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池袋、60階通り――今日も人で賑わうその場所を、あてもなく歩いていた。のだが、
「……雨」
運悪く、通り雨に遭遇してしまった。やれやれと肩を竦め、適当な場所へと非難する。服についた水滴を指で払いながら、軒先から店を覗いた。
赤、青、黄色、白に桃色、緑色――色鮮やかな愛らしい花々と香りに、誘われるように店内へと足を踏み入れていた。
普段ならば、気にも留めなかっただろう。予報外れの雨に打たれたせいだろうか。自分でもよくわからない。
きょろきょろと視線を移動させ、馴染みのあるものから初めて見るものまで、ざっと花を見渡した。鮮やかで美しい、素直にそう思えるくらいには、その店の花はどれもみな生命力に満ちあふれていた。
その中でもひときわ目を引いた花があった。そっと手を伸ばし、その花びらを撫でる。雨はまだ止まない。もう少し見ていようか、それとも買ってしまおうか。
「いらっしゃいませ」
かけられた声に、顔を上げる。花が好きそうな、優しい笑顔が似合う感じのよい女性だった。
「その花、お気に召しましたか?よろしければ、こちらをどうぞ」
差し出された小さな紙を見る。花言葉、と書いてあった。値札を見て触れていた花の名前を確認してから、紙の中にその文字を探す。そうして見つけた花言葉に、思わず笑いがこぼれた。



「ありがとうございました」
笑顔と同じくらいにやわらかな声に見送られ、花屋を後にする。片手に抱えた小さなブーケを振ってそれに応えながら、雨上がりの60階通りを踏みしめた。





愛を込めて花束を





苧環(矢霧波江)
グレートメイデンスブラッシュ(津軽)
クロッカス(紀田正臣)
ジギタリス(平和島静雄)
撫子(門田京平)
パンジー(折原九瑠璃と折原舞流)
ベラドンナ(竜ヶ峰帝人)
ペンステモン(月島)
ライラック(岸谷新羅)
(デリック)
竜胆(平和島静雄)



増えたり減ったり

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