「お前よく魚のふぐりなんて食えるな」
「白子をそう表現する人初めて見た」
「実際そうだろ」
「そんなこと言ったら稲荷寿司だってふぐりみたいなものでしょ」
「全く違うしいい加減その話題から離れろ」
「お前よく魚のふぐりなんて食えるな」
「白子をそう表現する人初めて見た」
「実際そうだろ」
「そんなこと言ったら稲荷寿司だってふぐりみたいなものでしょ」
「全く違うしいい加減その話題から離れろ」
「……頭領みたいな男と結婚したい」
「ならオレと結婚するか」
「しません! 私、頭領“みたいな”って言いましたよね?」
「言っておくがオレは一途だし浮気もしないぞ」
「頭領の妻とか荷が重いんで! 何の柵もない次男希望です」
「しゃあイズナはどうだ?」
「イズナかぁ……身分も申し分なく何の柵もない次男……確かに良物件……でもなぁ……」
「何が不満だ?」
「うーん……やっぱりイズナは駄目ですね! あいつとは食の好みが合わないんで!」
「そうか。食の好みなら仕方ないな」
「はぁ、どこかにいないかなぁ……良家の次男……あ、目の前にいたわ」
「待て、そいつは駄目だ」
「頼むからオレを巻き込まんでくれ」
「……ふふっ」
「稲荷見つめて何笑ってんだ」
「このおいなりさん、マダラのふぐりみたい」
「オレのはもっとデカくて立派だろうが」
「兄さんそこじゃない」
「この手を離さないで」
今この手を離されたらきっと、わたしは駄目になってしまう。
わたしの言葉に彼は腕の力を緩めた。しかしその手が離れる事はない。
「そんなに弱い女だったか」
目の前でわたしが死んだでもあるまいに、彼は悲痛な表情を浮かべている。
「人は誰しも弱い部分があるものよ」
わたしにもあるように、きっと柱間や扉間にだってある。ただ他人の前ではそれを見せていないだけで。
「あなたにもあるでしょう?」
その言葉に、彼は腕の力を強めた。
「うおっ!」
「ぎゃっ!」
“個性”を使った途端に体当りするかの如く私の体にくっ付いてくる上鳴。毎回毎回本当に鬱陶しくて仕方がない。
慣れないし慣れたくないし馴れ馴れしいのがすっごくムカつく!
「あーもう! 上鳴鬱陶しい! 早く離れて!」
「だったら“個性”使うのやめろ!」
「はぁ!? “個性”使わないと勝てないじゃない!」
私の“個性”は“磁力”。磁力の強弱で金属を自由に操ることも出来るし、銃弾だって止められる。
結構強いのを自負しているのだけど、余計なものまでくっついてくるのがこの“個性”の難点だ。
「そもそも何で電磁石化してんのよ! あんたの“個性”ただの帯電でしょ!?」
「知らねーし分かんねーよ! 俺頭悪いんだから!!」
「威張ることじゃないでしょ!!」
こいつ、同じクラスの上鳴電気という男はその“個性”故なのか、ことあるごとに私の“個性”に反応してはくっついてくる面倒臭い奴だ。
お互い不可抗力とはいえこうも毎回毎回くっつかれては授業どころではない。
「早く離れてよ!」
「なぁ……」
「?」
「もう俺たちさ、付き合わね?」
「絶対嫌」
急に真剣な声を出すから何かと思えば下らない。磁力を反発させ上鳴を敵役の二人に向かって吹き飛ばしてやった。
「ぬわーっ!!」