櫂
くるしいなあ、とぼんやり思いながら彼女は自分の首をゆるやかに絞め続ける人間を眺める。こんなにも危機感がないのは、この手が彼女を殺そうとしているわけではないと知っているからだ。どうしようもない執着を、後悔を、愛情を、こうした行動に変換してしまっているだけで。するり、と彼女の手が首を絞め続けている相手、男に伸びる。頬を人差し指の関節でなぞる。その行動に男はぴくりと反応を示す。首を絞めていた指が更に緩まり、その手は首を絞めるのではなく抱きしめる様に回った。ぽたり、ぽたりと水滴の落ちる音が響く。男が、泣いていた。そんな男の様子に彼女はゆるりと笑みを浮かべる。時折、男は不安定になる。そんな彼を受け入れるのは決まって彼女だった。その不安定さをもたらしたのは自分自身だと彼女はよく知っている。だから決まって、この行動に終止符を打つ言葉は決まっていた。
「好きだよ、櫂」と。
5th.May.2020
櫂
櫂トシキにチョコあげないでいるとそれとなく聞き出そうとしてくるとおもしろい(最終的にファイト案件になる)(VG脳)
5th.May.2020
↑back next↓