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[SS下書き]火壁
〈ルセリオ王国の栄光:小説本文&落書き〉
2015/12/05

 
 
下書きとはいいつつ、ここで公開してから加筆・修正を繰り返して段々形になってきた。

***

辺りは激しい炎に包まれていた。
「炎魔フェリア!」
立ち去ろうとする人物――一帯に火を放った張本人だ――の後ろ姿にメイリーンが声を振り絞って呼び掛けると、相手は足を止めた。
「古い名だ」
災厄の名で呼ばれた炎使いの長い髪が、焼けつく空気の中で揺れる。
「見つからないはずだわ……。仲間を欺き、過去を偽って、何をするつもりなの?」
メイリーンが問うと、炎使いは整った顔立ちに酷薄な微笑を浮かべた。
「『仲間』か。――彼らは、ただ私の目的のために必要というだけのことだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「“野芥子の館”を焼いたのもあなたの目的のためだったというの?」
焼け落ちた拠点の名を彼女が口にすると、“炎魔”は嘲笑った。
「それ以外に何があるというのか」
「なんて酷い……!」
炎使いはメイリーンにゆっくりと向き直った。その体躯から放たれる炎の魔力と周囲の熱気を受けて、ローブの裾がゆらりと舞う。
「か弱き小鹿よ、覚えておくがいい。
この世の理(ことわり)は単純至極。強き者は長らえて望みを果たし、弱き者は強き者に利用される。
――お前が私を許さないというなら、力を以て止めてみせよ!」
炎使いの手元から紅蓮の波が迸り、辺りをさらなる灼熱に包んだ。

***

[あとがき]



 



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