あかいりんごとあまいはちみつ

□ 2013/11/05 03:53 無題
「…ガイ」

小さな声で呼ばれるが、聞こえない振りをする。ずんずんと先に進めば、向こうも足を速めてきた。

「なぜ逃げるんだ」

腕をつかまれて引き留められる。振り払おうと思えば振り払えたが、そこまでするとあからさまなので諦めた。振り向くと強く、それでも訝しむような視線を投げられた。

「…はぁ」
「聞いているのか」
「聞いてるよ。何か用でもあるのか」
「…それは…」

アッシュが言葉に詰まる。あらかた見かけたから声をかけたのだろう。アッシュは普段そういったことはしなかったが、ナタリアや俺には昔はよくしていた。それは関係が近かっただろう。限られた環境下におかれ、好いた人がそのくらいしかいなかったせいもあると思う。昔から縋るような目をしていたから解る。
ふいにぱっとアッシュが握っていた俺の腕を離す。話すことを諦めたのだと判った。

「悪い」
「…昔っから変わらないな」
「…あの頃とは違う」
「より不愛想になったな」
「……」

じっとりと睨み付けてくるが、身長差もあって全く怖くない。昔から見ているからか。 虚勢を張る姿はとても滑稽だった。だから少し、虐めてやりたくなった。見上げることをやめてどう離れるか伺っているアッシュの頬に触れて、少し顎を取った。

「優しくしてほしいのか?」

目を見開いて驚いた。うっすら悲しそうな表情で。そんな反応に満足した俺は最低だと思う。

「ふ、ざけるなっ!」

アッシュは思い出したかのように俺の手を払い、身を翻していく。些か早足で人混みの中に紛れて行った。
もう昔には戻れないのだと改めて思った。今度会ったら謝れたら謝ろう、そう思う。



  


□ 2013/04/28 03:24 表裏一体
※VA
 アッシュがおかしい
 ストーリーと合わないが気にしてはいけない
 鍵はついてないです  ...追記


□ 2013/03/31 14:44 髪の先まで

「髪が伸びたな、アッシュ」
「…、ああ、そうだな」

さらりと丁寧に手入れされた紅髪がアッシュの背中を染める。アッシュの髪は、ルークの髪と違い毛先は整えられていて男性の髪としては十分なくらいだった。
ガイは前へ進むアッシュの髪を後ろから掬って、毛先を遊ぶ。髪を引かれたアッシュは、一度立ち止まりくるりと振り返る。振り返ると同時にガイは笑ってみせた。

「綺麗だな」
「…やめろ、そういうのは女に言え」
「勿論女性にも言ってるさ。でも、アッシュの髪もよく手入れされていて綺麗だよ」
「………」

思いきり眉をしかめて前を向きなおすアッシュに、ガイはもう一度笑った。

「照れんなって」
「五月蝿い!」

飛んでくる右手を引いて受け指先にキスをしたところで、振り返ったアッシュに書類を持っているのも構わずに殴り込まれた。



「グーはないだろグーは…」

  ...追記


□ 2013/01/24 01:48 悪夢

眩しい陽射しに目元を刺され、しぶしぶと目を開ける。昔から弱い朝だけは憎たらしい。

「おはようございます、アッシュさん」

そういえば布団ではなく椅子に座り寝していたのだと思い出すのを遮るように、ギンジの胸にふくよかについているものが目を奪った。何度見ても、それは女の胸だった。しかもでかい。

「おい…ギンジ、それ」
「どうしました?あっアッシュさん、ブラつけっぱで寝ると胸の病気になりやすいようですよ」
「はぁ!?」

ブラ、とは多分女共がつけている下着のことだろうが、それを何故俺に言うのだろう。とりあえず落ち着こうと、胸に手を置くとそこにも微かながらにも身に覚えのない膨らみがあって、今度こそ絶句した。


「大丈夫ですか?」
「おい…なんで乳なんかついてるんだ」
「はい?当たり前じゃないですか、アッシュさん女なんですし」
「…………」

思わず頭を抱える。寝て起きたら女になってましたなんて笑えない話だからだ。もう一度寝たら元に戻るのかなんて考えてしまう。

「………っう」

ぼぉっとしていると下腹部に鈍痛がして、顔をしかめる。剣や譜術の傷の痛みとは違う、内側からくる痛みだった。

「うぐ……っ なんだこれは…」
「あ、アッシュさん?」
「……っギンジ。腹が…」
「おなか?ああ、来ちゃいました?」
「来たって…」
「パンツ出しておくんで、とりあえず洗ってきてくださいよ」
「……洗う………?」

そのままエプロン姿でかけてゆくギンジを見ながら、わけのわからない状態に首を傾げる。よろよろと立ち上がると体内から何か出る感覚がして驚き床に崩れ落ちる。うずくまることしかできなかった。

「いてぇ……」
「アッシュさん!早くお風呂行ってください!」

ひょいと抱えられまたぽたりと垂れる感じがし、下着が濡れた。ぽいぽいと衣類を剥がれ、血に塗れた下着が見えあまりの衝撃に俺は軽く意識を飛ばした。




「おはようございます、アッシュさん」

同じ台詞で起こされて勢いよく目を見開いた。絶対にくらくらと来るのをかえりみずに勢いよく身体を起こすが、エプロン姿のギンジはいつものギンジだ。豊満な乳など当然ついていない。それを確認して次に自分に触れる、胸はいつも通り残念だが平らだ。

「夢か………」
「大丈夫ですか?うなされてましたよ」
「…………はぁ。なんでもない。ただの悪夢だ」


そう、それはただの悪夢<パラレルワールド>――――

ちゃんちゃん  


□ 2012/04/05 05:31 いたいよ

嗚呼、頭が痛い




外はけっして良い天気とは言えない色で、雲の流れは悪い。もうしばらくしたら一雨来るな、とアルビオールの中で思った。
一人でいると頭が痛くなる。誰か一人でも同じ空間に居れば痛みは無いのに。なにか煩いキンキンしたのが聞こえる。なにかなんぞ知らん。そら、ギンジが入ってきたら頭痛なんてなかったかのようだ。訳がわからん。

「アッシュさん、一雨来そうなんで外出は控えて下さいね」
「……」
「ただでさえ弱ってるのに風邪ひかれちゃあれですから」
「弱ってなんざいねぇよ」
「でも怪我して帰ってくるでしょう?」
「…擦り傷なんだ」
「………まぁ、そういうことにします。とにかく、外出は控えてくださいね」

ふわりと笑ってギンジは部屋から出て行った。

一人。

またあの頭痛がしてきて、目元がクラクラして、頭を押さえた。すごく痛く、て、おかしくなりそうだ。どうして、これもローレライからの通信か嫌がらせか、それとも幼少期、の、痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたい!!とんでもなく痛い!目元は熱くなるし動機はするし手は震えて息は痞えて苦しくて、






「アッシュ?どうしたんだい…大丈夫かい?」
「あ…!、…ぁ…」
「…!、なにかあったの?坊や」
「ぁ……、…ノワー、ル。ちがうんだ、なにも、ない。なんもなかったんだ、」
「そうは言ってもねぇ……、そう泣かれちゃこっちも反応に困るってモンよ」
「な…く……?おれは、頭がいたくて…、?」
「頭痛がするのかい?」
「………いや、今は、しないんだが…」
「…ギンジを呼ぼうか?」
「………」

けろりと治る頭痛。ノワールが来たから。恨めしいったらありゃしない。何故か涙は止まらなくて次々法衣を濡らして時々嗚咽が混じった。いつもと同じようにがさつに、それでも女らしくノワールは俺の頭を撫でた。その手が温かいと知り余計に視界が歪む。なんで、なんでだ、こんなの俺らしくない。どうして、こんなにも温かいと感じるんだ。ギンジと漆黒の翼がセットで戻ってきて、俺はなんとも無様な面を晒しているはずなのに、恥ずかしいとは感じなくて。ギンジに抱きしめられたのにびっくりして、あたたかくて、安心して、俺はそのまましゃくりあげた。すごくあたたかくて暑すぎるぐらいだった。初めて幸せというものを感じた気がした。


それ以来、あの頭痛がおこることは無くなった。初めてあんなに泣いたから次の日は目が腫れてまた酷い面になっていたが、誰一人馬鹿にしなかった。アルビオールの中はあたたかくて、ひとり照れ臭くなった。


  




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