ボールペンのペン軸を割るひとが存在するんです。
意図的に割るのではなく、使っているうちにねじ部がひび割れて折れるらしいのですが、そんな人々向けに薦められるであろう製品が、胴軸をほぼ一体化し、ねじ部を尾軸へ移した製品群たとえば
エナージェルXです。
しかし、それでもねじを割ってしまう人々がいるらしくて、今回のエナージェルSはそれに対処したのか、L字溝で噛み合わせる方法を採用し、ねじを廃してしまったのです。
新たな廉価版エナージェルSは、先行品エナージェルXと同じような部品構成と同じ価格、
普及版エナージェルの半額100円(税込110円)です。
ボール径四種、2020年11月発売、限定ねこ柄六種同時発売、日本製。エコマークつき。店頭+通販購入。
替芯は普及版と
同型LRN / LRでボール径五種。
尾軸には突起(凸部)があり、胴軸には凹部があって、突起が嵌まるダボ穴があります。
この突起が胴軸内のL字溝(鍵型ほぞ)に噛み合って固定されます。
分解手順は簡単。文章にすると煩雑になるうえ文具では馴染みがない方式とはいえ簡単。
後方から見て
1) 尾軸部を反時計回りに30°〜70°ほど回す
すると自動的に尾軸が胴軸から1.4mm離れる
尾軸を前方へ押しつけながら行うと回しやすい
2) 尾軸と替芯を後方へ抜き出す
3) 尾軸の突起がL字溝にはまるように取りつける
その際、替芯末端を尾軸に挿入しておくと、引っかからずに取りつけられます
4) 4´) 胴軸との隙間が空かないよう、尾軸(ノックボタンではなく)を押し込みながら時計回りに回して尾軸突起を胴軸ダボ穴に嵌めます
尾軸が1.4mm離れるのは、ペン軸内部に替芯復座ばねがあるからですが、ノックしたまま(ペン先を繰り出したまま)分解しても、尾軸が飛び出しません。
ノック負荷約350〜400g。
尾軸内のノック機構は新たに設計されたようで、回転子が簡略化されました。
右側Xの回転子は替芯尾端をくわえるようにツメがあり、替芯揺動(替芯ガタツキ)を抑えます。元型エナージェルBL70系も同じ形状。
ただ、これの効果のほどはよくわからなくて、本品の回転子でも同じくらいの効果です。
ゴムグリップ長や太さがXとほぼ同じですが、細部がこれまた簡略化されてコスト節減の跡が見てとれます。
胴軸が厚くなって多少頑丈になりました。前身のXではペン軸中央がわずかにくびれていましたが、こちらはほぼ直軸です。
S) 本品
X)
同社エナージェルXLGK)
パイロットGノック(製造中止)SN2) 三菱パワータンクSN-200PT
Sが1.2mm厚、それ以外は約1.0mm。各品ともグリップ部はさらに厚くされています。
ねじ切り部分は逆に薄くなっているため、各品ともねじが深く入らないよう、ペン軸内に段差を設けているのですが、それでも力いっぱいねじを締めると負担がかかって割れるようです。
ポケットクリップはやや挟持力が低くなりました。ここはXや元型エナージェルに劣ります。
クリップに印刷された品名型番の色がボール径によって異なります。
先行品のエナージェルX (ボール径三種)は、それに加えて部品の透明度も変えられていました。
◆替芯XLRN3, 4, 5 (ニードルペン先)、XLR7, 10 (円錐形ペン先)、φ6.3mm×111.0〜111.5、ペン先径2.3mm、JISゲルK型、日本製。
型番にはXがついたりつかなかったりするけれど同型。Hがあれば多色用で型が異なります。
染料系ゲルインク、黒赤青(ボール径五種)、その他7色(ボール径三種)
型番:ボール径/筆記距離
LRN3 : 0.3mm / 500m
LRN4 : 0.4 / 400
LRN5 : 0.5 / 700
LR7 : 0.7 / 400
LR10 : 1.0 / 300
本品は0.4mmを除くボール径四種で売られ、もちろん0.4mmにも換装可能です。
互換品:同社ハイブリッドテクニカノック用KFRN/
ハイパーG用KLR、
ゼブラ サラサ用JF芯/サラサマークオン用MJF芯/
サラサドライ用JLV芯、
三菱シグノノック式用UMR-80系/R ; E用URR-100/
ユニボールワン用UMR-**Sトンボ モノグラフライト用BR-KN*も装填できますが、寸法が僅かに違うためあまり薦めません。
代用品:コクヨ エラベルノ/ミー用PRR-E**、
サクラクレパス ボールサインノック用R-GB及びR-GBP、三菱ジェットストリーム用SXR-
エナージェルは定評あるゲルインクボールペン。
使用感は、細部を除けばエナージェルXとだいたいおんなじ。その細部というのは、
・ノックボタンが細くて押しごこちが違う
・ペン先露出がXより0.4mm少なくて細かな書き込みではペン先をやや見づらい
・ポケットクリップの挟持力がわずかに低い
の三点くらいです。
胴軸をほぼ一体化した製品は、本品と上述した三種のほかに、
ねじ部分を口金側に移したパイロット レックスグリップやアクロ500、三菱ベリー楽ノックやジェットストリームSXN-150、ゼブラ スラリBN11やカドカドBA104、
サラサドライなどがあります。
これら以外でペン軸が割れないものとなると、カランダッシュ849など数千円の金属軸になります。
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