は?
004.1日目『役割と処刑方法』
「くっそ…………!」
「なんで……なんでうちらが、
こんなことをしないといけないんだよ……なんで……」
「………………」
「ねえ……、やっぱりなにかの間違いなんじゃないかしら。
弥重や、秋尾くんのあの映像も……合成かなにかで……」
「ははは……どっきりってことか?
確かに、そうだよな…………現実的に考えてあり得ねえっしょ。
つーことは、仕掛人は秋尾と都丸で……」
「よせよ。現実から逃げるな……」
「気持ちはわかるが……あれは、演技とも合成とも思えない」
「なんだよっ、じゃあ、認めたらどうなるんだよ!?
あのっ、秋尾を殺した変態野郎はっ!
俺らに殺し合えって言ってんだぞ!?」
「そうよ…………。
果帆は簡単に逃げるなと言うけれど、それって……、
もう全てを諦めて、殺し、殺されましょうってことじゃない」
「ち、違う! そんなつもりじゃない!」
「じゃあどういうつもりなんだよ!!?
こんな現実、受け入れられるわけねえだろうが!!
お前はなんでそんなに落ち着いてられんだよ!?
さては…………お前がその、『人狼』なんじゃ――――っ」
「お、おい!
まだ、そのカードってのも見てないのにいい加減なことをっ!」
「やめてっ、やめてよっ、もうやめて!!」
「…………白百合っ……」
「サキちゃんも結翔くんも、どうしてそんな風に言うの!?
果帆が、こんなこと、認めるわけないじゃない……っ」
「…………ごめんなさい」
「…………自分のカードを確認しよう」
「うん……、そうだね」
「カードの取扱注意は……確か……」
「ああ。絶対に他人に見せないこと、見ないこと、だったな。
扱いに気を付けよう」
「…………あった、これだ。
…………………………、…………」
(もし……、『人狼』だったら……)
「…………………………っ」
(………………『村人』?
そうか……俺は、ただの村人か……、
良かった……貧乏クジを引かずに済んだ……)
「……………………」
あなたは何の変鉄もないただの村人です。
力を合わせて『人狼』をあぶり出して下さい……か……)
「………………っ」
どうして……あたしにみんなを殺せって言うの?
これ以上……あたしに罪を重ねろと言うの……?
ねえ、どうして…………誰か、教えてよ……お兄ちゃん……)
「………………あっ」
これなら誰も殺さずに済む……勝平…………)
「………………これは」
「………………あ……」
まあ『人狼』なんて、うちの性に合わないしね……。
サキは…………どうだったんだ?)
「……………………。」
あなたは村人ですが反逆者です。
人狼勝利のため、村人を混乱させて下さい。
人狼は、あなたの行いを観察しています。
…………………………。)
「………………うそだろ」
アキラや朔也が能力者なら……上手く使いこなすだろうに……)
「………………。」
あなたは特別な能力を持ちませんが、夜の間、もう一人の共有者と電話で話すことができます。
あなたの相方は……佐倉小桃さんです。
佐倉、か…………美海や、アキラだったら…………。
いや、こんなことは考えちゃいけないな……)
「………………あ」
しかも相方は、乃木坂くん…………。
最後の慈悲かしらね、……神様の)
「……………………」
みんなを人狼から守ることができる。
筒井くん……あなたはなんだったの?
村人だった? それとも…………人狼?)
「………………」
良かった、ウソをつかずに済むんだ……)
「…………。」
……そりゃ、俺を人狼や能力持ちにしたって散々ボロを出すに決まってるかんなー……)
「………………は」
…………白百合は? 白百合も、村人だよな……?)
「………………。」
あなたは人ならざる者です。
仲間と協力し合い、夜の間に村人を襲撃して下さい。
あなたの仲間は……白百合美海さんと、千景勝平さんです……)
「……………………」
いったいどういうつもりなんだ?
恐らく、この状況を仕組んだ奴らはかなり用意周到に俺ら一人一人をよく調べあげている。
行動パターンまで読んでやがるんだ。計画的に、確実に実行してきている。
恐らく……全員に与えられた役割だって、打算されたものだろう。
なら……過信しているわけじゃないが、
俺を『占い師』なんて言う役職に就かせたら……村人の圧勝になる可能性が高いとは思わなかったのか?
犯人グループは村人を勝利させたいのか?
それとも…………俺を封じられる人物が人狼側にいる……?
……………………美海……)
「…………どう、だった?」
「…………村人だったよ」
「そう…………」
(こんな野暮なこと聞いて……どうかしてるよ、俺……)
「誰が……誰が、人狼なんだよ……?」
「…………目黒」
「とめんなよ!
人狼がとっとと死ねばいい話だろ!?
少なくともそれが一番多く助かる方法だろ!?
……違うかよっ!!」
「……違わないが。
人狼が自白すればどの道全員死亡だぜ?
お前それ、わかって言ってんの?」
「それはっ……」
イライラするな……)
「つーかお前、人狼の中に美海がいるとは考えないわけ?」
「なっ……」
「………………」
やっぱり、アキラには全部わかっちゃうのかな……)
(まずいっ、……道明寺……どういうつもりだ?
白百合を売るのか……?)
(アキラ…………正解だよ)
「どういう意味だよ!?」
「どういう意味もなにも、そのまんまの意味だけどな。
俺も人のこと言えないが、お前が色ボケ野郎なのは端から見ててバレバレっつーか?
……もし美海が人狼だったら、お前はそんなこと言えるわけ? とっとと死ねって?」
「そそ、それはっ……それはっ!」
「…………やめてよ、……アキラ……」
「……悪い。けど、そう言うこと。
人狼だってなりたくてなったわけじゃないんだ。
まだやれるだけのこともしてないのに、いきなりみんなのために死ねってのは、ひでえ話だよ。
…………心配すんなよ。一応、考えがある」
「えっ……?」
「ほ、本当!? アキラ〜!」
「…………ほっ」
アキラがそう言うんだから、きっと大丈夫だろう。
それより…………美海が、かなり憔悴してる。自分のせいだってまだ思ってるんだ。
秋尾のことはもちろん美海のせいだなんて思ってないけど、どう、声をかけてあげればいいんだ?
下手に慰めたって、責任感の強い美海のことだ。逆効果になるかも知れない。
アキラは……今は、状況を確認することを優先するだろうし、朔也もそうだろう。
あたしが側にいてあげないと)
「…………」
いつも頼ってばかりで、ごめんね…………)
「美海……」
「果帆……?」
「あたしのそばを……離れるなよ」
「……うん、ありがとう」
(果帆…………白百合…………)
「白百合っ、ごめんっ、俺、そんなつもりじゃ!」
「うん……結翔くん、きっと、大丈夫よ……」
今いるメンバーだって……なにか、引っ掛かる…………。
きっと意味があるはずよ……)
「……気になったんだが、人狼は名乗り出ることができないとして。
他の能力者は、どうなんだ?
名乗り出ても、問題ないんじゃないのか?」
「ダメだね」
「……ダメって?」
「うん。言語道断だよ。
……どうするの? もし……もしもだからね?
もし、今後、本当に『人狼ゲーム』をやらなきゃいけなくなったとして、
役職が全部バレた状況でゲームを進めたら……」
「小田切、経験者か?」
「うん。……少しだけどね。
ここにいるのは16人。6人が能力者で、あとの10人は村人か、人狼。
人狼だって、当然村人を騙るよね? この10人から人狼を当てるのに、どれだけの時間がかかると思う?
それに、人狼は間違いなく、真っ先に用心棒を狙うよね?
次に占い師、霊媒師、……かな。3日で重要な能力者がいなくなっちゃう。
……村人が不利になるよ、だから、ダメ」
「…………そうか……」
(この様子だと……小田切は村人なのかな?)
「なあアキラ、お前の考えってのを聞いてもいいか?
さっき言ってただろ?」
「まあ、待てよ。まずは施設を探索しようぜ?
…………少しでも、落ち着ける場所に移動したいしな。
ここは空気が悪い」
「確かに」
「さっきの続き?」
「ああ。だがその前に……、
野郎共、ちょっと来てくれ」
「ああ」
「な、なに?」
「たぶん、あれが例の道具だと思うんだが……」
「お……おい、おい……」
「…………劇薬、……日本刀、ナタ……っ、」
「ハンマー…………に、警棒か?」
「スタンバトンだな。先端から電流が流れるようになってる。
謂わば、警棒とスタンガンがセットになったやつだな」
「それに……これは、ロープか……」
「ああ。見ろよ。あそこに括れるようになってる。
本来『人狼ゲーム』は処刑することを、『吊る』と言うんだ。
間違いなく意識してるだろうな」
「だったらなにも、こんなに色々用意しなくても……」
「より凄惨にするためだろう」
「………………」
「くっそっっっ!!」
「………仕舞おう、こんなもの」
「……そうだね…………」
「…………男子ばかり、不公平だわ」
「えっ?」
「……サキ…………」
「だってそうでしょう?
わたしたち女子は、ただでさえ男性の力には敵わないですもの。
…………あそこにあるもので、彼らが武装したら」
「サキ……っ」
「サキちゃん……持ち出しは禁止だって言ってたじゃない。
武装なんて…………できないわ……」
「…………そうね」
「………………」
「………………」
「それじゃ……移動しよう」
「ああ……」