刄cイログ @airi_15ore
ついったでやった140字練習(追記におまけ有)や短文練習です

承太郎
静まり返る空間の中、紙の上を滑る芯の音。隣で頬杖をつく彼はそれを面白くなさそうに眺めている。むっとした表情はいつものことだが、今日はそれが更に険しい気がした。言葉の少ない彼はその理由を自ら打ち明けるなんてことはしないだろうが、こちらから問い掛けたら話すかもしれない。
「ねえ承太郎、今日はやけに──…」
顔を近付けた瞬間、不機嫌な彼に唇を塞がれる。驚いて呼吸を止めたわたしに、もう一度。
「いつまで待たせる気だ、いい加減待ちくたびれるぜ」
先程からのろのろと日誌を綴っていたわたしを睨む彼は、シャーペンを落としたわたしに構わず、更にわたしの顎を引いて僅かに開いた口の中へ舌を捩じ込んだ。
誰が見ているかも解らない、放課後の教室で。

仗助
あと少しでレベルが上がりそうだというのに彼が周りをうろうろし始める。気付かない振りを決め込み画面を眺め続けると、今度は項に顔を埋められた。鼻先をぐりぐりと当て、私の顔を覗き込む。あと少し待ってほしいのに。次は頬に、そして耳に、首筋に、彼は私の許可を待ちわびて鼻先を宛がう。完敗だ。more

ナランチャ
彼がそわそわし出すと甘い空気へ変わる合図になる。触れるか触れないかの距離を保ちつつ彼はおずおずと私に視線を遣った。
「なぁ、…キスしてみてもいい?」
上目に顔を覗き込む彼が愛おしく、つい笑みが漏れてしまう。返事の代わりに睫毛を伏せると、彼の掌が私の頬に添えられた。緊張が移りそうだ。more

ブチャラティ
「どうした? 随分疲れてるな」
何でもお見通しの彼がわたしの隣へ腰を下ろす。吐き出したらとことん甘えてしまいそうだから敢えて避けていたのに、彼はそれを許してはくれない。穏やかな眼差しで、わたしが溜め込んでいるのを嗜めるように。
「少し……、でも大丈夫」
「そうか。それならこれは俺の我が儘になるが、もう少し傍に寄ってもいいか?」
強がりを言うわたしを察してか、彼はわたしの手を握った。大きな掌に包まれると、彼の体温を感じると、自分の弱いところを曝け出したくなる。あんなに我慢していたのに、ぽつりと言葉を漏らしてしまうのだ。
「ブチャラティ……、抱き締めて」
「あぁ」
彼はわたしの手を引き、自分の膝の上へ丁寧にエスコートしてくれる。こんな子供のような体勢で彼に甘えるのは少々恥ずかしいが、構わず従った。身体を密着させ、彼の匂いを感じると、じんわりと目頭が熱くなる。
「お前はよく頑張っているな」
何も知らないのに、優しく背中を叩いてくれる。とん、とん、心地好い一定のリズムがわたしの弱った涙腺を刺激するように。赤子を寝かし付けるようなそれにいよいよ自分が恥ずかしくなるが、彼にはこんな姿だって見せてしまうのだ。
「ブチャラティ……、どうしてそんなに優しいの?」
「何のことだ? 俺は自分の我が儘にお前を付き合わせているんだがな」
「もう……」
どこまでも優しい人。とん、とん、とん。彼の首筋に顔を埋めると、安心したせいか瞼が重くなる。あぁ、本当に心地好い。彼の掌は魔法のようだ。
「Buona notte(おやすみ)」
甘く柔らかな声が鼓膜を揺らし、わたしはそのまま意識を手離した。

露伴
「また康一くん、ですか」
べらべらと喋る彼を睨むと、きょとんと目を見開いて数瞬時が止まる。彼が唯一の親友としている男の子の話は、はっきり言って聞き飽きたのだ。それをどういうわけか彼は嫌に機嫌を良くしている。その証拠ににやにやと口端を吊り上げて私を眺めた。
「キミ、可愛いところがあるじゃあないか。そんなにぼくを独占したいのか?」
「はっ?」
「嫉妬深い女はキライだが、キミのは悪くない」
また勝手な推理が始まる。この男は自分を中心に世界が回っていると思い込む節があるようだ。その為、こういった勘違いも頭ごなしに否定してしまうと返って酷い目に遭ったりする。
「それはどうも。先生、もう康一くんの話は当分結構ですので」
理由は何だっていいのだ、得体も知れない人間の話を永遠と聞かされることに比べたらどうってことはない。そう思っていたのに、次の瞬間に彼の唇が私のそれへ重ねられ、咄嗟に息を飲み込んだ。
「康一くんはぼくの親友なんだ、許せよ」
まるでヤキモチを妬いている彼女を宥めるような台詞に頭が追い付かない。機嫌取りのキスさえも、私の頭を混乱させた。だって、私達は、恋人じゃない。
「オイオイ、何だよその顔は?ぼくのせいか?」
彼の言葉にハッとする。顔の火照りが自覚できるほどはっきりしているのだ。これは急にキスなんかされたからだと自分に言い聞かせるが、彼は全てを見透かしたようにただにんまりと私を見下ろしている。
「違うんです…、」
「違わないさ、キミは康一くんに嫉妬したんだろ。ぼくのことが好きだから」
何も言い返せないでいると、彼は私の腕を引っ掴んでもう一度キスをした。彼は何だって“読めている”のだ。

ディエゴ
「やっぱり信じられないのよ」
「Ah?」
片眉を持ち上げて視線を遣る彼から逃れるように顔を反らす。
「だって貴方はきっと私を利用している…、そうでしょ?」
「そうかもしれないし、そうじゃあないかもしれないぜ。だが、それがどうした? 大した問題じゃあないだろ」
別れを切り出そうとしている私に随分ぞんざいな態度だ。彼の過去は勿論、性格だってそんなに理解しているわけではないが、彼が他人を利用する質だということは解っている。出会って間もない私を必要以上に構うのもその為に違いない。
「私はきっと貴方が求めるようなものはあげられないわ。何も持っていないんだもの」
「オレが何かを強請ったか? 勝手な推測でオレを酷い男にするなよ。本当にお前のことを心から愛してるんだぜ」
甘い顔に優しい声。それから、誤魔化されるように重なる唇。その大きな掌で頭を撫でられると彼の嘘に縋りたくなる。私を本気で愛し、優しくしてくれているのではないかと。彼の狙いはきっと他にあるのだと確信しているくせに知らん顔したくなるのだ。
「……解った、信じるわよ。私が悪かったわ」
「不安になったのか? 可愛いな。お前はそんなこと考えなくていい」
もう一度、キス。嘘を重ねる度に増えるキスは麻薬のようだった。それが嘘だと解っていても、溺れたいと願ってしまうのだ。

ミスタ
酔いがほんの少し覚めてきた頃には室内にいた。目の前の大きなベッドに途端に怖じ気付く。視線を遣ると、彼は私を黙らせるようにキスを落とした。「おっと、今更帰るはナシだぜ? 運命を感じたって言っただろォ〜」熱心に紡がれた言葉が嘘のよう。それに、運命のキスがこんなに軽いはずがない。more

ジョルノ
「初めてでした? こういうときは目を瞑るんです」
年下にそんなアドバイスを貰うなんて。彼は指の背で私の顎を擽り、その長すぎる睫毛がぶつかりそうなほど近くに顔を寄せる。
「解らない人だな、今言ったばかりじゃあないですか。目を瞑るんですよ」
再び唇が重なるが、私はまた目を瞑れなかった。more

ブチャラティ
彼がどれ程私を愛してくれているのか、どれ程大切に触れたいのか、気持ちが全て伝わる愛撫にはしたなくも焦れてしまう。そんな優しくしなくていい、もっと、もっと欲しいのに。思わず浮きそうになる腰をどうにか誤魔化すと、彼は小さく微笑んだ。「せっかく優しくしても、まるで虐めているみたいだな」more

ミスタ
「女ってのはよォ、どうして嫌がるフリをするんだろうなァ」必死に腕を伸ばして彼の胸板を押すが、指を絡め取られてシーツに縫い付けられた。これは演技でも何でもなく、拒絶をしているのに。奥を叩かれて何度目かの絶頂に喉を反らすと、「ほら、好いんだろ」と得意気の彼が、何とも腹立たしい。more

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