対面にも拘わらず、差し出がましく講釈を垂れてしまい、大変失礼しました。
これからよろしく頼みます。(手を差し出す)

……チッ、生意気だわクソ女。(ﾍﾟｼｯ)ｽﾀｽﾀ

……イーリス、大丈夫か？

……。
ふふっ

だ、大丈夫か……？

あははははっ、アイツほんっと腹立つなぁ！

すまん。

なんでトウヤが謝るんだよ！

……何を言っても聞きやしないから、放置してた。
お前が罵声を浴びる必要はなかったのに……悪かった。

だからって、お前がどうにかしないといけない理由もないだろ。
さっきのも最後は生意気だって言ってたな、正論で攻めてみれば案外納得したんじゃないか？
悪態ついてる自覚はあるってことだ、まだ良い方だな。

まあ……。
だからと言って、うちの隊長が馬鹿にされるのは我慢ならん。
もう挨拶は終わったんだ、また会いに行こうなんて考えないでくれ。
1人で行くなんて以ての外だ……何言われるか、何をされるか分からないからな。

心配しすぎじゃないか？

ダメだ……お前あいつに絶対目つけられてる。

マジかよ。

めんどくさいぞ……
触られそうになったらすぐ逃げろ、誘われても絶対について行くなよ？

……えっ、そういう目の付けられ方なのか？

……あいつの女癖から言えば、有り得ることだ。
お前がいくらさっきみたく叱っても、次会ったらどういう反応してくるか分からないからな。
……過去にあいつに説教したのはヘラくらいだった。それでも……

そうなのか！
でも懲りてなかったんだな……

今じゃヘラも辞めたし、また態度がでかくなってきてる。
さっきも触れようとした……
第三部隊のやつらに普段どんな対応をしてるのかは知らないが、あいつがそばにいるときはちゃんと警戒していてくれ。
もし次、触れようとしたら取り押さえる。

ちょ、取り押さえるは大袈裟じゃないか？(笑)
ちょーっと触ったくらいで、何も減るもんじゃないし。

……さっきのは不快に思わなかったか？

うーん、まあ、多少はな〜
あはは、ぐいぐい来るなコイツ、って感じかな？
衝撃で言えば、お前が一緒に暮らそうって言ってきたときとそう変わらないかな。

……。
そ、れは……(困)

あ、ちょっと、冗談冗談！(笑)
ぜんっぜん気にしてないし！
お互い、一緒に暮らすのが合理的で良いじゃないか。
お前のさっきの言われようからすると、確かにナンバーと2人同室はキツそうだ。

……まあ。

いや、良かったよ、早いうちにナンバーに会えて。
もう一度第三部隊に行く手間が省けたな。
しっかり挨拶もかましたし、これで文句の付けようがないだろう〜

……さっき叱られたのを根に持ってもおかしくないがな……

あはは、どうかな〜、次会ったときの反応でも楽しみにしておくよ！

……。
お前が気にしてないのなら、それでいいよ。

うんうん、お前が気を揉むようなことじゃないさ、気にするな。

ああ。
ただし、おやつに釣られてほいほい付いて行ったりしないようにな？
ちゃんと気をつけるんだぞ？

あはははっ、了解了解！
いい歳してどんな心配されてるんだ！(笑)




→　1-21 魔女の警告

←　1-19 挨拶回り2

←←HOMEへ戻る


まとめ 1- 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18 / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42 / 43 / 44 / 45 / 46 / 47 / 48

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove

- ナノ -