解釈にズレはつきもの。Pottermore勉強中

▼お礼と小ネタ

ご無沙汰しております。皆様は如何お過ごしでしょうか。自粛できない濁流のような日々を溺れている中、今年もこの時期がやって来ました。

小話を載せるその前に、Boothにて頒布しておりました文庫本版「シナリオの守り人」が無事に完売となりました。ありがとうございます。最後の1セットの発送通知がBooth倉庫から届いていたので、そろそろお手元に届く頃ではないかと思います。感慨深い。もし機会があるならば、作品があるならば、是非皆様にも本を作っていただきたい。そうオススメしたくなる経験でした。


※5月2日の小話はハッピーなIFではありません。



↓↓↓



「――きろ、おい――――起きろ!」
「っ、…………セブルス?」
眉を寄せる彼の表情はいつになく不安げで。大きく息をはきながら私の肩を掴んでいた手を離す。その手を頬へ移してくれる前に、私は彼を腕へと閉じ込めた。慎重に、力強く、溢れ落ちてしまわぬように。くしゃりと指に絡む黒髪にたまらなくなって、知らず知らず思いが増した。
「私の髪を根絶やしにする気ではあるまいな?」
「悪夢だった」
「……そうか」
「馬鹿な夢。もしもの未来を――」
「夢は夢だ」
震える指に重なるかさついた手が、私を落ち着かせてくれる。彼の呆れたような、それでいて温かい目は、何よりも深い呼吸へと私を誘った。
「その豊かな想像力を今度は別のものに役立てたまえ」
「別のものって?」
「起きてから考えればいい――」



「っ、…………馬鹿な夢」
伸ばした先の、冷えきったままのシーツ。くしゃりと知らず知らず力が入る。重なるあの手を想像しても、役に立たない、夢は夢。


2020/05/03


▼ツイート!

最近、シナリオの守り人の修正(本になる方)をしているので###の執筆が鈍足となっております。毎日来ています、と言ってくださる方もいらっしゃるので、毎日新しいものがあると良いのですが……。
そう言えばTwitterで上げた作品をまだブログに載せていないのでは?と思ったので、置いておきます。
ネームレスで三作あります。


↓↓↓


「スネイプ先生の好きなタイプはどんな人ですか?」

答えは期待していなかった。特別知りたいわけでもなかった。ただ少し他の生徒より近付けた優越感で、一体どこまで踏み込めるのかという愚かな実験。
先生はしばし手を止めて、宙を見つめていた。

「死ぬことのない人間」

そう返された言葉は私の手に負えず、静寂に身を隠す。先生の瞳は今まで見たどの黒よりも深く、澄んでいた。
数十億年を輝き続けた太陽でさえ、いつかは燃え尽きてしまうというのに。先生はきっと誰よりも真っ白な心で、その人を求め続けている。


***


「先生!」

そう呼んでばかりだったのに。

「先生?」

そう呼ばれる側になった。

「あっ、先生……」

この秋から晴れて私はホグワーツで教鞭を執ることになった。人生の大先輩たちに囲まれて。私はなんて恵まれているのだろう。いつか私も――。

「痛っ!」

耽る未来は打ち切られ、頭頂部に鉄槌が下された。背後に立つ人物を見上げれば、分厚い古書を片手に凄む恩師が一人。

「校長は目を開けて寝る人材を求めて君を雇ったわけではないぞ、『先生』」
「……はい、気を付けます」

わざとらしく付け足された『先生』にまた頬が緩む。今度は古書の角が頭を小突いた。

「あと一週間もしないうちにその喜びも薄れる。生徒に付き纏われるのにも慣れるだろう」

最後に私の隣で息を潜めていた男子生徒へ視線をやって、『先生』がマントを翻す。そしてきっと大きな大きな寄り道だったこの場所からいつもの大股で遠ざかっていった。

「先生、続きは?」

生徒が開いたままの教科書を指す。
『先生』
例え明日そう呼ばれることに慣れたとしても、あの背中に追い付けるのはもっともっと先。いつか並べる日が来たら、その時は、私は『先生』なのだと、彼の前で胸を張ろう。


***


「スネイプ教授!」

破裂音と共にスネイプの私室に入ってきたのは、彼の助手を務める女性だった。長年彼女を気にかけてきた彼でさえ初めて見る形相をして、扉をはね除けた杖を納めることなく振りかざす。そしてソファーで寛ぐ部屋の主へと詰め寄った。

「入室は許可しよう」
「それはどうも」

スネイプは呆れ顔で組んでいた足を下ろし、ティーカップをテーブルへと遠ざける。彼女は一枚の羊皮紙を彼の眼前へと突きつけた。それは所狭しと苦悩の跡が見られる彼女の研究メモ。その片隅に、一言だけ違う筆跡が紛れ込んでいた。

「説明していただけますね?」
「その魔法薬に対し君がアスフォデルへ目をつけたのは正しい。だが球根の粉末では強力すぎる。ならば代わりに10日咲き続けた花を煎じれば――」
「その説明ではありません!」

スネイプは鉤鼻の産毛に羊皮紙が擦れたのを感じた。ガクガクと揺さぶられるその紙を押し退けて、黒い瞳で彼女を捕らえる。

「私に知られたくなかったならもっと書類の管理を徹底しておけ。あれでは読んでくれと言わんばかりだった。これでも魔法薬学に従事している身でね。知れば口も出したくなる」
「よりにもよって答えを書くなんて!」
「完成したのか?」
「……しました」

彼女は大きなため息と共に腕を下ろした。適した材料に辿り着き役目を終えた羊皮紙を丸めて暖炉へと放り込む。燃え尽きる様を眺めることなく、彼女はスネイプへと向き直った。

「ねぇ、セブルス」
「今度は何だ?」
「私は腹を立ててるのに、あなたはナニを勃ててるの?」


***

ありがとうございました!最後の話は、普段温厚な主人公の激怒した様子が教授の性癖ど真ん中だったら……と書いたものです(笑)

感想&拍手はこちら


2019/05/21


▼ツイート!

現在長編を集中的に執筆しています。その合間に生徒×スネイプ教授でちょっとえっちなお話を書いたのでここにも置いておきます。私の好きな傾向を詰め込んだので、お仲間は握手!触るし勃つとか言いますけど脱いでないし結局勃っていないし最後は暗転なので制限かけていません。生徒に翻弄されてほしいです。あとセブルスは痛いの嫌いじゃない(願望)。


↓↓↓


それは完全なる事故だった。

当事者二人に何ら意図はなく、杖の弾みで起こってしまった悲劇。喜劇。しかし彼らが教師と生徒である事実は揺るぎなく、女子生徒の制服が首元から腰辺りまでぱっくりと裂けてしまっていることも明らかだった。ローブも下着もすべてが一纏めに切り裂かれ、彼女の真白の肌には赤く筋が縦に走る。


「せんせいのえっち」


甘く蕩ける波が、スネイプの鼓膜を震わせた。


「フィニート!」


スネイプはすぐさま呪文を唱えたが、彼女の制服ははだけたまま。辛うじて胸の頂きはローブに掛かり、水着とそう変わらぬ露出をしていた。しかし彼女はそんな自分の状態などお構いなしで、自身と彼との間にあったテーブルへ乗り上げる。抗議しかけたスネイプの唇を人差し指一つで塞いだ。


「せんせい、とっても動揺してる。心臓はドキドキとこれ以上ないほどに脈打って、今にも飛び出してしまいそう。私と同じですね」


女子生徒はぐっと胸を張り、自身の内側で脈打つ鼓動を彼に見せつける。そして心臓へと当てた手をするりと滑らせ下へとなぞった。


「見て、せんせい。この痕はせんせいが付けたんですよ。その真っ黒で、凶悪な、悪い杖で」

「そんなもの、すぐに癒える」

「そうかもしれません。でもせんせいが私の服を裂いた事実が消えるわけじゃない」


目を細め、にんまりと弧を描く彼女の唇。スネイプは無意識に喉を鳴らした。


「ホグワーツの教師であるセブルス・スネイプが女子生徒の服を引き裂いたのかと問われれば、答えはイエス」

「これは事故だ!」

「そう、事故。でもこの口へ真実薬を流し込まれて、私の服を引き裂いたのかと聞かれたら、せんせいは何て答えると思う?繊細で純真な女子生徒の肌を見たのかと聞かれたら?触れたのかと、聞かれたら?」

「触れては、いない……っ!」

「触れたい?」


彼女はテーブルから大きく一歩足を伸ばし、スネイプの座るソファへと乗せた。そしてぐっと彼との距離を詰める。どれだけ彼が身を逸らそうと、その鉤鼻と彼女のはだけた膨らみとの距離は精々拳一個分。厳格な教師を自身の籠へ閉じ込めるようにソファの背へ両手を付いた生徒の心一つで、彼は容易く埋もれてしまう。


「レパロですよ、せんせい」


彼女は腰を落とし、彼の耳へ直接吐息を流し込んだ。しかしスネイプはただ自分の膝へ乗る彼女の重みを頭から消すことで精一杯だった。彼女の柔らかな肉が、未だ布に覆われ秘めたままのその場所が、自分の筋張った太ももに沿って形を変えゆく様を想像ぜずにはいられなかった。


不意に外が騒がしくなり、スネイプの肩が跳ねる。地下廊下を生徒の笑い声が駆け抜けた。扉の向こうには数多の人間がいる。そう意識した途端、彼の杖は扉へと向けられていた。

ガチャリ、と錠の閉まる音がした。


「あーあ、閉じ込められちゃった」


スネイプは自分のしてしまったことに気付くとハッと息を呑んだ。クスクスと笑う女子生徒はソファの背から彼の肩へと手を滑らせて、その胸板へと下る。


「私はね、触れてみたかったんです」

「止め、ろ」

「覇気がないですね、どうされたんです?――あぁでも、このことを吹聴されたくなければそのままで。こう言われた方が、せんせいも気が楽でしょう?」


膝の上で微笑む彼女の目は本気だと語っていた。しかし杖はまだ、スネイプの手にある。このまま彼女の死角から杖先を向ければ、どうにでも対処できる。それだけの選択肢を彼は彼女から与えられていた。

杖先が意味もなく揺れる。じっとりと汗ばみ始めた手で杖の感触を確かめながら、身体を這う彼女の指を意識で追った。

その細くしなやかな動きがとうとう中心へ辿り着き、服の上からカリ、と引っ掻く。


「――っ!」

「残念。反応はなし、ですか」

「小娘相手に勃つはずがない」

「それなら刺激すれば良いだけ。私だと思う必要もありませんから、刺激に集中して」


言うが早いか、彼女は急所でもあるそこをグッと強く押した。


「っく、ぁ!?」

「痛いだけじゃない声……。せんせい、少しくらい痛くても気持ちよくなっちゃうタイプ?」

「そんなことっ――」

「私、そういう人大好き」


手酷く刺激されたモノを慰めるように、彼女の右手が服を撫でた。左手はスネイプの右肘から先へと滑る。拳の隙間から汗ばんだ手のひらを擽って、スッとその手から杖を抜き取った。


「よく出来ました」


褒美だと言わんばかりに彼女は鉤鼻へとキスを落とす。頬へ、顎へ、喉へ。徐々に下へと向かった。厳重に閉じられた黒の服へ再び手が触れて、スネイプは熱を帯び始めた息を吐き出す。


「私は何もしない」

「そうしてください。私がすべてやりますから。これからどれだけ気持ちよくなっても、手で口を押さえたり、我慢も、しないで。ね、せんせい?」



end


続きは、ないです。このくらいが文章力の限界でした。


2019/02/10


▼ツイート!

診断メーカーのこちらこちらで書き出しと終わりの文章、そして文章量などを使用させていただきました。
書いたものだけブログにも載せておきます。
パート2!!!
最近ハマっているのです…書きたいところだけを書いているので文章量としては少ないですが。サイトを見てくださっている皆様から書き出しと終わりの文章を募集して書きたいくらいです。募集したら参加してくださるかたいらっしゃるんでしょうかね…文章ってなかなか作って送りづらいかな、と思うのですが。アンケートとかを設置して無反応だと悲しい。

・・・

ひとつずつ壊れていく。
彼の周りから正義や大義を語るものが消えていく。あとに残るのはとても崇高なもの。
「あのお方に謁見が叶うとは……」
「当然よ、セブルス。あなたは重要な予言を手に入れた」
「ルシウスはあのお方が私に同胞の印をくださるかもしれない、と」
「それも不思議じゃないわ」
「私のような混血でも?」
「あのお方は働きを認め褒美もくださる」
「そうか……」
「もし叶ったら、二人で祝杯をあげましょうか」
「そうだな……たまには良いかもしれん」

「その時は、私の印も刻んであげる」
一人残った林の片隅で、
そう小さく呟いた。

・・・

今日も空が青い。
外と同じ大広間の天井を見上げ、また視線を下げた。久方ぶりに満員となった朝食のテーブル席。今日からまた新たな一年が始まってしまった。休暇中の快適さとのギャップに眉間に力が籠る。
「セブルス、ミルクもお飲みなさいな」
「世話していただかなくとも結構です、ミネルバ」
彼女からゴブレットを遠ざけて、近場のミネラルウォーターを手に取った。
「成長期の子供でもあるまいし――」
「私の噂ですか?」
そう言って現れたのは、グリフィンドールの制服に身を包んだ女子生徒。ミネルバの前へ立ち、こちらへと首を伸ばす。それを払うように手を振ると、彼女はゆっくりと体勢を戻した。
「元気なようで何よりです」
「首席に選んでいただけるなんて光栄です、先生!本当は昨日ご挨拶に伺う予定だったのですが……」
チラリとこちらを見た彼女に釣られ、ミネルバもまた私を視界に止めたことが気配で分かる。
「城へ到着してすぐ玄関ホールで杖を抜いた者へ罰則を与えるのは当然だ」
「あれはスリザリンの――」
「言い訳を聞く気はない」
「「首席は模範と……」」
被った台詞は同じタイミングでまたピタリと止まった。顔を見合わせた我々の隣でミネルバが丸くした目を瞬かせる。
「先生からどうぞ?」
「いや、結構。気が失せた」
同時に食欲までごそりと抜け落ちて、ゴブレットの水を傾けるに留めた。
「あれほど見事なこともあるものですね」
大広間では滅多に見かけることのない砕けた表情のミネルバに、今度は向かいの生徒が目を瞬かせた。そしてその彼女の口から発せられた一言に、私の番が巡る。
「私達は仲良しなんです」

・・・

いわゆる奇跡だったのです。
生まれたタイミングだとか、魔法の力とか。魔法族の言うマグルの家に生まれた私がホグワーツに通い、そこであなたに出会った奇跡。同級生として同じ寮に入ったこともそう、奇跡。
「スネイプ……?」
数年振りの再会がまさか私の家の前だなんて、想像もしなかった。
「…………」
だんまりを決め込む彼は真っ黒のローブにフードを被り、顔には仮面。けれど私には分かる。その奥に隠れた顔が。
「どうして……」
曇天からポツリポツリと大粒が落ちる。
「死喰い人なのね」
敵ばかりのスリザリンで、あなたはマグル生まれの私にも手を差し伸べた。隣には決まってグリフィンドールの女の子がいたけれど。それでも私は嬉しかったのに。
「杖は出さない方がいい。君では僕に到底敵わない」
記憶より少し大人びた彼の声は残酷な響きを伴う。彼の杖腕は下げられたまま。それでもしっかりと杖は握られていた。
「ここへは、何をしに……?」
あるいは、もう。震えるのは声ばかりではなかった。私を通りすぎ真上を指す彼の杖腕が、やけにゆっくりとして見えた。
「モースモードル!」
杖から昇った閃光が、雲へ当たって緑に染めた。見たくもない髑髏と蛇のシンボル。その呪文が意味するものは魔法界へ触れたすべての人間が知っている。
「あぁ嘘……嫌っ、そんな!スネイプ!」
杖を出した時にはもう彼の姿はなく、崩れ落ちた私へ駆け寄った人からは魔法省だとか闇だとかの単語が聞こえていた。
「いっそ私も殺されたかった……」
これは慈悲のつもり?同級生のよしみなんて死喰い人にも存在するの?あの日々にいたあなたはどこへ?
あぁ叶うなら、ずっと子供でいたかった。

・・・

「たったひとつ欲しいものがあります」
二人にとっての記念日。こうしてパブで会えただけでも珍しいことなのに、私はどうして欲張ってしまうのだろう。
「君のことだ。私の心、などと言うつもりだろう?馬鹿馬鹿しい」
「大当たりです」
口が滑るのは酔いのせい。同じものをおかわりして、また口へと運んだ。隣で彼が呆れた息を吐いたのは、お酒の量か、この会話か。
「生憎、私の心はそういくつもない」
「ひとつではないんですね」
「君が知りたいなら、それについては何れ話してもいい。だが今は君とのことだ」
「酔って馬鹿馬鹿しい話をする面倒な私とのことですか?」
彼がまたため息を吐いた。今度は間違いなくこの会話のせい。私よりも強い酒を呷る彼は顔色ひとつ変わらない。
「既に持っているものを欲しいとねだるのは馬鹿馬鹿しいだろう」
「…………」
「その間抜け面を引き締めろ」
「……酔いが覚めました……」
「この顔で?」
ヒヤリとした彼の指が私の頬へ当てられる。いや、私が火照っているだけだろう。それもこれも全て彼のせい。
「なかなか言葉にはしてくださらないくせに」
「私の分も君が言うからだ」
「なら減らします」
「思ったことがそのまま口に出るのは君の長所だろう。無理はするな」
トントンと頬に触れ離れていく手。無意識に追おうと身体が傾いて、彼に笑われた。私だけが見ることの出来る表情にまた鼓動が速くなる。
「私にも、ひとつ欲しいものがある」
何かを欲しいなんて普段口にしない彼の言葉。彼は私の欲しいものを当てたというのに、私は全く見当がつかなくて首を傾げた。
「私の心は既にセブルスのものですよ」
「馬鹿馬鹿しいと言っただろう。私はもっと目に見えるものを希望する」
そう言って彼はショーケースのケーキを選ぶように私の指を吟味して、一本を選びとる。掴まれた指は腕ごと彼の目線の高さまで持ち上げられた。
「ポリジュース薬に使う、とか……?」
「馬鹿者。あれには髪一本で十分だ。それに君になる必要もない。――これをつける気はあるか?」
掴まれた薬指の付け根を、彼の親指が撫でる。差し出されたもう片方の手のひらには――指輪。
「こ、これ」
「今はまだやるべきことがある。それが終わるまでは待たせることになるが、愛想が尽きるまではこれを――」
「つけます!ずっと!セブルスが私に愛想を尽かしても!」
「君はもう心の話を忘れたのか」
いつか世界が平和になって、彼の荷が全て降りる日が来ると信じて。
私たちの夢は遠くに続いていく。


2018/11/04


▼ツイート!

診断メーカーのこちらこちらで書き出しと終わりの文章、そして文章量などを使用させていただきました。
書いたものだけブログにも載せておきます。

・・・

それはまるで呪いのよう。
『君は強い』
馴染みの言葉。いつもの別れ。一人の夜。強いお酒。違うのは、寄ったパブに妙な服装の客が多いこと。
二杯目を呑む頃、隣に黒ずくめの男が来た。長いマントに不機嫌そうな顔。
「あなたも嫌なことがあったの?」
「ない」
チラリとこちらを見た黒い瞳の返答は『ある』
「私は恋人にフラれたの」
「愚痴なら他所を当たれ」
「強い女は嫌い?」
引かずにそう尋ねれば、ため息と共に彼の視線は私の手元へと落ちる。
「君は強いらしいな」
「そうね」
クスリと笑ってグラスを傾けた。そして隣を見ると、既に人はいない。一体彼はどこの誰か。
謎は謎のままがいい。

・・・

たった5文字が言えなかった。

今日が最後のチャンス。それも私の背中を押すにはまだ弱い。昼前にはホグワーツから去ると言うのに。夏を越えても、もうここへは戻らないと言うのに。
愛を語るタイミングに若すぎるなんてことはない、とラジオから繰り返し流れていたお気に入りの曲を口ずさむ。歌詞を覚えたサビばかりを繋ぎ合わせても気にする者はいない。
ここは温室。私が最後に見ておきたいと願ったホグワーツの場所。
「アグアメンティ」
これが最後の水やり。
「君たちは私がいなくなったって水と肥料さえくれる人がいれば良いんでしょう?薄情者め」
「薄情はどちらだ」
不意に温室へ現れた声。振り向かなくても分かる。暖かいこの場所にいつもの出で立ちが目に浮かぶようだった。
「私が薄情だって仰りたいんですか?」
背中越しにそう尋ねた。砂利を踏む音が近づくのを感じながら杖をローブの奥へと入れる。
「職員室へ挨拶もなく、大広間の馬鹿騒ぎへ交じりもしない」
「まさか探しに来てくださったんですか?」
未だ先生の姿は視界へ入れず、枯れかけた葉を摘み取っていく。足音はすぐ後ろで止まっていた。
「この目で確と送り出さねば、来年度も戻って来そうな気がしてならん」
「戻りませんよ。私のNEWTの成績をご存じないんですか?魔法省なんて楽勝なくらいです」
「だが君はマグルのご両親の店を継ぐ」
「そこまでご存じだとは」
「マクゴナガルが勿体ないと溢しているのを聞いた」
目の前の鉢の手入れを終え、仕方なく身体の方向を90度変えた。視界の左端で佇む黒衣に深呼吸を一つ。
「花屋なんです。と言っても、花束やブーケを作って売る方じゃなくって、こんな温室で育てる方なんですけどね。小さい頃からお手伝いが大好きだったから、後悔はありません」
とうとう手入れの行き届いた植物を前に、何もすることがなくなってしまった。それでも、顔を合わせて話すには勇気が足りない。そして泣かない自信も。
すがるように、汚れてしまった袖口を払う。
パンパンと布を叩く音だけが温室に響く。それも数秒も持たずに終わった。だらりと下がっていく腕は、障害物に当たって止まる。それはスネイプ先生の手で、掬うようなそれに私自ら乗せたようだった。先生の手が動けば、私の手も動く。
「エピスキー」
低い心地の好い呪文が甲の擦り傷を癒す。自分でも気づかなかったほどの些細なもの。治癒呪文の熱が消えても、全身の火照りが消えることはなかった。
「ありがとうございます」
「最後の日くらいは無傷でいたまえ」
「私そんなに怪我ばかりしてました?」
「その場で治療できる程度のものばかりなせいで自覚がないのかもしれんが、していたな」
「ご迷惑をお掛けしました」
「全くだ」
「お礼に私が丹精込めて育てた花をどうぞ。百合くらいはご存じですよね。香りがお嫌いじゃなければ部屋にでも――」
「切るな」
茎へ向けた杖を先生に止められる。
「私が部屋に花を活ける人間だと思うか?」
「……いいえ、全く」
「ここならもう少し長く持つ」
「百合、お好きなんですね」
「そう見えるか?」
「いいえ、全く。百合に意地悪でもされたみたい」
「意地悪、か」
フッと笑った先生の表情は初めて見るものだった。あんなに躊躇っていたのに、涙なんて驚きでかき消える。
「七年間、ありがとうございました」
私では先生をあんな表情にさせられない。
だから、
「さようなら」

・・・

青い鳥が羽ばたいて消えた。

教室を優雅に滑空していた紙の鳥をアンブリッジが打ち落とした。チリチリと黒いカスが辺りに舞って、机を汚していく。私の目の前には燃え損ねた青い欠片。羽根の一部か、嘴か。私はそっと息を吹き掛け、床へと追いやった。

退屈ないつものDADAを終え、一目散にアンブリッジから逃げる学友を横目に床の鞄へと手を伸ばす。靴先に始業前の青い欠片が乗っていた。ピンと爪で弾いてしまえばいい。けれど私は親指の先よりも小さなその欠片をつまみ上げた。そして歩幅の狭いコツコツとした靴音から距離を取るように、私もまた、扉を目指す。小脇に抱えた教科書へ青い欠片を閉じ込めて。

翌年のDADAはスネイプ教授が担当することになった。アンブリッジよりよっぽどいい。教科書もより実戦的なものが選ばれた。それでも以前の教科書を引っ張り出してきたのは、レポートの作成で躓いたから。気分転換を兼ね日の当たる中庭でそれを開く。忘れ去っていた青い欠片がふわりと本から飛び出した。風に掬われ高く舞う。空に溶けそうな紙が飛び込んだのは上階の廊下。闊歩するスネイプ教授のいる場所。すれ違い様にスリザリン生が教授の肩を指差して、彼はそこから何かを摘まむ。
廊下で一人立ち止まったままの教授。それをただ見つめる私。
静かな時間の中に、青い鳥が羽ばたいた。紙の鳥は邪魔されることなく空を横切り、徐々に高度を落としていく。鳥は私の手のひらに止まった。
これを、スネイプ教授が?
誰がそんなイメージを持つだろうか。殆どが燃え、欠片となった鳥を復活させて、空へ放つなどと。
「君か」
不機嫌さの滲む声。いつもの声。顔を上げると、上階にいたはずのスネイプ教授がすぐそばまで来ていた。両手を腰へ当て、眉間にはいつものシワを刻んで。
「これはスネイプ教授が?」
「生徒のするお遊び程度、我輩には造作もない」
技術の話ではなく、それを他でもない教授がしたことに驚いているのだけど。そんなこと、本人に言えるはずもない。
「あ。はい、どうぞ」
かつてのように無駄なおもちゃは燃やすか消すかされるのではと、青い鳥を差し出した。しかし教授はそれを一瞥するだけ。
「元は君の撒いたものだろう。最後まで責任を持て」
たかが紙屑に何て大袈裟な。
心では首を傾げながらも口は行儀の良い返事をした。
「前任者の参考書でレポートを書く気なら止めておけ」
「では質問しても良いですか?」
「部屋で聞こう」
青い鳥は幸せを運ぶとどこかで聞いた。忘れていた欠片が大きく羽ばたいて戻ってきたことへ、心は少なからず弾む。

つまり私は恋をしている。

・・・

「あなたの恋は何色ですか?」
それが店の決まり文句。魔法薬の入ったオリジナルの香水を調合するため、今日も私はそう問うた。
「色?色……黒、かな」
答えたのはまだ十代くらいであろう女性客。
「黒、ですか」
「あ、いや!暗い意味はないんです!毎日顔を見れる相手だし。ただその人のイメージカラーが黒で……」
はにかむ様子に初々しさが輝く。
「分かりますよ。私もかつて黒色の恋をしました」

調合した香水に満足してくれたらしい客を見送って、少し前の会話を思う。
黒色の恋。
お揃いの黒いローブを身に纏い、彼は髪や目まで黒かった。差し色まで同じ私たちは魔法薬の話で意気投合し、ホグワーツ城を一緒に駆ける日々。

「セブルス、閲覧禁止の棚の許可証を手に入れたって本当!?」
「あぁ!スラグホーンが書いてくれた!もちろん君も来るだろう?」
「ええ!いつ行く?」
「今から!」
「そんな、夕食時間内に図書室から出てこれる自信ない!」
「マルシベールたちに取っておいてくれるよう頼んでおいた。二人分だ」
「セブルスってそんなに気が利くやつだったっけ?」
「君は余計なことを言ってチャンスをふいにするやつだったか?」
暫し目を合わせ、私はプッと吹き出した。彼は上げた片眉を戻してニヤリと笑う。

卒業後、私たちの選んだ道が交わることはなかった。彼は今、どこで何をしているのだろう。ふくろうは届くだろうか。
黒色の恋を追いかけたあの頃。

全ては輝いていた。

・・・

『笑ってください』

彼女は気軽にそう言い残した。ただでさえ笑顔の作り方など忘れたというのに。理由もなく笑えるはずがない。せめて君が私の前で笑ってくれたなら。
「そうか……私はまだ涙を流せたのか……」
頬へ伸ばした指先は一滴の涙を掬う。無理矢理上げた口角は、もう、

君には届かない。


2018/10/29


▼原作後教授×マグル案

もちろん教授が生き残っている設定で話は始まります。

ホグワーツ大戦後、教授職を断りスピナーズ・エンドでひっそりと暮らすセブルス。良くも悪くも有名になってしまった。誰とも関わらずに過ごす彼。そんなもう一人の英雄を心配したマクゴナガルが提案したのは「お見合い」。いっそ、マグルの世界で暮らしてみてはどうか。誰かそばにいてくれる人を見つけて、新しく何かを始めてみてはどうかと。
セブルスが二つ返事で受け入れたわけがない。けれどこのままずるずるとただ「死んでいない」状態を続けることにも限界があるのは分かっていた。
マクゴナガルはセブルスに語る。自分にも激しく燃えるような愛があったのだと。あんなにも焦がれたのはただ一人。けれど叶うことはなかった。それからの人生で深く自分を愛してくれる人が現れた。その人にはかつての激しい熱は起こらなかった。それでも確かに、二人の間に愛はあったのだと。
深く心を打たれた…なんてことはなかったけれど、セブルスは半分以上自棄で結婚を決めた。相手は良くも悪くも主張しない女。すべての問いに「はい」と答えるその女もまた、最愛の人を亡くしたのだと言う。代わりがいるはずがないと分かりながら、お互いつまらない同居を始めた。

みたいなお話はいかがでしょうか。穏やかな田舎の一軒家で二人の生活。少しずつ縮まって行く距離。ポイントはマグルの生活をするセブルスが見れることです!激しく燃える愛ではないけれど、お互いがいると心地好い。そんな関係を築くお話。

書くかは分かりません。


2018/10/24


▼ゴースト

セブルスはゴーストを選ばないと思っています。しかしそれも原作の話。百合の他に新たな花が咲いていたなら。それでも原作通り幕を閉じるセブルスが好きです。


「また百合か。どいつもこいつも同じものばかり。いつ私が『百合の花』を好きだと言った?」
それは聞き覚えのある声だった。忘れられるはずがない。手向けた白百合から視線を外し、ゆっくりと顔を上げる。
「セブルス……?」
「他の誰だと言うのだ」
小馬鹿にした嗤い方も、尊大な仕草も、いつかの彼と同じ。
「セブルス!」
ただ違うのは、伸ばした手が空を切ること。かき抱けるものが何もない。闇のような黒いローブは今や半透明で、草木の緑や彼の墓石が彩りとなる。
「あなた――」
「ゴーストだ」
「どうして……」
「忘れものをした――いや、忘れられなかった」
「リリー・ポッターとのことは聞きました」
「今、彼女の話はしていない。……君のことをだ」


みないな妄想は何人もしていると思うのに形となっているものが少なすぎやしませんか?たとえまた会えたとしても、話すことができたとしても、触れられない。一人老いていく……ゴースト最高につらい好き。


2018/10/08


▼血の呪い

例のあれが人と動物を行き来しながらやがて完全な動物へとなってしまう呪いだとして、そんな呪いをもって生まれた主人公と教授の話をすぐ考えてしまう夢脳の私です。どんな動物でも植物だって良いんですが、魔法薬の材料になれる存在がいい。

例えば両片思い設定で↓↓↓

卒業前の最後の夜、地下を訪れる。気持ちを直接に伝えることはしなかったけど、伝わっているだろうなとは思っていて。他の生徒よりは多少受け入れられている自信もあった。談話室で盛り上がる同級生を置いて来たことへチクリと言及し、それでも扉は開かれる。
「先生?私がいよいよって日には、またここへ戻って来てもいいですか?」
「断る。もっと適した場所があるだろう」
「なら言い直します。私は必ずここへ戻って来ます。先生の元へ」
「全くもって意味が分からん」
「私ね、魔法薬になりたいんです。色々調べたんですよ。身体の全部を使うとどんな薬が出来上がるんだろうって。例えば目玉は――」
「止めろ。我輩に魔法薬の講義をする気か?馬鹿にするのも大概にしたまえ」
「あ、ごめんなさい。先生なら私を余すところなく使ってくれますよね。そして煎じた薬は先生に全部飲んでほしい」
「魔法薬は無闇に飲むものではない。それに君を他の材料と同一として考えるには確証が足りん」
「これは遺言みたいなものですよ。聞いてくださらないんですか?」
「君の感傷に我輩を巻き込むな。さっさと寮へ戻って馬鹿騒ぎに興じておけ」

数年後、彼女は本当に戻ってきた。小さな檻にその身体を閉じ込めて。まるで本当に薬材料の郵便物かのようだった。
彼女は最後に私に会うこともなく、言葉を聞かせることもしなかった。自我を失うその瞬間を彼女がこの中で蹲り過ごしたのは明白で。ざわめく胸中から逃れられなくなる。
私室をしっかりと施錠して、檻から彼女を解いた。飛び出し逃げるかに思えた彼女は鼻を小刻みに動かしソロリソロリと移動する。一頻り周囲を窺うと、私へと近付いてきた。警戒心を持ちながら、それでも確実に距離は縮まる。
『私が完全に変わっても、先生には懐きそうですね』
何度か変身した彼女を世話した際に、そう言っていたことを思い出す。想像通りの様子にフッと鼻で笑った。小首を傾げるような目の前の存在にまた別の記憶も甦る。
「本当に自我はないんだろうな?」
問うてみても、返事があるはずもない。ペットに話しかける馬鹿げた行為を自らがしていることにばつが悪くなり、痒くもない頭を掻いた。
「事前の連絡もなしとあっては飼育環境が整えられん」
溢した文句が虚空へ溶けて彼女へ届いてしまえばいい。『遺言』だと残した言葉を聞くつもりは毛頭なかった。
どうせ彼女はもう覚えてすらいない。
「君は勝手にここへ来た。今度は私が勝手にする番だ。……私にも情くらい存在する。君には見抜かれていると思っていたんだがな」


みたいなー!みたいなー!如何でしょうか?悲しすぎないように書いたつもりなんですが。二人とも思いは告げていないけど受け入れていて。色んな思いはあるけど逃れられない運命に抗うのではなく…。卒業後も生存確認的な手紙は主人公なら来ていたかもしれません。
セブルスとしては主人公と話しながら姿を変えた主人公を解剖する自分を想像してしまう方が怖かった。

名前を呼ぼうにも主人公と同じ名は気が引けて、悩んだ末に主人公が友人たちから呼ばれていた愛称を思い出し、その名で呼ぶセブルスが尊いです。

檻入りの生き物が届いたあと数日が経ち、主人公が突如訪問してくる展開も面白いと思います。
「先生、お久しぶりです!私からの荷物届いてますか?生き物送ったの初めてで……」
セブルスは絶句するだろうしめちゃくちゃ怒ると思います。
「私が最後の挨拶もなくお別れするはずないじゃないですか。でも本当にそろそろなんですよね。ですから今日は、そのご挨拶に参りました」
から一気にしんみりとして…この流れならセブルスは主人公を抱きしめると思うし言わずにいた思いも吐露すると思います。気持ちを伝えあい、想いが通じていると分かっても…。この展開の方が辛くないですか?ずっと明るく振る舞っていた主人公が「怖い」と打ち明けて、でもセブルスには抱きしめることしかしてあげられなくて。「私のことだけを考えろ」ってずっとキスして、話して、主人公が自分だけに集中できるようにして。「目を閉じるな」ってキスの合間に囁かれて、開ければ当然今までにない距離に彼の瞳があって、真っ直ぐに見つめ返してくる。
制御できず姿が変わっていくことに二人とも気付きはするけれど、何も言わず、ただお互いを感じて。

書きながら辛すぎてビックリした。

血の呪いの設定全く分からないからこそ好き勝手妄想できるんですよ素敵!設定分かってもそれに沿ってまた妄想するんですよ知ってる!

頭を駆け巡った妄想が吐き出せてスッキリしました!


2018/09/27


▼I love you.

ツイッターに上げたネームレス夢小説をここには置いてなかったな、と思いまして。

教授×助教授の恋人設定です。「I love you」をテーマに書いたのでそこだけ英語になっています。お好きな方は追記からどうぞ。


追記
2018/09/24


▼死後の同窓会

魔法使いには明確な死後の世界が存在していたら良いなと思います。望む者同士が集まれる場所。ハリーがダンブルドアや醜い子供と出会ったあの白い世界のような。
その世界にはリリーがいて、余計な男たちもいるけれど、ようやくセブルスに笑顔と幸福が戻ったらいいな。


「おっ来たな。主役でもないくせに遅れて登場とは、天下の二重スパイ様はやることが違うね」
静寂と白が続くと思った世界。そこに現れた耳障りな声に足を止める。記憶よりも低くなり、それでも抑揚や話し方は学生時代のまま。
「何故それを……」
「ここにいるとすべて分かるんだ。知りたいことがね」
別の教師めいた声が答えた。
「アクシオ、スニベルス」
「――なっ!」
怠そうな声が唱えると、セブルスの身体がグンと引かれた。地に足を突き立ててみても痛めるばかりで、終着点も見えてこない。
「貴様ら、いい加減に――っ!」
いつの間にか右手に握っていた杖。自身の向かう先へ向けた瞬間、閃光が走った。まるで落雷。反射的に閉じた目を開けば、目の前にはテーブルが迫っていた。
「シリウス!」
リーマスが叫んだ。
「はいはい」
シリウスが断ち切るように杖を振ると、セブルスの身体がピタリと止まる。テーブルまで僅か数センチ。しかし急停止の反動でセブルスの上半身は前へと傾いた。ゴッと鈍い音をさせて額を打ち付ける。
「これは私のせいじゃない」
肩を竦めるシリウスへ、すぐさまセブルスの杖先が向けられた。シリウスもそれを迎え撃つ。
「二人とも!あぁもう、シリウス!今日は穏便にいくって決めただろう?」
リーマスが二人の間に手を差し入れた。
「シリウス、私のリリーに流れ弾が当たらない自信はあるんだろうな?」
「ある。……が、アイツはないだろうから止めにする」
シリウスは杖を納めた。しかしセブルスにその姿は映らない。嫌みすらも届いていなかった。彼の漆黒はただ、豊かな赤毛を揺らす女性だけを捉えていた。にこりと挨拶代わりの笑みを作り細められる緑の瞳を。
「…………」
セブルスは口を開き、息を吸い込む。だが言葉にはならず。わなわなと唇を開閉し、フイと意識を逸らした。そして気まずさを誤魔化すように最もマシな元同僚へと話を振る。
「ここはホグワーツの大広間か?」
セブルスが傷や落書きの残るテーブルを撫でた。
「君がそう思うなら、そうだよ」
一度そうだと思ってしまえば、みるみるうちに空間が彩られていく。大きな窓、青空を映す天井、浮かぶ蝋燭。
「私のときはバイクで流してた」
「私はトンクスと過ごした家」
「彼女は……」
「今はいないよ。今日は同窓会だからね」
セブルスはその言葉で彼女の生死を悟った。これ以上掘り下げるべきではないことも。
「リーマス、リリーの隣に。スネイプの席はあっち」
当たり前のように仕切り始めたポッターに従う義理はない。だがリリーの手前、ことを荒立てる気もなかった。それに彼女の隣にならずに済んだことへ、僅かばかりの安心もある。
「待って、セブルス。君がここに座るべきだ。誰も異論はないはずだよ」
リーマスが宛がわれた椅子を引き、セブルスを手招いた。
「異論はある!今でも妻を想う男が隣に座るのは、夫として賛成しかねる!」
「リリーは?」
リーマスがやけに大人しいリリーを促す。
「私は……」
言い淀む姿に、セブルスは望みはないだろうと彼女から離れた席に手をかけた。
「セブ、隣に座ってくれる?」
「リリー!」
大袈裟に嘆いて見せるジェームズにシリウスがカラカラと笑っていた。
突然現れるティーセットや茶菓子に驚く者はいない。各々手をつけながら会話を弾ませていた。尤も、弾んでいるのは悪戯仕掛人の面々ばかり。セブルスは時折リーマスに問われ返事をするだけだった。長年その影を追ったリリーが隣にいるというのに、碌にそちらを見れもしない。
「私、セブに言わなきゃならないことがあるの」
唐突にリリーが切り出した。セブルスはビクリと肩を震わせカップをソーサーへと戻す。
「ちょっと待った!リリー、君が何を言いたいのかは分からないけど、こういうときは男から言うものなんだ」
リリーの奥から身を乗り出し割って入る癖っ毛を、セブルスがチラリと横目で確認する。
「セブ、ジェームズの言うことは無視して。私があなたばかり気にかけるから妬いてるのよ。私――」
「いや、リリー。私から言わせてほしい……」

みたいな同窓会ください!

「おい、スネイプが笑ったぞ!」
「嘘だろ……」
「あら、セブは昔からよく笑うわよ。ねぇ?」
「…………」
リリーの前でだけ笑っていたことがバレて居心地の悪さを感じるセブルスは尊いと思います。このあとすぐに強制席替えタイムが行われ、セブルスとリリーの間にジェームズが入ります(笑)

大人ジェームズが学生のままなノリですが、このメンバーならそうもなるのではと思います。ピーターは参加できないかも。でもテーブルの下とか、隅に、ネズミの姿でいるのも良い。みんな気づいていて、引き入れはしないけど、追い出すこともしない。そんな世界。ピーターには人型でみんなの前に出ていく勇気はないと思います。

リリーとジェームズがトムに予言を伝え死喰い人として色々なことをしてきたセブルスを許すなら、ピーターのことも許していると私は考えています。ハリーは生きているのだし。ピーターの弱さはリリーとジェームズを死に至らしめ、ハリーに過酷な運命を背負わせましたが、ピーターの弱さは最期にハリーを救ったとも言える。
何よりもうここではみんな死んでいるのです。こんな場所で何を言っても意味がない。水に流すとまではいかなくとも、好きに過ごす権利がある。そんなイメージ。

セブルス、どうか笑って。


2018/08/08


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