◆各隊再編成日の翌日　夜

　　ガラル軍　トウヤとイーリスの部屋

……。(ガチャ)

こんばんは、トウヤさん。

……明日？

はい。
ヴィンセン様がロビーでお待ちです。
急ぎ運んでほしいものがあると。
アリア様もご一緒ですよ。

……ご息女も一緒か。
……はぁ、分かった、すぐ行く。

トウヤ、どうかしたのか？

これは、イーリスさん、初めまして。
僕はレイナードと言います。
運び屋をしております。

初めまして。
……ということは、運び屋の仕事が入ったってことか？

はい。
と言っても、運び屋を通じてトウヤさん個人への依頼ですが。

ああ、お得意さんって言ってたやつか……
早速だな。
行くん、だよな……？

行く。
まだ詳しく聞いてはないが……
いつも朝9時頃にここを立つ。
今回もそれくらいで済むだろう。

……。
……気をつけてな。

ああ。
少し内容聞いてくるから、お前は先に寝てていいぞ。

……いや、待ってるよ。

待ってたって仕方ないだろ。
こっちの仕事の初日だし、さっきの飲みでも疲れてるだろ。
俺に気を遣う必要は無いから、な？

……。
うん……

よし、少し出てくる。
……レイナード、お前はもう休め。
あとはこちらでやる。

了解です、お疲れ様です。
では失礼します、イーリスさん。

……どうも。
……トウヤ……ほんとに、休み無しになるなぁ……

　　ガラル軍　ロビー

お待たせしました、ヴィンセンさん、アリアさん。

トウヤさん！

トウヤくん、いつもありがとう。
急ぎの用で、夜分に失礼したね。

いいえ、問題ありません。
今回はどこまで。

この荷物をアローラまで。
メレメレ島のリリィタウンの、カヤさんという女性に、明日中に届けてもらいたいんだけれど、どうかな。

リリィタウンですね。
これなら明日の夕方頃には届けられます。

そうかい、それなら良かった……！
実は、中身はウェディングドレスでね、お客様のオーダーがギリギリになって変更されて……
素材の取り寄せの問題もあって、もう納品間近なんだ。
早くて安心安全の君にお願いできたらと思ってね……

そうでしたか。
何があってもお届けしますので、お任せください。

急なお願いで申し訳ない、どうかよろしくお願いします。

あ、あの、トウヤさん……！

……何でしょうか。

えっと、私もお仕事にご一緒させていただくことはできないでしょうか……！

……どういうことでしょう？

こら、アリア！
何を言っているんだ！
トウヤくんのご迷惑になるだろう……！

私も飛行の訓練はしてます……！
ついて行くだけなら、ご迷惑はおかけしないと……

お言葉ですが、今回は荷運びのご依頼で、荷運びを最優先させていただきますので、あなたの身の安全を保証することはできません。
なぜ着いてくるのかも聞きません、どうかご遠慮ください。

……自分の身は自分で

アリア、トウヤくんは責任持って荷物を運んでくれるんだ。
ご迷惑をおかけしてはいけないよ。

……でしたら、あの、今度お食事に行きませんか……！？
レストランで、美味しいもの、食べませんか……？
そう、お世話になってばかりだし、……！

……。
ヴィンセンさんとは父がいた頃からのお付き合いで、ご愛顧頂いており大変ありがたく思っています。
今後ともこのように、親しみを持って、安全面を信頼していただいている関係を、続けていきたいと思っています。

……。

申し訳ありませんが、しばらくは仕事が立て込むと思われるので……
どのような理由であれお誘いを受けようとは思っていません。
そのご厚意には感謝致します。

……そう、ですか……

ヴィンセンさん、この荷は俺が責任持ってお届けします。
今後とも、よろしくお願いいたします。

ありがとう。
こちらこそ、よろしくお願いします。
……アリア、少し外で待っていてくれるかい？
すぐ行くから。

……はい。

……。
……申し訳なかったね、トウヤくん。
ついてくると言って聞かなくてね……

いえ、一緒に来ていただく分には全く問題ありません。
ただ先程のように、いくらお誘い頂いても、お受けすることはできません。
その度に断り、アリアさんには気を落とさせてしまうのがこちらとしても気の毒です。

いやいや、トウヤくんが気に病むこと無いのに、本当に申し訳ない。

俺のことはお気になさらず。

いいや、君に手間をかけさせるわけにはいかないからね、アリアにはよく言っておくよ。
ところで先程、仕事が立て込むと言っていたけれど、最近は忙しいのかな。
今回も急なお願いを快諾してくれてありがたいが……
しばらく依頼は控えた方がいいかな。

先日再編成がありまして、新しく隊に入ってきた者のサポートをしているので……
なるべく傍にいてやりたいと思っているんです。

なるほど、トウヤくんも大変だねぇ。

まあ、付きっきりでいないといけないようなものでもないんですが……
元々優秀なやつなので教えることはほとんど無いんですよ。
休日にこの仕事をしていることも伝えていて、一応理解はもらっているので、今後依頼を受けるのを制限するつもりもありません。
ですからまた何かあれば、急ぎのものでもお声かけ頂いて大丈夫ですよ。

本当かい？
助かるよ。
トウヤくんは働き者だね。
本当に感心するよ……
また今度、改めてお礼させていただくね。

……お構いなく。
……それでは、今晩はこれで失礼しますね。
アリアさんをお待たせしてしまうのも悪いので……

ははは、そうだね。
それじゃあ、荷をよろしくお願いします。

了解しました。
必ず明日のうちに、お届けします。

　　ガラル軍　トウヤとイーリスの部屋

ガチャッ

(寝てるな……)

ん……おかえりトウヤ……(ごそごそ)

お、起きてるのか……

今寝ようとしたところ……

すまん。

ううん。
明日早い？

いや、いつも通り9時発だ。

良かった、朝ごはん食べて行けるな……
ふふ、さっき炊飯器のスイッチ入れたんだ……

そうか。
それじゃ、期待しておくよ。

ふふふ。
だから、そんなに期待しないでくれよ……

ほら、俺も体流したらすぐ寝るから、お前も寝ろ。
俺のことは気にするな。

ああ、分かった、おやすみ。

おやすみ。

　　ガラル軍　研究室　室長室

テオ博士、いい加減休憩してください。

わ、ケイトさん、お疲れ様〜

お疲れ様〜じゃないんですよ。
お疲れなのは博士なんですから、ちゃんと休んでください。
お薬飲まれました？

あ、薬ね、今飲もうとしてたんだよ〜
いつもありがとう〜

はいはい、薬飲んで少し仮眠でもとってください。
あなた止めないといくらでも続けるんですから。
……ん？
博士、これ、化石ですか……？

ああ、復元するんだ。

……あ、あなたって人は化石にまで手を出したんですか……！！？

ち、違うよ！？
これはトウヤくんから依頼されたものでね……っ

トウヤ……？
……ああ、確かあの第一部隊のカラス……
どうして引き受けるんですか、あなた自分の研究で体がいっぱいいっぱいなのに……

これはトウヤくんの物ではなくて、元の持ち主がいたんだよ。
持ち主は亡くなって、これは遺品にあたるんだけどね……
持ち主が化石の復元を望んでいたみたいなんだ。
トウヤくんは、自分じゃできないから、僕に頼みたいって、そう言ってくれたんだ。
だから僕が頑張ろうかなって……
もちろん、化石好きの子にも手伝ってもらうつもりだけど……

……だからと言って、難題なら断ればいいんですよ。

難題……
そうだね、時間は限られてる。
実際、復元できるかどうかも分からないけど……
それでももし、僕がガラル軍の研究者として、誰かの思いを繋いで、叶えてあげられるなら……
生きた証を残せるとしたら……そう考えてみたら、決断に悩むことは無かったよ。
この化石を復元して、亡くなった方の無念を晴らして、復元した化石は僕の代わりに生きていく。
素晴らしいことだ。

……。

だから、これも僕のやりたいことだ。
君も見守ってくれると嬉しいなぁ。

……。
……はぁ。
仕方の無い人ですね。
ただし、くれぐれも残りの寿命を縮めるような無茶はしないことです。

ふふ、うん、そうだね。
なるべくそうするよ。

……。
化石マニアと言えば……ノージュには声をかけましたか？

ああ、まだだよ。
今手を付けてるところがしばらく忙しいだろうから……

声だけかけておきますね。

本当かい？
ありがとう、助かるよ〜




→　1-12 イーリスの休日1

←　1-10 再編成後の初仕事の終わり

←←HOMEへ戻る


まとめ 1- 1 / 2 / 3 / 4 / 5 / 6 / 7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12 / 13 / 14 / 15 / 16 / 17 / 18 / 19 / 20 / 21 / 22 / 23 / 24 / 25 / 26 / 27 / 28 / 29 / 30 / 31 / 32 / 33 / 34 / 35 / 36 / 37 / 38 / 39 / 40 / 41 / 42 / 43 / 44 / 45 / 46 / 47 / 48

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove

- ナノ -