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ピックヨウル


crik / エイト
執筆中の短篇の一節


 バンカラ地方行きの鈍行、各駅停車。途中の山間地で、電車はアナウンスもなくしょっちゅう止まる。はじめは止まるたびに、乗客はみな窓の外を眺めていた。しかし眺めても何もわからないことが判ると、次第に誰も窓の外を見なくなった。
 不思議な状態に、ヒトって慣れちゃうんだよね。いつだったか、___が言っていたっけ。不思議、じゃなくて、奇妙、だったかも。まあ、そんなことは重要ではない。自分はまた、彼女のことを思い出してしまった。今日はもう何回目だろう。昨日は結局、何回まで数を重ねたのだっけ。無理に頭から追い出そうとしても余計居座るから、彼女はたいてい長居をする。だから、数はそんなに多くないはずだけど。
 最後に会ったのが、三日前。図書室で本を借りて、図書カードに貸出サインを書いてもらった時。そして休暇は、今日から二週間弱。あと十日以上も会えない。
 エイトは座席に沈み込むようにして、背もたれに体重をかけた。読みかけの本の活字を追う目が滑る。ぼうっと本の余白を見つめているうちに、電車はまた動き出した。
ピックヨウル(Pikkujoulu)は、フィンランド語でクリスマスの意。Frosty Festのロビーで流れていたYule tideに惚れて、ずっとずっと頭の中でリピートしているのですが、Yuleも昔の言葉(これは英語……?)で、クリスマスなのだとか。語感がピックヨウルに似てるなあと思って、とりあえず短編名にしました。変えるかもしれないけど。活動、なかなか長続きしないで細切れですが、文章を書くのはやっぱり好きで、一回書き出すとえいえんにおしゃべりが止まらないんです。完成するのかはわからないけれど、いつか本編を載せる日がきますように。

2024/01/22
創作メモ