ナランチャ

彼がそわそわし出すと甘い空気へ変わる合図になる。隣の体温はぐっとこちらに近付き、触れるか触れないかの距離を保ちつつ彼はおずおずと私に視線を遣った。
「なぁ、…キスしてみてもいい?」
上目に顔を覗き込む彼が愛おしく、つい笑みが漏れてしまう。許可など今更取らずにすればいいのに、律儀にも毎度こうして私に伺いを立ててくれるのだ。返事の代わりに睫毛を伏せると、彼の震える掌が私の頬に添えられる。鼻先がぶつかりそうな距離にいると彼のぴりぴりした空気が伝わり、私にも緊張が移りそうだ。
「…、」
ちゅ、と可愛らしいリップ音。啄むように僅かに挟まれる唇が擽ったい。一度では足りないらしく、二度、三度、同じように重なると、彼は私の耳へ指を這わせる。
「かわいい…」
ぼそ、と呟かれた彼の声は甘ったるく、何よりも私をくらくらさせるのだ。
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