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「#エロ」のBL小説を読む
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Journal

ピックヨウル


crik / エイト
執筆中の短篇の一節


 バンカラ地方行きの鈍行、各駅停車。途中の山間地で、電車はアナウンスもなくしょっちゅう止まる。はじめは止まるたびに、乗客はみな窓の外を眺めていた。しかし眺めても何もわからないことが判ると、次第に誰も窓の外を見なくなった。
 不思議な状態に、ヒトって慣れちゃうんだよね。いつだったか、___が言っていたっけ。不思議、じゃなくて、奇妙、だったかも。まあ、そんなことは重要ではない。自分はまた、彼女のことを思い出してしまった。今日はもう何回目だろう。昨日は結局、何回まで数を重ねたのだっけ。無理に頭から追い出そうとしても余計居座るから、彼女はたいてい長居をする。だから、数はそんなに多くないはずだけど。
 最後に会ったのが、三日前。図書室で本を借りて、図書カードに貸出サインを書いてもらった時。そして休暇は、今日から二週間弱。あと十日以上も会えない。
 エイトは座席に沈み込むようにして、背もたれに体重をかけた。読みかけの本の活字を追う目が滑る。ぼうっと本の余白を見つめているうちに、電車はまた動き出した。 Read more
2024/01/22
創作メモ

祝福


 はずむ足音とともに、ハウはちいさく走ってやってきた。二人分のニューイヤードリンクを大事そうに持ちながら、こぼれないように注意して足を運んでいるみたいだった。建物の明かりを背にしているはずなのに、その表情はとても輝いて見えた。
「よかった!」
 わたしはハウに駆け寄って、差し出されたドリンクを受け取った。17! 16! 15! 「ねえ、来年はいい年になりそうだよ!」ハウは大きな声で言った。
「どうして?」
「それはね……」ハウはわたしから目をそらして、建物側へ目を向けた。燦々とした光が、彼の瞳に無数に映る。「年が明けたら言うねー!」

ポケットモンスター サン・ムーン / ハウ
短篇 祝福

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2024/01/06
創作メモ

ふたりでひとつ

crik / シェーディ (エイト)
執筆中の短篇の一節


 準備が整いバトルが開始した。
 ___はそのまま右に寄り、道を作りながら突き進んでいった。他の三人は中央から降り、シェーディは自陣を半チャージで素早く塗っていく。それを見たミツアミは高台付近を曲射で狙う。エイトは、必然的に左側に寄った。本来であれば……色んな意味で、右側に行きたかった。___がいるのもあるし、そうでなくてもエイトの海女美初動は大抵右だ。左は自分のブキと思考ではどうも攻めにくい……しかしまあ、仕方がない。スプリンクラーを足下に配置しながら、耐久してチャンスを狙っていくことにした。
 しばらくは塗り合いが続き、四対四の拮抗が続く。相手のボールドの勢いに押されて、エイトは少し前線を下げた。すると、背中スレスレに何か複雑な形状のものが当たる。振り向くと、そこには発動したばかりのホップソナーがあり、自陣の物陰からちらりとスコープが見えた。エイトは、この代物が自分に投げつけられたとしか思えなかった。
 わざと? エイトは、口の動きだけでシェーディに文句を言う。
 スコープではっきりと読み取ったであろうシェーディは、ただ口角を上げ、すばしっこいボールドを撃ち抜いた。
 四対三、人数有利になる。シェーディにとって、オレは囮ってワケだね。エイトはシェーディを振り切り、中央高台に登ることにした。するとミツアミが一足先に登っていることに気づいて、すぐ足を止めた。中衛はポジションが被りがちだ。
 ミツアミが広範囲を塗り、エリアが確保される。じゃあ、オレは右に行くか? 潜伏しながら戦況を見ていると、後ろからとんとんと背中を叩かれる。
 ___だ。
 思わず潜伏を解いた。___も人型に戻り、左側のスロープ前にインクを飛ばす。「エイトさん、よかったらついてきて」そう強気に笑う___のゲソは、キャップの下でゆらゆらと光り輝いていた。そして___は再び潜伏すると、スロープ前でイカロールを決め素早く登っていく。
 わかばのスペシャルは。エイトが記憶の断片を引っ張り出すのと同時に、___はグレートバリアを発動した。 Read more
2023/12/23
創作メモ

閃く

exe / 炎山
炎山くんから任務関連で何かと話しかけられる小噺


 炎山くんは、画面をじっと見つめて静かに考え事をしている。落ち合う直前に購入していた紙カップのコーヒーは、席につくまえに一口飲まれただけで机の上に放置されていた。さっきまでは湯気がたっていたが、もう冷めてきたのか蒸気は見えなくなった。わたしはこの沈黙が少し気まずくて、炎山くんとコーヒーを交互に見てやり過ごしていた。炎山くんは気にしてないのか敢えて無視しているのか、尚も考え事を続けている。 Read more
2023/11/19
創作メモ

Education ep7後半

exe / 炎山
執筆中の長篇の一節


 ふわ、と___の表情が綻んだ。嬉しそうな、恥ずかしそうな、そんな表情である。
「あと三十分も一緒にいられて、そのあと帰り道も一緒なんだね。今日は会えないと思ってたのに……こんなにたくさん居られるなんて」
 炎山は、顔に熱が集まるのを感じた。まるで沸騰して、湯気でも出ているみたいだ。___は、どうしてこんなにも素直なんだ? そしてどうしてこんなにも落ち着いた様子で素直な気持ちを話せるんだ? 逸る気持ちを抑えるのはかなり困難だった。
 ___は、あ、また炎山くんが照れてる、と気づいた。しかし、あの日図書館の前で見たのとは比にならないくらい、今の炎山は自然でやわらかい表情をしていた。
2023/08/06
創作メモ

ふたりでひとつ

crik / シェーディ
執筆中の短篇の一節


 胸がどきどきする。バトル終わりに立ち寄ったカフェでアイスコーヒーを飲みながら、エイトは気持ちを落ち着かせようとした。しかしどうしてもそわそわが止まらなかった。___のことが、気になって仕方ない。
 彼女が立ち去ってから、エイトはほとんど正気を失っていた。その状態でブキのメンテがうまくいくわけもなく、その後のバトルでは最中にネジが一本弾け飛んでしまった。インクは漏れるわ、ただでさえブレやすい.96ガロンの弾が更にブレるわ、大惨事だった。フェス前だからレートを上げておきたいのに……下がってしまった成績を見ながらエイトは焦りを覚えるが、その焦りは___への想いに勝ることはなかった。
 ペールブルーのインクカラーだった。キャップから僅かに覗くゲソの色をエイトは思い出す。ああいう色が好きなのかな……。
 空想に耽けるエイトに、携帯電話が新着メールの通知を報せる。エイトは画面を見た。シェーディからの返事だ。
「三日後の正午にロビーで」
 相変わらず簡素なメールだった。遅くなってごめんとか当日はよろしくとかもないなんて、とエイトは思ったが、不思議と苛立ちは湧いてこなかった。シェーディの向う側には___がいる。エイトにとってシェーディは、今やちょうどよい対抗戦相手というだけでなく、___との希少なハブなのだ。まるで___から連絡がきたみたいに、エイトの気持ちは浮き足立っていた。
 にしても、妹にも同じ格好させてるなんて、シェーディにも変な趣味があったものだね。
 からからと氷の音を立て、エイトはコーヒーを飲み干した。あらぬ勘違いを、本当のことと信じきって。 Read more
2023/07/19
創作メモ

EVERGREEN

EVER,FOREVER,EVERGREEN

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2023/07/19
創作メモ

Euphuism - ep10


「あそこにある時計台が見える?」
 シャーロックは向こうを向いたままそう言った。わたしは姿勢を変えて窓の外を見ようとした。窓の端っこに、確かに時計台が見える。ここらでは一番背の高い塔かと思われる。
「僕はそこから飛んでみたい」
 シャーロックが抑揚のない声で言う。わたしは耳を疑った。「……と、思ったことがある」

大逆転裁判 / シャーロック・ホームズ
長篇 Euphuism - ep10

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2023/07/09
創作メモ

MYSTIC VISION


pkmnRS / ダイゴ
SS寄り短編


translucent you(きみを透明にする魔法)
 ダイゴさんはいつも服を駄目にして帰ってくる。品よく仕立てられた上級な生地のスーツも、皺の入りにくいやっぱり高級なシャツも、ダイゴさんにかかればびりびりのぼろぼろになってしまう。なぜって、何も顧みずに草むらやら森やら洞窟やらに入っていってしまうからである。
「このあいだ、綺麗な鍾乳洞に迷い込んでね」
 磨いていた石を化粧箱にそっと仕舞うと、ダイゴさんは瞳を輝かせながら話し始めた。明るいオークルで、___の肌の色みたいだった。そう言うと今度は、自身の指に嵌っていた指輪を外して、丁寧に磨き始めた。
 わたしは太陽光が入る窓辺で体育座りをしながら、例によって引きちぎれたボタンを縫い付けていた。見たことの無い、とても綺麗なボタン。それはプラスチックでできているけれど、さながら宝石のようで、太陽の光を吸って美しい色を吐き出していた。わたしは眩く思いながら、スーツと同色の深いグレーの刺繍糸で、それを元の位置に戻そうとしていた。手触りのいい生地の、ほんの少し綻んでいるところをもう一度針で拾って。ダイゴさんの持っているスーツは、似たような色でも少しずつニュアンスがちがう。だからダイゴさんがボタンを取ってしまう度に、わたしの裁縫箱には新しい刺繍糸が加わった。べつに糸なんかなんでもいいよって言われても、大事な商談などにも着ていく服らしいから、そういうわけにはいかないと思った。
「終わりました」
 ボタンのきらきらに完全に参ってしまう前に、わたしはボタンをつけ終えた。ダイゴさんは「早いね。いつもありがとう」と言って、磨いていた指輪を指に戻す。そして、出来上がったボタンに軽く触れる。
 ちょっとやそっとじゃ取れないように頑丈につけてみたけれど、ちょっとやそっとで外してくるのがダイゴさんである。ダイゴさんが触れて角度を変える度にあちこちに眩さを振りまくボタンは、とうとうわたしを駄目にした。いっそう白い光が目を掠めたときに、ダイゴさんはわたしの唇に口付けを落としていた。 Read more
2023/07/05
創作メモ

祝福

pkmnSM / グラジオ
短篇になる予定だった話


 十二月といえば、多くの人は真っ白な雪や曇った空、または雲ひとつない抜けるように青い空に身が削がれるような冷えた空気、などを思い出すのではないだろうか。わたしには、どれも心当たりのないイメージだった。アローラで生まれて育ち、一度も外の世界に出たことがなかったからだった。ここアローラは、常夏の地方だ。だから何月だったとしても、アローラの人びとは避暑のことばかり考えている。
 多くの大陸では寒いらしい十二月がやってきた。生温い風と共に船着き場にやってきた大きな船からは、常夏の世界を楽しみたいと目を輝かせた人びとが毎日たくさん降りてくる。なんだって寒いところから来る人は、黒やネイビーの服を着がちなのだろう。太陽の熱をたっぷり吸収するというのに。避暑で頭がいっぱいの現地人には、理解ができないことだった。ぞろぞろと列をなしてアローラの地に足を踏み入れる十二月の人びとは、遠くから見ると蟻の大軍のようだった。しかしそれが段々近づいてくると、ひとりひとりが暗い服を着、表情はすっかり南国の顔をしているのである。わたしは、そんな顔と服装が一致していない来客に「アローラ」と微笑みかけ、レイを首に掛けてやる。観光客たちは、南国に迎え入れられたことを喜び、嬉しさを顔いっぱいに広げる。
 わたしはこれを一日、最低でも三百人に行う。そのほとんどが、一生のうちにこの瞬間しか出会わない人たちである。しかしひとりだけ、何度も再会をする知り合いがいた。列の中にプラチナブロンドの髪を見つけると、わたしは「あ」と思う。ああいう髪色の人は大勢居るというのに、「あ」と思うのはたったひとり、グラジオだけだった。順番が近づいてきて、そしてやっと彼の番になると、彼は決まってこう言うのだ。「観光じゃないから、それはいい」それとは、わたしが手にぶら下げているレイのこと。「夜、また電話する」 Read more
2023/07/05
創作メモ

心臓、一つ - 食

NARUTO / サソリ
中編くらいで書こうとしていたもの 未完


 新しい住処は、シジュウカラがよく鳴く森の傍の小さな空き家だった。五分ゆけば川があり、一時間ほどゆけば小さな町があったが、家のすぐ周りには草木以外何も無かった。嘗ては狩人の住処だったらしいことを、___はサソリから聞かされる。それがいつ頃までの話だったのか、またどういう経緯でサソリがこの空き家を借りるに至ったのか、___は知りたがって矢継ぎ早に訊ねるが、餓鬼はおとなしくしていろと軽くあしらわれ煙に巻かれた。
 到着して暫く、部屋割を簡単に決めて荷解きをした。ふたりで住まうには充分な部屋の数だった。何せ前の住処は部屋が足らず、どうにも手狭だった。それで仕方なく他へ移ることになったのである。
 ___は薬研や調合器具を棚に並べ、丸めて背負っていた布団をベッドに敷いた。取り敢えず置いたはいいものの、部屋じゅうが埃っぽくて敵わない。掃除用具を調達したら、すぐにでもあちこち綺麗にして回りたいくらいだった。
「サソリさん」
 自分の荷解きが終わったため、サソリの部屋の前まで行き声を掛けた。開けていい、と言われたので、___は静かに扉を開けた。扉からは、ギイ、と経年による嗄れた音がして、部屋の中からはやはり埃の匂いがした。
「ねえ、埃っぽいよ。窓くらい、開けたらいいのに」
 ___が顔を顰めて言ったとき、サソリは初めて彼女に一瞥をくれた。堀りのある造型に落窪んだ茶色の両の眼が、暗い屋内でより一層深く見えた。サソリは___から目を逸らすと、鞄から出し手に持っていた巻物を几帳面に棚に納める。そして、これか、と言わんばかりに、その棚に乗っていた埃を指で拭い、指を擦り合わせて観察したあと、ふっと息で払った。
「こういう身体になると、鈍くなるもんだな」
 サソリは血の通っていない指先を器用に動かして、その様子を暫く眺めた。
「窓、開けておくね。落ち着いたら、一緒に里に掃除用具を買いに行ってくれる? 食糧も調達したいし」
「ったく……お前がいると、無駄が増える」
 いつも通り、面倒臭そうに言われてしまう。じゃあ連れてこなきゃよかったでしょ、と___も負けずと減らず口を叩いて、それから部屋を出た。サソリは、正午だ、と今や姿の見えない___に告げた。確実に伝わるように、少し声を張り上げて。___は、ふん、とだけ返事をして、家じゅうの窓を開けて回った。木と土の瑞々しい外気が屋内に入り込むと、___の呼吸は幾らか楽になった。 Read more
2023/07/05
創作メモ

キスカム

crik / ヴィンテージ
SS


「……あ」
 試合と試合のあいだ。ちょっとした休憩時間。キスカムの画面に、携帯を眺める彼氏の姿が映った。その隣には、目を見開いて狼狽するわたしが居る。囃し立てるのが大好きな周りのイカたちがワアワア騒ぎ出した。気づいていないのは、もはや彼氏であるヴィンテージだけだった。
「さっきのホコの運び、意外にも進んだが、アシスト受ける側はどう思う?」携帯の画面から目を離さずに、ヴィンテージが真面目に問う。「オレはホコ持たないし」
 ついさっきの試合の動画を熱心に見返す彼には、本当に感心しきりである。でも、今はそんなこと心の底からどうでもよかった。お願いだから、今の状況を早く察してほしい。
「後ろにいるより、前に出たほうが助かるよな」
「う、うん……」
「ああでも、ステ的に裏から来られるから……やっぱり後ろを守った方が……」
 早くわたしたちのキスを見たい観客のざわめきが、より一層勢いを増す。「騒がしいな……」ムッとした様子でヴィンテージは周りを見回し、そこでようやく、ハートマークの飾り付けがしてある大きな画面にわたしたちが映っていることに気づいた。
 そもそも、だ。ヴィンテージは、キスカムのことを存じているのだろうか。少なくともわたしたちのあいだで話題になったことは一度もない。キスカムがある会場だから行くのやめよう、みたいな話も全くしたことがない。観客席にいる限り、その白羽の矢がたつ可能性はゼロではないのに。
「そういうことか」
 ヴィンテージは、携帯電話をポケットに仕舞う。そして、わたしが被っていたバケットハットを取り上げた。
「早く終わらせよう」
 帽子で顔を隠し、ヴィンテージはわたしにキスをした。何やら事には及んでいそうだが帽子のせいで詳細な様子が伺えないことに観客たちは落胆をする。しかし期待には応えたわけで、ブーイングする者はひとりも居なかった。
 カメラは別のカップルを探すために、一旦スクリーンセーバーへと切り替わる。わたしはそれを帽子の端から盗み見て確認し、顔を離そうとする、けれど、ヴィンテージがそれを許さなかった。肩をぐいと掴まれ、二度目のキスをされる。
 早く終わらせようって言ったの、だれ……?
 結局、周囲のイカたちが気まずくなるくらい、わたしたちは長いこと帽子の影に隠れていた。
2023/07/04
創作メモ

ふたりでひとつ

crik / シェーディ
執筆中の短篇の一節


 似ているふたりの戦術は真逆である。
 わかばシューターを持つ___は、前線荒らしだ。自陣付近はとにかく足場を塗り、死んでも塗りが残るようにする。相手陣営へ抜けた後は、グレートバリアを張って前線を押し上げる。とにかくちょこまかと動き回るのが好きで、それは単に目が悪いから、身体ごと動かなければならないことにも起因している。
 シェーディは、百発百中のリッターだった。___が炙り出した相手をとにかく射抜く。「塗らせない」ことで、塗りの弱さをカバーしている。塗りは___が綺麗にやってのけるし、必要なキルは全て請け負っている。
 そういうわけで、真逆なふたりは相性がよかった。ふたりが一緒に組んだときは、とかく負け知らずだった。しかし現実とは無情なもので、実力を測るソロマッチとなると話が変わってくる。シェーディはどんどん位を上げていくのに対し、___は「一般層より上手」程度の計測値しか取れなかった。だから___は、「シェーディがいつもキャリーしてくれているんだ」と思い込んでいる。
 違うのに。シェーディは心からそう思っている。
2023/07/04
創作メモ
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