《私》は父親知らないし母親には赤ちゃんの頃ネグレクトされてるし15歳で天涯孤独になってる上に灰原と七海を殺しかけた罪の意識がずっとある。かなり重い過去持ちなのにじゅじゅに放り込むと霞む。
《私》の母親は遅くにできた待望の子供で(祖)父母めためたに甘やかされて育った反面、「女の子だからお家継げないね」「お婿さんもらわないとね」みたいなことを(曽)祖父母や御近所さんに言われまくって歪んじゃった経緯がありました。本編に擦りもしない情報でした。
すごく大事にされてる自負が強くて、実際にそうなんだけど、「結婚しないとね」「女の子だからね」みたいな悪意のない押し付けで、「もしかして私ってそのための道具なのかな?」みたいな。甘やかしと現実の落差で思春期に傷付きまくって何もかも嫌になっちゃったっていうか。
祖父母もすごくいい人たちってわけじゃなく、良くも悪くも普通の人たちで、心配性で気が弱い祖母と無口無気力な祖父が(娘の件を反面教師に)不必要に甘やかさずそこそこ厳しくした結果の内気な《私》15歳なので……ただ孫は可愛かったので神様に熱心によろしくしてました。
どうぶつになる のろいを うけた!
《私》と狐さん。
都内のマンションに狐がいるってどういうことだろう。
私の寝室に紛れ込んでいた黒い狐。ムジナさんや蛇さんが威嚇しているけれど、攻撃をしないってことは敵意はない。左サイドに変な癖がついていて少しだけ夏油さんに似ている気がする。見たところ呪霊では無さそうだし、とりあえずスマホを取った。
「保健所で引き取ってくれるかな」
「キュンキュィ!?」
スマホを持ってる手にしがみつかれてしまった。
「え、えきのこっくす……」
「キュウキュウ!!」
「会話できるの?」
「キュ!!」
本当に呪霊じゃないのかな。あまりに必死なので、とりあえずお風呂に入れて様子を見ることにした。動物病院もなんだか嫌そうだし、寄生虫の有無を見るためにも洗ってしまった方が良さそう。滅多に着ないタンクトップとホットパンツの部屋着に着替えてお風呂場へ。ムジナさんのシャンプーをちょっとだけお借りして、狐さんを綺麗した。
「かゆいところはございませんか?」
「キュキュン」
頭が良い。私が手を動かすのに合わせて良いところに体を擦り付けてくる。シャンプーをゆっくりシャワーで流してあげて、いざタオルドライの段階で身構えられ、……あ。
ブルブルブルブルブル!
……ムジナさんがやらないから油断した。全身に水滴を受けて固まった私に、狐さんはなんだか申し訳なさそうな空気。
ベッタリ張り付いたタンクトップが気持ち悪くて、諦めてお湯張りボタンを押した。
「君にはもう一回濡れてもらおうかな」
「キュッッッ!?」
ある程度お湯が溜まったところで服を全部脱いで、軽く体を洗ってから狐さんを抱え上げる。狐さんは何故か一寸も動かなくて、生きているのか不安になった。大人しすぎる。もしかして人に飼われていたのかな。都内にいるくらいだから野生よりは可能性が高そう。
「君はどこの子かな」
浴槽に浸かって、溺れないようにしっかり抱えて背中を撫でる。素肌に濡れた毛が張り付いてくすぐったい。ムジナさんをマッサージする要領で耳や顔まわりをゆっくり揉み揉み。強張っていた体が徐々にとろけて、いつの間にか私の胸に寄りかかる格好になる。人馴れしているなりに、知らない人間といるのは緊張したのだろう。時たまうりうりと指でくすぐってやりながら、ふと思う。
いつからか、私もこの家に溶け込んでいた。お風呂にのんびり入れるくらい寛げる空間になった。ゲ油さんの家、という認識がするりと解けて、夏油さんと私とミミちゃんナナちゃんの家、と思うようになっていた。今は双子ちゃんたちは寮に入っているから、夏油さんと私の家で。
「夏油さん、早く帰って来ないかな……」
夏油さんがいないと家の中が空っぽみたいに感じてしまった。
「寂しい、なあ」
──ボフッ! バシャッ!
「そういうのは面と向かって言ってくれないか」
「……」
人一人だと伸び伸び入れる浴槽も、成人済みの男女二人は流石に狭い。しかも相手はいつもの黒い着物姿で、足を外に投げ出す形で私の膝の上に横に座っている。いや、座ってるというよりは縁に掴まって浮いてるというか、──夏油さんだ。
お湯を吸った着物を怠そうに持ち上げて、長い髪をうしろに払う。一人と一匹がいたお風呂場の、さっきまで狐さんがいたところに夏油さんが。
もしかして、もしかすると。
「狐さん、夏油さんの顔知ってたの?」
私が寂しいって言ったから、狐さんが頑張って化けてくれたんじゃないかって。
「無理に化ける必要はないの。気を遣わなくていいんだよ」
呪いも神様もいる世界だ。きっと本物の化け狐だっている、はず。
「いや、私の意志では……なんだって?」
「夏油さんの代わりはいないもの」
ポタポタと水気が残った髪を、さっきと同じように撫でて。ご丁寧にピアスまでついた耳も揉み揉み。相手が夏油さんの見た目だからちょっと恥ずかしいけれど。落ち着かせるように抱きついて、背中をポンポン叩いた。
「夏油さんが一人しかいないように、君も世界に一匹しかいないの。君が代わりになる必要はないんだよ」
しばらくそうしていると、シャンプーの匂いに混じって嗅ぎ慣れたお線香の香りが。……お線香?
くっついていた体を離して顔を上げる。それこそ狐に摘まれたような顔の夏油さんが私を見下ろしていて。
流石に匂いまで化けられないよね、と。
「──夏油さん、何してるんですか?」
人間が動物になるなんて、どんな呪いだろう。しかも夏油さんがかけられるなんてよっぽど強い。
それって大丈夫なのかな。硝子さんに診てもらった方が……あと普通に服が乾くまでに風邪引きそう。
「夏油さん、話は後にしてまず着替えを、」
「何故だ……」
か細い声が浴室に反響する。なにかな、と耳を傾けたことを次の瞬間に後悔した。
「何故、私に面と向かって言わず狐如きに言うんだッ!」
「!?」
「君は本心をあまり口にしないタイプだろ! なのに動物には素直にお話できるのか!? 人間も動物だ! 私だって猿の一種だから! この際猿でいいからッ!」
「今度は錯乱の呪いですか?」
「動物への慈愛の1ミリでも私に向けてくれッ!」
「動物と夏油さんは別物……」
「当然だろ」
「えっ」
急にスンッと真顔になった……やっぱり疲れてるんじゃ……。
泣き言と共に抱き締められ、「ずるいずるい」と囁かれ続けた謎空間は、私がくしゃみをすることでお開きになった。
ちなみに本当になんらかの精神汚染があったらしく、治療後しばらく目を合わせてくれなかったのは寂しかった。
(狐夏油さんは精神汚染があったと主張していますが普通に混乱しただけです。あの人はシラフで嫁とお風呂入りました)
結婚指輪は毎日つけるものらしいと学んだ《私》が「毎日はちょっと……」と渋った結果、ピアッサーとピアスのカタログ持って「夏油さんが選んだピアス買って着けます」て宣言して旦那にピアスホール開けさせるという激ヤバ重儀式を強請り旦那にニッコリされる。
→コイツまた旦那にうなじ向けてるぞ。
→「本当にいいんだね?」
「はい」
「本当に?」
「あ、」
「やっぱりやめる?」
「いえ。拡張ピアスは怖いので、普通のがいいなあと」
「なんだ、そんなことか。……やっぱりやめないか?」
「お願いします」
「ハア……」
最初はウキウキしてたのにだんだん旦那の方が嫁の体に穴開けるの怖がってたらいいな。
夏油さんは「嫁がヤバい宗教にハマって困ってる旦那」でありながら新興宗教の教祖なせいで周りからはおまいう状態なんだよね。
《私》高専一年(夏油四年)の話なんですけど、夏油は《私》が世情に疎いしバレンタインとか知らんだろうなと思ってたら、たまたま高専で伊地知や七海灰原にチョコ配ってるところを見てしまいビックリして固まるし、四年は自由登校で高専にいないのでチョコがご用意されてなくてショック受ける。
→《私》は生まれ変わって初めての学校なので、バレンタインのチョコ配りもちょっと楽しみにしてて普段より表情豊か。夏油には恋する乙女(錯覚)っぽく見えちゃって、何故かイライラする自分を抑えきれなくて恒例の「嫌いだ」がいつもより刺々しくなっちゃうの……「? チョコが?」「君が」「ですよね」
→ですよねじゃないが?
→後日同じく自由登校でご用意されていなかった五条が拗ねまくった結果チョコもらってたけど、夏油には「嫌いな人に食べ物もらいたくないですよね……」と結局ご用意されず、「嫌いだ」の負のスパイラルに陥るビターバレンタイン。
→「あの時は悲しかったな。もらえなかったことも、素直になれない私自身も」「あの、夏油さん」「だから今は素直になろうと思うんだ」「チョコ食べないんですか? 溶けそうなんですけど」「食べるよ。あー」嫁にアーンさせる上にわざと溶けるように焦らして口に入った指も舐める一粒で二度美味しい旦那。
《私》は自分の神様がいるから初詣とかしない、と思いきやイザナギ/イザナミを祀る神社に普通に詣るしくじも引くし甘酒も飲む。
→他所の神社で《私》がお賽銭投げて手を合わせてる間、背後で神様の着物の裾からムジナさんや蛇さんが顔だけ覗かせてる。「マジかよ」
十年経っても嫁が炭酸苦手だしファストフードも食べ慣れないと思ってる夏油まだ書いてなくない????
→もう十年経つのに「君はコーラは飲めないだろ」と率先してコーラじゃない飲み物を渡して来る夏油くんさんはいます。《私》は炭酸飲めるようになりました。
→嫁が虎杖くん(+釘崎伏黒)と朝マ○ク行ってきたの知って呪霊玉落とした夏油……
夏油高専時代の自分がアレだったから今時の若者もアレだって勘違いしてるフシがあると思う。乙骨くんも虎杖くんも素直な良い子なのに。
夏油さんがセッッッ中に意図せず力加減を誤って《私》の首にアザを作ってしまい、陰鬱な雰囲気に加えてDV受けてる人妻感が増したせいでストーカー一歩手前の隠れファンが「そんなクソ旦那と別れて俺と結婚してくれ!」て突撃してきた。(※結婚前)
《私》はいろいろあってまあ普通の子ではないので「夏油さんが犯罪に走らないならいっか」程度の考えで一切拒否らなかったし、夏油さんは夏油さんで二十歳過ぎくらいまでは軽く病んでて大変だったし、病み期が終わった頃にはソウイウ関係に慣れきってたからそのままずるずる甘え続けて28歳って感じ。
28歳からは心機一転甘えさせる側になろうとするけど《私》の柔らかスキンシップには甘えざるを得ないんだよなぁ、げとを。
《私》
「十年ほど、呪われ続けています」
東京都立呪術高等専門学校文系教師
年齢:25歳
誕生日:秋
出身:石川県(?)
等級:準一級術師
呪霊:一級変異呪霊「お菊」、獣型呪霊「被綿」、蟲型呪霊「朝露」
技:拡張術式「神内隠遁」
趣味・特技:夏油のストレス管理、田舎料理
好きな食べ物:ブロッコリー
苦手な食べ物:酸っぱい物
ストレス:神様を利用しようと近付く人間
Q.趣味はありますか?
夏油さんのストレス管理。できてるとは言ってない。それ以外だと普通に仕事人間です。ほぼ無趣味。
Q.いま欲しいものは?
圧力鍋。洋食チャレンジ中に便利だと知り、今度の休みに見に行こうと思ってます。なお休みがない。
Q.友達はいますか?
任務以外ミミナナと夏油さんとのお出かけくらいしか外に出ないので、友達どころか知り合いもいない。夏油さんを恐れてまともな人は近寄らない。硝子さん経由で歌姫さん冥さんあたりとは交流があります。
Q.どんな服を着ますか?
キレイめカジュアル。無地の緩いシャツと足が隠れるスカートで体のラインを隠しがち。でもミミナナに強請られてお揃いコーデする際にはなんでも着る。ミニスカとかチューブトップとか。
Q.得意料理は?
祖母のレパートリーほぼマスター済み。茶色い煮物と炊き込みご飯が得意。おばあちゃんちに来た気分を味わせてくれます。
Q.初恋の相手はいますか? いない場合タイプは?
5歳の頃にテレビで見た俳優さん。7歳以降感情希薄になってから結婚報道があって全部忘れました。どちらかといえばソース顔の眉毛がハッキリしてる人が好きかもしれない。
Q.告白された時の断り方は?
「すいません、仮にも巫女として貞淑でいたいので」(※非処女)