010.1日目『夜の時間』


 ――――PM21:00、空太の部屋
空太
(とりあえず風呂終わって出た。
 ジャージは水色のぶかぶかのやつ押し付けられた。
 くそー…………黒がよかったのに。

 ………………。
 こうしてひとりきりになるの久しぶりな感じがする……。
 昼間ゆっくり休んだつもりだけど、案外疲れてるみたいだな……。

 そう言えば、部屋をよく見てなかった。
 確かクローゼットに金庫があるって……。

 ……………………。

 あった。これだ。
 番号は…………えっと、なんだろ?
 なにかヒントはないのか?

 ………………。
 ……………………あ、カードに書いてあるかも。

 …………あった。四桁だ。
 えーっと、ダイヤルを回して……っと。
 ……なーんだ、なんにもなしか。
 つーか、クローゼットなんもないのな。
 なんの意味があるんだろ?

 えーっと、パソコンは…………。
 んだよ、本当に起動しねーじゃん。

 やることねーなぁ………………)

(…………………………)

(…………果帆の様子、見に行こうかな。
 …………いや、風呂か。

 いいや、寝よう。

 ………………なにごとも。

 ………………何事も、起きませんように

 ………………………………。)






 ――――PM21:30、朔也の部屋
朔也
「………………。
 …………なんだよ、これ」

(風呂を出た俺は自分の部屋を調べることにした。
 俺に与えられた役割は共有者。
 カードに書かれた金庫の番号を開けると、
 そこには、ワイヤレス式のイヤホンマイクが入っていた。
 これで、もう一人の共有者の佐倉と、深夜11時以降電話ができると言う。
 おそらく、パソコンに繋げて使うのだろう。
 金庫に一緒に入っていたメッセージカードを読むと、11時を過ぎるとパソコンの電源が入るようになるそうだ。
 たぶん、他の能力者もこの辺りの仕組みは同じなのだろう。

 ……………………だが。
 ……今の俺にとっては、そんなことはどうでも良かった。
 どうでも良いと言うより、俺は完全に思考停止していた。

 金庫の中には、メッセージカードの他に分厚い封筒が置かれていた。
 疑問に思いながらも中身を取り出すと……)
朔也
「…………美、海……」

(…………美海の、写真だった。
 それも、………………ポルノ写真。
 妖艶な顔つきをした美海が、惜しげもなく白い素肌を晒していた。

 俺は一瞬の思考停止の後、それを咄嗟に手放していた。
 手元にあった十数枚の写真が足元に散らばる。
 中には、本当に際どいものもあった。

 …………なぜ? なんだ、これは?
 合成? 本物?
 なぜ、犯人はこんなものを俺に?

 中学1年の入学式で初めて出会ってから、
 ずっと、ずっとずっと、世界中の誰よりも大切に思っている女の子。
 その女の子の、こんな写真を、……こんな侮辱するような写真を……。

 犯人への怒りで興奮が押さえられなかった。
 もっとも、その興奮は、大好きな女の子の妖艶な写真に生理的に反応してしまったせいもあり、そんな自分に嫌悪感を抱いた。

 呆然と、俺は足下の写真を見下ろしていた)
朔也
「……………………?」

(一枚、裏返っているものがあった。
 そこに、赤文字が書かれていた)
朔也
「…………閖白……えりか?」

(誰の名前だ、これは。
 ……………………美海?)





 ――――モニタールーム

「やっと見付けたか、クソ色男」

「……………………。」

「お前も見ろよ、美海の写真。
 エロいっしょ?」

「…………やめろ」

「けっ、つまんねー男」





 ――――PM22:15、美海の部屋の前
美海
「果帆、ありがとう。付き合ってくれて」
果帆
「ああ。アキラに約束したからな。
 髪、ちゃんと乾かせよ」
美海
「もう、子供扱いして」
果帆
「いや、美海って普段あんまり手かかんないし。
 …………不謹慎だけどさ、すこし嬉しかったよ。
 ……たまには、あたしのことも頼って。お願いだよ」
美海
「果帆………………。
 あたしは、果帆がそばにいてくれるだけで、こんなにも幸せなのに。
 贅沢ばかりできないって思ってたの。
 でも…………寂しい思いさせてたのかな?
 ごめんね、これからはちゃんと話すから」
(話せないことも、多いけど……ごめんね)
果帆
「そう、うん、その方が嬉しいよ、あたしは。
 …………じゃ、あたし、一応空太んとこ顔出すから」
美海
「うん。おやすみなさい、果帆」
果帆
「おやすみ、美海」






 ――――PM22:30、空太の部屋
果帆
「空太、入るぞ」
空太
「………………」
果帆
「空太…………寝てるのか」
空太
「…………むにゃ……果帆?」
果帆
「……起こしちゃったか」
空太
「ん……すこしウトウトしてただけだよ。
 どうしたの?」
果帆
「ん……一応、寝る前に顔見とこうと思って。
 …………心配だったからさ。
 でも、大丈夫そうだな。
 そのまま寝ろよ、おやすみ」
空太
「あ……うん、おやすみ……果、帆……
 …………………………。」
果帆
「……寝るのはっや」






 ――――PM22:30、果帆の部屋
果帆
(さて、あたしも特にやることがない。
 …………村人だったしな。
 金庫にはなにもなかったし、パソコンも使い物にはならなそうだ。

 ………………。

 ……………………秋尾。都丸。

 特別仲が良かったわけじゃない。
 なんなら、あたし自身はほとんど話したこともないくらいだけど、
 ……あんなカップルに、あたしは憧れていたんだ。
 それが……こんなことになるなんて…………。
 いや、考えるのはよそう。過ぎたことだ。過ぎたことなんだ。

 …………今日を乗りきれば……今日を……。
 筒井は大丈夫なのか?
 幸いなことに、信頼できる面子ばかり揃ってるけど…………ちょっとサキと目黒は怪しいけど……。
 用心棒……そして人狼…………、頼む、うまくやってくれ)
果帆
「………………」
(考えても仕方ない……あたしも、寝よう。
 ……………………。
 …………………………。)





 ――――PM23:00、晶の部屋

「さて、11時になったわけだが……」

(俺が簡単に寝るわけねえっての。
 …………電源、入るんだろうな……)

「………………お、起動した。
 ……なんだ、これは」

(ディスプレイは至ってシンプルだ。
 名前が羅列してありクリックできるようになっている。それだけ。

 俺に与えられた役割は占い師。
 毎晩、市民の中から村人か人狼かを占うことができる。

 俺の中でちょっと怪しいのは、挙動的に勝平なんだけど……、
 やっぱり一番気になるのは、彼女だよな)

「……美海」

(白百合美海の文字を押す。
 美海の名前が拡大されてって、ディスプレイの色に取り込まれて行った。

 …………そして。

 ……………………そして)

「……バカ、な…………」

 占いの結果、
  白百合美海は人狼でした



「バカな…………」





 ――――PM23:00、直斗の部屋
直斗
「11時か…………」
(金庫に置いてあったメッセージカードによると、11時以降パソコンの電源が入り、霊媒結果がわかるとあった。
 俺に与えられた役割は霊媒師。
 今日はみんなのおかげで処刑はなかったから、霊媒結果は見れないはずだ。
 けれど、一応………………)
直斗
「入った…………」
(シンプルな画面だった。
 特に操作は必要とせず、パソコンには、こう表示されていた)

 本日は霊媒対象がいません

(ちゃんと起動するとわかっただけで十分だ)
直斗
「よかった…………」
(…………人狼ゲーム。
 このメンバーでまさか本当にやることはないだろうけど。
 ……そう言えば、小田切は経験者だって言ってたな。
 それに、あの感じだとアキラもかなり詳しいのだろう。
 俺は未経験だが…………。

 こう言った形で霊媒ができると言うことは、他の能力者も同じようにこの時間に動くことができるのだろう。
 占い師、霊媒師、用心棒、共有者、それに、裏切り者…………。
 霊媒師は俺だけど…………あとは誰なんだろう?
 裏切り者…………俺が一番気になるのはこの能力者だ。
 村人でありながら、人狼の味方をする役割だと言っていた。
 …………それってつまりどういうことだ?
 普通の人狼ゲームではどういう風に振る舞うものなんだ?)
直斗
「……………………」
(考えても…………仕方ないか。
 筒井は大丈夫かな………………)





 ――――PM23:10、岬の部屋

「……………………狂人の振る舞い方……」
(金庫には、『狂人の振る舞い方』と言う名の冊子が入っていた。
 わたしに与えられた職業は『裏切り者』…………別名『狂人』とも言うそうだ。
 冊子の内容をまとめると、要するに、嘘で村人を混乱させるのが役目であるとされる。つまり、狂人。

 …………なるほど。占い師だと名乗ったり、かと思えば用心棒だと騙ったり、とにかく嘘に嘘を重ねて村人を混乱させ、人狼に気づいてもらうことなんだわ。
 それって裏切り者と判明すれば、投票される確率もぐっと下がるってことよね。だって、裏切り者を処刑する意味がないもの。

 …………なるほど。なんとなく、掴んできたわ。…………ゲームをするかどうかは、さておき、ね)





 ――――PM23:15、小桃の部屋
小桃
「……………………」
(共有者の能力を与えられたあたしは、
 金庫から見つかったワイヤレス式のイヤホンマイクを耳に当てた。
 パソコンには、『発信しますか?』の文字が浮かんでいるだけだ)
小桃
「……乃木坂くん…………」
(カードに書かれていた情報によると、もう一人の共有者は乃木坂朔也くん。
 ……あたしが、ずっとずっと恋い焦がれている男の子。)
小桃
「………………」
(あたしは意を決して発信のボタンを押した。
 数回、コールする音が鳴る。
 ……そして…………)
小桃
「あ! あ、乃木坂……くん?」
朔也
「≪……佐倉?≫」
小桃
「あ、あの、ごめんなさい、いきなりかけて。
 その……不安だったの」
朔也
「≪……いや、いいよ。
 お互い共有者だもんな。よろしくな≫」
小桃
「え、ええ! よろしく」
朔也
「≪…………悪い、佐倉。
 せっかくかけてくれたのに悪いけど、
 俺、自分でも思った以上に疲れてるみたいなんだ。
 明日、また話そう。
 今日はもう、寝てもいいか?≫」
小桃
「もちろんよ!
 ……ありがとう、声が聞けて嬉しかったわ……」
朔也
「≪ありがとう。
 …………じゃ、おやすみ≫」
小桃
「おやすみなさい、乃木坂くん……。
 ……………………」
(彼が切るのを待ってから、あたしはイヤホンを耳から外した。
 少しだけだけど、話すことができた、……嬉しい)
小桃
「……………………」
(………………こんなときだと言うのに。
 あたしは浮かれていた。少し。

 ………………突然、弥重の事を思いだして罰が悪くなった)
小桃
「………………弥重……、秋尾くん…………」
(秋尾くんの最期の姿が脳裏に蘇ってくる。
 血飛沫の向こう側に倒れた彼のことが……)
小桃
「……!!」
(………………弥重、ごめんなさい。
 昔、乃木坂くんのことがあって、あなたと気まずくなって、
 最近、少しずつ昔と同じようにあなたと接することができるようになったと言うのに……。
 あたしは、またあなたに、後ろめたいことをしてしまった……)
小桃
「……弥重………………」





 ――――PM23:20、和華の部屋
和華
「……………………」
(パソコンを起動すると、シンプルな画面が目に飛び込んできた)

 今夜は誰を人狼の襲撃から守りますか?

(そのメッセージが表示されてすぐに、
 16人分の名前が羅列される。

 失敗は許されない…………絶対に)
和華
「……………………」
(わたしは震える手でカーソルを動かす。
 …………筒井惣子郎。わたしの恋人。
 中等部の頃からよくわたしの気持ちに寄り添ってくれて、話を聞いてくれて、
 そして彼の話はわくわくするような不思議な話が多くて、わたしは徐々に彼に惹かれていった。
 これが恋心だと気付くのには、だいぶ時間がかかった。
 でも…………気付いた時には、わたしの胸の奥深くに根付いて、どうしようもなく愛おしくなっていた。
 高等部にあがってその彼から告白を受けたときの衝撃は忘れられない。
 わたしの、唯一無二の大切な恋人…………)
和華
「…………筒井くん」
(必ず、必ず、あなたはわたしが守るから。
 …………だから、わたしは彼の文字にカーソルを置き、震える指でクリックした)
和華
「……………………」
(あとのことは、人狼の人に任せるしかない。

 どうか、誰にも何事も、起きませんように……)





 ――――AM00:00、白百合美海
美海
「………………」
(深夜になった。
 あたしたちが動き出す時間……。

 今晩は、筒井くんを襲撃する。
 絶対に襲撃は失敗するはずだと信じて、あたしは、震える足で部屋の扉を開けた)
美海
「……………………」
(よかった。何事もなく出られたみたい。
 人狼のあたしたちに時間による制限がないのは本当のようだ。

 ………………とにかく。
 勝平くんと小田切くんと合流しなくちゃ。
 二人はどこにいるんだろう?)
勝平
「……白百合」
冬司
「白百合さん……」
美海
「小田切くん、勝平くん…………」
(階段を降りようとしたところで、ちょうど、二人と出くわした)
美海
「もしかして…………迎えにきてくれたの?」
冬司
「うん。
 …………とりあえず下に行こう。
 防音設備は完璧みたいだけど、ここじゃ難だから」
美海
「…………下?」
勝平
「応接間があるんだ」
冬司
「うん。見たところ、俺たちのために用意された部屋、みたいだよ」
美海
「………………そう」
勝平
「…………とにかく、移動しよう」





 ――――AM00:10、2F応接間
美海
「………………。」
勝平
「………………。」
冬司
「………………。」
美海
「………………。」
冬司
「…………どうする?」
美海
「…………どうする、って?」
冬司
「襲撃する? しない?」
美海
「…………?」
勝平
「…………どういう意味だ?」
冬司
「…………目黒くんが言ったこと、覚えてる?」
勝平
「……みんなのために死ねってやつか」
冬司
「そう」
美海
「……………………。
 …………選択としては、ありかも知れないね」
冬司
「白百合さん……」
美海
「でも…………今それをする意味はあるの?」
勝平
「ない。筒井を襲撃するんだろ?」
冬司
「……どうする? 用心棒が守ってなかったら」
美海
「そ、……そんなことって……」
冬司
「ない、とは言えないよ?」
勝平
「…………そのときに、考えるしかないだろ」
冬司
「…………もし守ってなかったら、困惑するだろうから、
 その前に決めておこうと俺は思って」
勝平
「なにをだ」
冬司
「…………死ぬか、殺すか」
美海
「………………」
勝平
「………………」
美海
「…………殺す、は、選択としてはありえないでしょ?
 少くともあたしはそのつもりよ」
勝平
「白百合…………」
美海
「……ごめんね、勝手なこと言って……。
 でも、小田切くん、考えすぎよきっと。
 …………誰が用心棒でも、あたしたちを裏切るような真似はしないわ。
 そんな人は…………この中にはいない」
勝平
「…………そうだな」
冬司
「…………。そうだね。
 白百合さんの言う通りかも知れない。
 俺の考えすぎかも知れないね」
美海
「そうよ。きっと。心配しないで?
 …………なんて、本当はあたしもちょっぴり不安だけれどね」
冬司
「白百合さん…………」
勝平
「…………白百合、小田切。
 とりあえず、行こう」
冬司
「待って。決断が早いんじゃない?」
勝平
「ここで悶々としててもしょうがないだろ。
 用心棒が信用できるのか、はっきりさせよう」
美海
「…………小田切くん」
冬司
「…………わかった。
 ………………行こう。」





 ――――PM00:35、惣子郎の部屋の前
冬司
「………………」
美海
「………………。」
勝平
「…………行くぞ」
美海
「……うん………………」
勝平
「………………」

カチ――――

美海
「………………」
冬司
「………………」
勝平
「…………開かない」
冬司
「ほ、本当……?」
勝平
「ああ」
美海
「えっと…………どういうこと?
 成功したってことでいいの?」
冬司
「開かないってことは、きっとそうだよ。
 勝平くん、確かなんだよね?」
勝平
「ああ。なにをしても開かない」
美海
「あ…………や、やった、良かったぁ……っ」
冬司
「………………ほう」
勝平
「…………緊張したな」
美海
「うん…………でも、良かった。
 本当に良かったぁ!」
冬司
「白百合さんの言った通りだ。
 俺の考えすぎだったね」
美海
「ふふ」
勝平
「はあ…………気が抜けたら腹が減ったぁ、
 カップラーメンなかったか?」
冬司
「倉庫にあったと思うけど。
 でもダメだよ。体にも悪いし、明日早く起きれなかったらどうするの?
 …………そうだ。勝平くんにも白百合さんにも話があるんだけど」
美海
「……? なあに?」
冬司
「二人とも、落ち込みすぎだよ?
 今回は襲撃も失敗したし、上手く行ったから明日からは大丈夫だと思うけど、
 怪しいったらなかったんだから」
勝平
「……悪かったよ」
美海
「…………ごめんなさい。
 秋尾くんのことがあって、どうしても……」
勝平
「………………」
冬司
「いや、ごめん、白百合さん。
 あれは、白百合さんだけのせいじゃないんだから。
 ……言ったと思うけど、俺も同罪だからね?
 責任を感じないで」
美海
「…………ありがとう、小田切くん」
冬司
「二人とも、今日はもう、休もう」
勝平
「…………そうだな。
 話は、明日以降もいくらだってできるしな」
冬司
「……うん」
勝平
「…………じゃ。
 白百合、一応、送ってく」
美海
「ええ? 階段上がったらすぐよ?
 平気よ」
勝平
「いや、いいから。……行くぞ」
美海
「ええっ? あ、小田切くん、
 それじゃ、また、明日」
冬司
「……うん。おやすみ」
美海
「おやすみなさい」





 ――――AM00:50、美海の部屋の前
美海
「…………勝平くん?」
勝平
「うん?」
美海
「……心配性ね」
勝平
「ばーか。ほら、着いたぞ」
美海
「……ありがとう」
勝平
「……なかなか寝付けないかも知れないけど、
 早く、寝ろよ」
美海
「……ありがとう。ふふ、勝平くんもね。
 ……お互い、あまり、考え込まないようにしましょ」
勝平
「…………ああ。……それじゃ。

 ……白百合!」
美海
「?」
勝平
「……俺さ、不謹慎だけど、
 お前が、人狼側にいてくれて良かった」
美海
「……え?」
勝平
「お前のことは信用できるから。
 …………じゃ、おやすみな」
美海
「勝平くん…………うん、おやすみなさい」

(勝平くんも小田切くんも、不安なのね。
 でも、今日は無事に乗り切ることができたわ。
 本当に良かった…………。

 …………ほっとしたら、眠くなってきちゃった。
 …………考えなきゃいけないことがあるはずよ。
 誰が、あたしたちをこんな目に……?
 アキラ……アキラと、…………話が、したい…………。

 ………………果帆、朔也……みん、な…………。

 ………………。

 …………………………。)





 ――――AM01:10、紗枝子の部屋
紗枝子
「…………で、みんな寝静まったわけだけど」
(菫谷と如月がいる部屋を離れ、わたしに与えられた部屋に籠ってからと言うものの、どこからもなにもアクションがない。
 ただ、彼らの部屋にあったようにそれぞれの部屋が見られるモニターと、電話の子機が置かれているのみ。

 この身を案じて110番ではなく、念の為天気予報電話にかけてみたけれど、お繋ぎできません、と言われた。
 犯人はずいぶんと用意周到みたい)
紗枝子
「………………」
(全ての部屋を監視するためにカメラが取り付けられているようだ。
 16人の元クラスメイトたちが寝静まっている様子が見える。
 ついさっきまで乃木坂が起きていたけれど、その彼ももう眠ったみたいだ)
紗枝子
「…………わたしは、どうしたらいいのかしらね」
(そう、ひとり呟いたときだった。

 今まで音沙汰のなかった子機が、鳴った)
紗枝子
「………………!」
紗枝子
「…………もしもし。
 ……あなたね、どこの誰だか知らないけれど、いったい…………、
 …………え? 特別、ですって?

 ……………………。

 へえ? それで、わたしになんのメリットがあると言うの?
 ふざけるのもいい加減にしてちょうだい。

 …………報酬?
 ふうん? 元クラスメイトたちはあんなに大変そうな思いをしているのに、わたしにはずいぶんと甘いじゃない。
 なんのつもり?

 ……………………。

 え? なに?
 待ってちょうだい。今書き留めるから。

 ………………、…………………………。

 …………ずいぶんじゃない。
 目的はそれだと言うの? …………狂ってるわね。
 まあ、いいわ。わかった。どうせ拒否はできないのでしょう?
 でも…………、返事はまだ待って下さる?
 どうせ出られないのだから、構わないでしょう?
 ええ、…………ええ、……そうね。考えるわ。
 ええ…………ええ、では…………」

(なんと言うことだろう。
 これが…………これも、ゲームですって?

 あそこに写っている16人は知らない。
 わたしたちも、別の形でゲームに参加していることに。
 そして、それぞれに勝利条件が課されていることに。

 わたしの勝利条件…………。
 それは………………。
 ………………それは……)
紗枝子
「………………」
(…………なんと言うことだろう。
 ………………ヨダレが出てしまいそうだわ)





――――1日目、終了



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