022.『10日目〜14日目』


空太
(…………10日目。襲撃は、なかった。こんな状態でも、用心棒はまだ正常みたいだ。

 比較的早起きだった面々も、今日は中々姿を見せなかった。
 みんな、ショックが大きすぎたんだ。
 俺も、朝食だけ取って部屋に引きこもった。

 …………途中で果帆が様子を見にきてくれたけど、それだけだった。

 投票の時間はみんなで集まって、…………これまで通り、処刑はなかった。
 明日も、こうだといい。生きてさえいれば。少しずつ、みんな、元気になっていけばいいんだ……)



空太
(11日目。襲撃はなかった。
 やっぱりみんな、中々姿を現さなかった。
 みんなあの一件で、歯車が狂ってしまったのかも知れない。

 けど俺は一人でいられなくて、途中で果帆の部屋に顔を出した。
 果帆と一緒に、直斗に会いに行った。
 二時間くらい他愛のない話をして、すこし、憂鬱な気持ちが楽になった。
 …………時間はかかるかも知れないけど、みんな、こんな風に徐々に、気力を取り戻してくるだろう。

 今日も処刑はなしだ)



空太
(12日目。今日も襲撃はなかった。
 ぽつぽつと、リビングに顔を出す面々も増えてきた。
 今日は佐倉と果帆と一緒に、昼食を取った。
 終わる頃、筒井と竜崎と七瀬も昼飯を取りに来た。
 軽く挨拶と他愛もない話をして、そして、解散になった。

 そして、投票の時間。……処刑はなかった)



空太
(13日目。襲撃はなかった。
 今日は投票以外の場でも、みんなで顔を合わせる機会があった。夕食のことだ。
 白百合と果帆と、七瀬と佐倉が料理をしてくれたみたいだ。
 八木沼が、和歌野と小日向を呼びに行った。この二人と投票以外で会うのは、都丸のあの一件以来だった。
 二人は終始無言で、飯だけ食って、戻って行った。…………顔を合わせることができただけでも進歩だ。

 ここでの暮らしにも慣れてきた。
 また、以前のように戻れればいい。…………警察の助けがくるまで…………。

 今日も処刑はなかった)



空太
(14日目。この日も襲撃はなかった。

 果帆の部屋にいたら、白百合が顔を出した。
 3人で他愛のない会話をしていたら、果帆がこんなことを言い出した)
果帆
「美海に聞きたいことがあるんだ。
 …………空太の前だけど、いいか?」
空太
「…………?」
美海
「…………内容によりけりだけどね、いいよ」
果帆
「…………なんでさ、朔也じゃなくて、アキラだったんだ?」
美海
「…………どうして? 突然に」
果帆
「いや、…………いいんだ、話したくなければ。
 ただ、朔也はさ…………その…………」
美海
「…………うん……そうだね……」
果帆
「……てゆーか、この間水鳥が言ってたことも気になってるんだ」
美海
「紗枝子ちゃん?」
空太
水鳥 紗枝子みどりさえこ
 高潔な感じの大人びた美女で、彼女も元クラスメイトだった。
 女子にしては珍しく群れるタイプじゃなかったけど、果帆と白百合はほどほどに仲が良いみたいだ。
 …………俺はあの人、隙がなくてちょっと怖かったけどね……)
果帆
「ああ。なんで、朔也や如月じゃなくて、アキラなんだって」
空太
(…………今度は如月?
 ああ、…………あの一匹狼で、俺がすこし苦手だった元クラスメイトだ。
 如月 仁きさらぎじん
 一匹狼で、無愛想で、なにを考えてるかよくわからないやつだった。
 けど、白百合と朔也は仲が良かったみたいだ。
 …………俺も人付き合いは上手い方だと思うけど、この二人には完全に負ける。人当たりも良いしメンタルも強すぎる)
果帆
「どうしてそこに如月が関わってくるんだ?」
美海
「…………話してなかったね。ごめんね。
 …………あたしね、如月くんのこと、すこし好きだったことがあるの。
 ……中3の頃の話しだけどね」
空太
(マジか、それは驚いた)
果帆
「…………知らなかった」
美海
「そうよね、ごめんなさい。
 …………あたしね、誰にも言ってないし全部は話せないんだけど、…………兄が、いるの。
 …………いたの、昔」
空太
(…………昔?)
「…………ってことは、……今はいないの?」
美海
「うん。…………死んじゃったの。
 …………色々、大変なことがあって……。
 …………如月くんはね、……すこし、似てたの。
 おにいちゃ――――兄に。
 それで、すこし、気になってて」
果帆
「…………そうだったのか」
美海
「うん。…………でも今思うと、あれって恋だったのかな?
 兄に似てたって、それだけの理由で…………。

 ……でもね、今は、アキラが好きよ?」
空太
「そりゃそうだよ。
 ……好きじゃなきゃ、付き合わないでしょ」
美海
「うーん、……そうじゃないパターンもあってもいいと思うけど。
 でも、あたしはそうね」
果帆
「…………あたしも」
美海
「ふふ」
空太
(白百合が笑った。
 少しずつ、こんな場面も増えてきた。みんな。
 …………元に戻れるまで、もう少しかな…………)
美海
「…………それじゃ、二人の時間邪魔しちゃ悪いし、
 あたしは…………アキラと朔也のところに行ってくるわね」
果帆
「ああ。…………ゆっくりしてってもいいのに。
 でも、わかったよ。また、夕飯の時間にな。
 あたしも手伝うからさ」
美海
「ふふ、うん、またね」
空太
「うん、また」
果帆
「じゃあな」






 ――――PM16:30、リビングルーム
惣子郎
「ここへ来て、もう14日か」

「…………ああ」
冬司
「長い二週間だったね。とてもとても、長い」
(…………人狼じゃないだけ、君たちはマシだけどね。
 俺はここに来て、…………白百合さんに対する醜い感情と向き合わなきゃいけなくて、大変だって言うのに)

「…………本当に、長かったよな」
(美海と、勝平と、小田切が人狼……。
 …………毎晩、びくびくしながら襲撃に行ってたんだろうな。美海なんか、特に。
 ………………この小田切が、上手く取り持ってくれればいいが。
 …………小田切、すこし冷静すぎやしないか?
 ………………こんなところが、勝平と折り合いが悪そうで不安要素なんだよな)
由絵
「……あ! アキラぁ〜」

「……おお、由絵」
(リビングでだらだらしていたら、由絵がやって来た)
由絵
「あ、せーとかいちょーと小田切くんもいる〜!
 ちょうど良かった! 由絵、話があったんだ〜!」
惣子郎
「どうした?」
由絵
「襲撃のことなんだけど、
 由絵も一回だけでいいから参加したいんだ!
 お願いぃ〜」
(……そうすれば、勝平もすこしは心配してくれるかもだから)

「……それはダメだ」
由絵
「なんでぇ〜?」
惣子郎
「初めに決めたことなんだ。
 今更変えられないだろう」
由絵
「ん〜でも、由絵思ったんだけど、
 …………それって不公平じゃない?」

「…………それを言われると弱いな」
冬司
「………………」
(あーあ…………八木沼さんは言い出したら聞かないから)
由絵
「それに由絵は用心棒でも人狼でもないよ?
 なんの心配もいらないよ?」

「……けどな、由絵だけ特別扱いするのは出来ないって、わかるだろ?」
由絵
「………………」
(……なによ、みんな頭が固いんだから)

「それに勝平が心配するだろ?
 あいつことだから、ものすごーく怒るぞ?」
由絵
「…………それが目的だもん」
惣子郎
「え……?」
由絵
「…………見てて気付かない?
 勝平が、最近あたしに冷たいなって。
 …………勝平と付き合って、3年になるの。
 …………あたしたち、もうダメなのかも知れない」

「おーいおい、考えすぎだって。
 そりゃただの慣れってやつだ。安定した証拠だろ?」
由絵
「違うもん! 勝平は…………勝平は…………、
 たぶん、美海のことが好きなの。
 アキラも無関係じゃないんだよ!?」

「…………はい?」
(…………勝平が美海に優しいのは今に始まったことじゃないんだが……)
惣子郎
「…………俺たちはいない方がいいか?」
冬司
「そうだね…………」
由絵
「ううん! いて!
 …………とにかく、そんなわけだから、
 あたしと勝平の今後のために、させてほしいの。
 …………明日だけでいいから。……お願い」
惣子郎
「………………」
冬司
「………………」

「………………」
由絵
「………………」
惣子郎
「…………どうする?」

「…………それで由絵が納得するなら。
 …………いいか? 明日、一回だけだぞ?」
由絵
「あ! ありがとー! アキラぁ!」

「おぉおぉおぉ」
(由絵はそう言って、俺に抱き付いた。
 おいおい、美海はこんなことじゃ怒らないけど、……まずいだろって)
由絵
「ほんとに! うれしい!
 じゃああたしは部屋に戻るね!
 3人ともありがと〜ばいば〜い!」

「………………」
(そうして由絵は軽やかに去って行った)
冬司
「…………よかったの?」

「まあ、あの子は本当に言い出したら聞かないから。
 ああ見えて」
冬司
「そう…………」
惣子郎
「……まあ、きっと大丈夫だろう」

「…………だな」
(ならいいけどねえ…………。
 …………14日、二週間、か。
 そろそろ、犯人がなにか仕掛けてくるんじゃないだろうか。
 …………なにごとも、なければ良いがな……)





空太
(この日の投票も処刑はなかった。
 みんな、騒ぎはしないけど、顔を合わせて普通に会話ができるようにはなっていた。
 助けが来るまで…………見つけてもらうまで、こうであればいい。
 …………来るかどうかは、わからないけど。

 ………………。
 ……………………。

 ……………………けど。

 …………けどこの日の夜、恐れていたことがついに現実となった……)






 ――――PM23:00、和華の部屋
和華
「今日は…………」
(道明寺くんを守る番だわ。
 みんな、少しずつ気力を取り戻して来てる。
 ここで、わたしがしくじるわけにはいかない、絶対に。
 投票や襲撃役を買って出てる筒井くんや道明寺くんたちはもちろん…………人狼の人たちだって、みんなのために頑張っているだから)
和華
「……………………」
(ここへ来て、14日目ともなれば動作も慣れたものだった。
 わたしはいつものように、パソコンの電源を入れた…………。
 ………………だが。
 ………………今回表示されたメッセージは見慣れないものだった)

 七瀬和華さんにお知らせがあります。

和華
「…………!」
(いつもなら『今夜は誰を人狼の襲撃から守りますか?』って出るのに……っ!
 何事だと言うの?)
和華
「な…………なに、よ…………」



 お父様が、病と心労で倒れました。


和華
「…………っっっ!!」
(お父さんが………………。
 わたしには、お母さんがいない。7年前に病気で亡くなったからだ。
 お父さんとわたしと、まだ幼い妹の安葉(やすは)たちを残して死んでしまったからだ。
 わたしは炊事洗濯を覚えた。誰よりもショックを受けているお父さんを支えるために。気持ちよく、生活を、仕事をさせてあげられるように……。
 お父さんはわたしがいないと家のことはなにもできない。妹の安葉たちもまだ小学生だ。
 家事はいつもわたしの担当だった。
 …………そのわたしがいなくなったら…………)
和華
「………………っっ」
(メッセージ画面が変わり、わたしの家の映像になった。
 家にまで隠しカメラをつけてるんだわ!
 犯人はいったい何者なのだろう。こんなことまでできるなんて、ただの金持ちなんかじゃない、絶対に)
和華
「……………………っ」
(映像は、わたしの家のリビングだった。
 服や食器が散乱し、ひどい有り様だ。
 …………そして、自暴自棄になり酒を煽る父が、のどか、のどかと、…………わたしの名を呼ぶ。
 そして、…………母が死んだときと同じように、嗚咽をあげる)
和華
「…………お父さん……」
(…………のどか、…………のどか。
 帰ってきてくれよ、のどか…………。
 のどか…………のどかを返してくれ…………)
和華
「…………お父さんっっ!!」
(わたしは画面に飛び付いた。
 ここにいるよ、生きてるよ。そう伝えるように…………)
和華
「………………ぁ」
(わたしは、ぼろぼろと涙を流していた。
 …………帰りたい。帰ってお父さんを安心させてあげたい。妹たちに美味しいご飯を作ってあげたい。
 ……………………けど)
和華
「……………………」
(隠しカメラの映像が消える。お父さんが、画面の中から姿を消す)
和華
「お父さんっ!!」
(わたしは叫んだ。お父さん、お父さん、と何度も。

 ………………新しいメッセージが表示された)

 お父様は、急性心筋梗塞を起こされたようです。
 あなたのいないストレスが現れた結果でしょう。
 早く、帰ってあげたくはありませんか?


和華
「…………ぁ、…………ぁ」
(……………………どうしよう。どうすればいいんだろう。
 お父さん…………お父さん…………お父さん…………)
和華
「………………………………」
(……………………涙が止まらない。
 …………わたしは、どれほど、物思いに耽っていたのだろう。

 気付くと時計が…………深夜の12時を回っていた…………)





 ――――AM00:05、応接間
美海
「……………………」
冬司
「……………………」
勝平
「………………行こう」
冬司
「……そうだね」
美海
「……今日も何事もないわ、きっと」
冬司
「うん。みんな、かなり元気を取り戻してる。
 大丈夫だと思うよ」
勝平
「…………寝不足は相変わらずなんだがな。
 …………早く終わらせて、寝ようぜ」
美海
「ええ」
(今日はアキラを襲撃する番だ。
 …………ここへ来て、14日目。
 初めはあんなにこの夜の時間が恐ろしかったのに不思議なもので、今は慣れてしまった。
 …………都丸さんの一件を乗り越えたんだもの、あたしたちは。
 そのあたしたちに、もはや怖いものなんてないと思っていた。
 処刑はされない、襲撃はできない。
 …………そんな状態が、当たり前だと思っていたの…………)
美海
「……………………」
(………………………………なのに)


 ガチャ――――

勝平
「……………………!」

「……………………!」
冬司
「………………………………」
美海
「あ、アキ、ラ………………」
勝平
「道明寺…………」
冬司
「どういうこと……」
美海
「え、なんで? なんで開くの?
 え、なんで、…………え? ……え?」
勝平
「し、知らねえよ! これはなにかの間違いだ!」
冬司
「ちょっと落ち着いて、二人とも!
 待って、他の部屋も確認してみよう」

「………………そういうことか……」
美海
「……っっっ」
(あたしたちは急いで他の部屋を確認した。
 カチ、カチ、とドアノブが音を立てて、回らない。
 …………アキラの部屋は、…………アキラの部屋だけは開いた。
 それがどういうことなのか、…………混乱したあたしにはもはやわからなかった)
美海
「どうしよう、開かない、他の部屋は開かないの……。
 …………どうしよう、なんで、なんで」
冬司
「用心棒が……」

「ああ、裏切ったな」
美海
「っっ!! それって……」
勝平
「そんなわけねえよ、なんで今更…………、
 ……そんなわけ、ねえだろ…………」

「ここに来て二週間にもなるんだぜ?
 そろそろ気が触れる奴がいてもおかしくないだろ」
美海
「そんな…………」
(用心棒がアキラを守ってないとしたら…………、
 だからそれは、つまり、…………どういうことなんだろう……)

「まあ、指定先を間違った可能性はあるけどな?
 だがどちらにせよ、今晩は俺を殺さないと全滅、ってわけだ」
美海
「っ!!!」
(考えたくなかった、そんなこと、それだけは……あたし…………)
美海
「な、なによそれ……嫌、嫌よ、絶対に嫌!
 そんなの!!」

「まあ落ち着けよ。

 いいか? 用心棒が悪意なく間違った可能性を考慮して、明日の投票はこれまで通りやってくれ。
 今までは二人だったが、明日は三人だ。
 そうすれば五人で票が割れて、決選投票でも四人で割ることができる」
美海
「な……、なに、言ってるの、アキラ…………」
勝平
「おい、お前、お前…………自分が今から死ぬこと前提に話進めてんじゃねえよ」

「いや、やんないとみんな死ぬから」
美海
「!!」
勝平
「っ!!」

「…………俺を殺せ。選択肢なんかねえだろ?」
美海
「アキラ! そんなこと言わないでよ…………、
 できない、できるわけないよ、やだよ、アキラ……死んじゃやだ……」

「俺だって命は惜しいよ。

 だがそれ以上に…………、美海が、大切なんだ」
美海
「…………っ」
(その言葉に、弾かれたように涙が溢れてきた。
 後から後から、ぽろぽろと…………)
勝平
「っ…………!」
冬司
「………………」

「俺は、お前のためなら、死んでもいい」
冬司
「…………アキラ……」

「お前ら、絶対に美海を守れよ。
 ……できなかったら毎晩夢に出てやる」
勝平
「道明寺……、」
美海
「アキラ!! アキラぁ!!」
(あたしはアキラの胸に飛び込んだ。
 アキラはあたしを抱き止めながらも、話を進めることをやめなかった……)

「『占い師』の正体は、俺だ。
 当然、お前たちが人狼なのも知っていた。
 毎晩占っていたからな…………だから、

 …………いいか? 占い師のふりをしろ。
 もし、他に占い師を語る奴が出てきたら、そいつが『裏切り者』だ。隙を見て連携しろ」
美海
「待って…………待ってよ、アキラっ!」

「…………いいか?
 夜の11時になると、パソコンの電源が入る仕組みになっている。
 そして、『今晩は誰を占いますか?』の文字と共に、16人の名前が羅列された画面が勝手に出てくるんだ。
 それをクリックすれば、その場で誰が村人なのか人狼なのか、わかるようになっている。
 …………今までは占えなかったと言うことにして、なんとか、押し通せ。
 …………いいな?」
美海
「待ってってば!
 そんな、勝手に…………話を進めないでよ…………っ」

「美海…………。
 なあ、時間は? 大丈夫なのか?」
冬司
「…………あと、一時間半と、少し……」

「おっけー、十分だ。
 …………美海と二人きりにしてくれ。
 一時間と少ししたら、戻ってきてくれ」
勝平
「……道明寺」
冬司
「…………行こう、勝平くん」
勝平
「……………………」
美海
「…………っ…………っ」
(勝平くんと小田切くんは、悲痛な面持ちで、無言で部屋を出て行った…………)





 ――――AM00:25、晶の部屋
美海
「ぅぅ…………ぇっく…………」

「美海…………なぁ、美海……」
美海
「うぅ…………アキラ……約束、したじゃない」

「ん?」
美海
「…………『閖白えりか』じゃなくてっ、
 『白百合美海』としての人生をっ、一緒に、
 …………一緒に、歩んでくれるって……」

「うん…………」
美海
「…………あたしを『鳥籠』の中から出してくれたのは、アキラじゃないっ」

「…………なあ、美海」
美海
「アキラ…………」

「今でも覚えてる、お前と初めて会ったときのこと。
 一目惚れだった…………それに、思った。
 あー、俺、この子のために死ぬんだな、って」
美海
「……ど、して…………そんなこと言うの」

「俺が生まれた意味…………たぶん、それなんだよ。
 美海を助けること、鳥籠から出してやること。
 …………いつ如何なるときも、それが、俺の役目なんだ」
美海
「アキラ…………ねえ、アキラ…………」

「うん…………?」
美海
「…………普通の幸せなんて訪れないと思ってた。
 …………願っちゃいけないと思ってた……。
 でもあの日、アキラが『白百合美海を生きろ』って言ってくれて、変わったの。
 氷みたいだった、あたしの心が…………溶けていったの…………」

「うん…………」
美海
「だから、…………離れないで。
 あたしをそばに置いて。ずっと、ずっと」

「…………そばにいるよ。ずっと、ずっと。
 例え、どんな姿になろうとも。
 …………な、美海……」
美海
「…………アキラ」
(アキラは、少し皮肉げに微笑してから、あたしを抱き上げた。
 …………特徴的な、ニヒルな笑顔。あたしの大好きな笑顔。

 …………アキラはあたしを、そのままベッドに押し倒した)
美海
「アキラ…………」

「…………思い出作り」
美海
「…………アキラっ、アキラぁっ」
(そしてあたしは、アキラに抱かれた。
 いつも優しかったアキラ。でも今日は、すこし、荒々しかった。
 自分を刻み込みように…………あたしのそばにいるよって、教え込むみたいに。
 …………あたしの中に、熱いものを放った……)





 ――――AM01:40、晶の部屋
勝平
「……………………」
冬司
「アキラ…………白百合さん…………」
美海
「……………………」
(あたしは乱れた服を整えていた。
 その間に、二人はやって来た。
 …………サバイバルナイフと、ネイルガンを持って……)
美海
「……………………」

「……………………」
美海
「……………………」
冬司
「……………………」
勝平
「……………………」
美海
「………………………………。
 …………やっぱりやだよ…………やだ、いやぁ」

「…………勝平、頼む」
美海
「いやあああ! やだあ! いやあああああああ!!」
冬司
「白百合さん!」
勝平
「…………くっそ!!
 小田切! 白百合を連れていけ!」
美海
「アキラぁああ、アキラぁああああ……っ!
 あ、ぁぁあああ、あぁあああぁああああっ!」
冬司
「白百合さん!!」
勝平
「うわあああああああああああああああ!!!」
美海
(…………勝平くんは、サバイバルナイフを振り上げた。
 それが…………あたしがアキラを見た、最後の姿だった)




――――14日目、人狼の襲撃が成功しました。







「くくくくくくくくくく……、
 くくくくくははははははははっ!
 あっははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

「……………………」
(ぐったりと横たわる俺は、菫谷の高笑いをただ、聞くことしかできなかった……)




TIPS:天井の金魚
【残り:15人】


PREV * NEXT



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -