それは優しい降伏でした
それ彼氏とのリングですか? 発言者である後輩の視線の先には、シンプルなシルバーのリングがあった。キラキラとした瞳でそれを見つめる彼女に、悟られない程度に居心地の悪い顔を向ける。これは今日…
泣きたくなったら僕を呼んで
平均そこそこの女が、大男をズリズリ引きずって歩く大変さをどうか解ってほしい。おかわりいれてくるね。私は先程マグカップを手に取り、後ろから抱え込むように抱きつき私の肩に顎を乗せ、同じように…
きみが好きだから息をしている
どうも気分が晴れない。駆け込んだトイレの個室の壁に背中を預けながらため息をついた。吐き出した空気と一緒にもやもやとした気分も体から抜けていって欲しいのに、なぜか余計に疲れた気になるから…
引き合うさびしさの引力
頭が痛くて目が覚めた。ゆっくりと視界に光が入ってくる。今まで眠っていたはずなのに、徹夜明けみたいな世界が回る感覚がした。なんか変な感じだ。ズキズキと痛むこめかみを押さえて静かに体を起こす。いつも…
ほろ苦い幸せのレシピ
あの日から約二週間が経過した金曜日の夜。やっと鉄朗とあの人の仕事は一旦の区切りがついたらしく、私も誘われていたあの飲み会が開催されている。後輩が言っていたように、本当に…
誰にもみつからない夜の行方
若干の違和感があるイントネーション。聞き慣れない方言が飛び交う。ずっと住んでいるから東京の空気がまずいだなんて一度も思ったことはないけれど、言われてみればここの空気は地元に比べると…
彼の隣にいる為の必要十分条件
都心すぎず田舎すぎず、程よい立地にある住みやすそうな一軒家。実家なのかと思ったら、ここで一人暮らしをしていると聞いて初めはとても驚いたものだ。初めてここにきたのは私が新人の…
愛したがりなきみの心臓*
エアコンでいくら空気の温度をコントロールしようとしても、自然には勝てることがなく、真冬のこの部屋は完全には暖かくはならない。少しひんやりとしている室内。しかしそれを…
きみの夢路に種を撒く
子供に囲まれている木兎選手は、まさに彼ら彼女らのヒーローなのだろう。プロリーグで活躍する彼にアドバイスをもらったり、彼に普段の話を聞いたりすることは子供達にとって特別なことなのだ。彼に…