表裏一体


「俺は幸せ者だよ。あんなに、…人を殺して、罪だって消えないけど、ガイがいるから」
「ガイが大丈夫だって言ってくれるから。短い人生でも、幸せだよ」

誰にでもふりまく笑顔で同位体が語る。幸せ、とはなんだろうか。俺は絶望しか知らない。

「お前は私の言う事だけきいていればいい」
「ぅぐ…ア、ぁ……」
「それがお前の幸せだろう?」

ヴァンが腰を打ち付けながら喋っている。俺は何度されても慣れない快楽に溺れながらぼんやりと聞いていた。


「幸せ…?」
「ん。ガイと一緒にいられるから」
「そうだ、な…」
「好きな人と一緒にいれたら幸せだと思うよ」
「好きな…」
「アッシュならナタリアとかかなぁ…」
「………」


痛い。殴られた頬が熱を持って腫れ、切れた唇の端はヒリヒリと染みる。痛みには慣れていて逆に冷静になった。

「なにを言われたのだ?あのレプリカに」
「お前に喋ることは何もない」
「…再教育が必要か」

ふぅ、と一息ついて、また固い拳を奮ってくるヴァンに抵抗しながらふと思う。昔はこいつも、好きな内だったなんてことを。好きだった相手から目的は違えど求めて貰えるのは、あいつの言う幸せと同じなのかと。

「…お前は俺を求めているのか」
「……ふ、レプリカに唆されたか」
「………」
「言うまでもない。私はいつもお前を求めているではないか。傍に置きたい、ともな」
「……そう、か」

そう聞いて少しでも心に響いている自分がいる。昔から求められていた。傍に置いておきたいと思われている。それは一緒にいると言うこととイコールだろう。憎んでいるのも忘れて気分を良くした。

「…アッシュ」
「………好きにしろよ」
「ふ…いい子だな」
「…ヴァン…」

手を伸ばして差し伸べられた手を取る。大きな掌が暖かくてとても安心した。無意識に口角を上げた。


こんな近くにあったのに何故気付かなかったのだろうか。
幸せ、てやつに

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