ドアストッパーみたいなくさび型に大小二穴を開けた古風な真鍮製鉛筆削り。発売年不詳、ドイツ製。
メビウス&ルパート(略称M+R)は
丸型真鍮製鉛筆削りNr.0602を造っている会社。今回は刃にも刻印がありました。
替刃が輸入されていませんが、大小ともDUX 12N替刃で代用できます。
- φ8.25mm
- 切削角度約22°〜23°、とんがり係数0.86〜0.88、削りくず厚0.2mm〜0.25mm
ふつうの鉛筆削り23°〜24°よりちょっと鋭い。
ダーウェント スケッチングφ8.0mmを削れます。カランダッシュ グラフウッド775約φ8.3mmもなんとか削れますが、個体差かもしれません。コンテ ア パリ約φ8.5mmは削れません。 - φ11.4mm
- 切削角度31°〜32°、とんがり係数0.6、削りくず厚0.2mm〜0.25mm
Koh-I-Noorジャンボグラファイト1820やリラ グルーヴ太軸、カラージャイアント約φ10.8を削れます。Koh-I-Noorトリオグラフ1830は削れなかった。
鉛筆を削るには、鉛筆削り挿入孔と鉛筆の中心線を合わせて削ると良いのですが、このくさび型は挿入孔が横に並んでいるため、中心線も横に二本並んでおり、それに合わせて鉛筆削りの持ち方を調整しなければなりません。
丸型602がこれを解消、大小ともに持ち方が変わらないよう設計されている、のですが、くさび型のほうが鉛筆を削る際にも持ちやすく鉛筆を回しやすく感じました。
これもやはり
DUX4112等と同じく、鉛筆を削る際に@方向へ傾けて(刃に沿わせて)削るか、A方向へ傾けて(刃と交差するように)削るかで、切削角度や芯先の仕上がりが変わります。
太軸用はそうでもないんですけど、細軸用は削りくずが薄いわりに削れ味が雑。丸型602より雑。
刃に問題があるんじゃないかと思って刃を外してみたら、真鍮製台座の仕上げが粗い。丸型602より粗い。
挿入孔内の仕上げは美しいのに、刃を据える凹み(リセス)にバリがあり挿入孔内にはみ出てる。金属削り出しだから品質がばらつくこともあるでしょうが、もうちょっとうまく仕上げてほしいところ。
それで、本品の刃を同社丸型602や
ステッドラー 510 25BK-Cの刃と交換して削ってみました。
刃を換えても本品の雑な削れ味は変わりません。
刃を外した台座に鉛筆を挿入して回すと引っかかることから、やはり台座に問題があります。
削れ味は刃の切れ味だけではなく、刃を据える台座も関係していることがわかります。精密やすりでバリ取りしたらよくなりそう。
刃を元に戻して削りました。切れ味そのものは悪くないので、芯先を尖らせて円錐頂点を削り出すことができます。
ト)
ステッドラー トラディション110/HB、軸径φ7.4mm、∠20°23′
ユ)
三菱ユニ/HB、φ7.8mm、∠21°43′
グ)カランダッシュ グラフウッド775/2B、φ8.3mm、∠23°21′
鉛筆挿入口ギリギリのグラフウッドを23°で削れたから、その角度で削れるように設計されたと考えられるんですが、だいたい22°、細い舶来鉛筆なら20°で削れたりします。
バーコードラベルを剥がした跡はアルコール等で拭き取れます。プラスティックだとこうはいかない。
なんというか、こんな重くて鈍い金色の真鍮製鉛筆削りなんて、いまや成人向けになってしまって、その削り方もちょっと慣れがいるから、
ラチェッタワン等プラスティック製鉛筆削りのほうが簡便なんですけど、本来はもちろん年齢制限なく、刃を交換して使い続けられ、世代間継承すらできるでしょう。
丸型0602は丸いがゆえに刃の端が少しはみ出る製品でしたが、直線で構成される本品では刃先がはみ出ません。
上から、丸型真鍮製0602、本品0603、くさび型マグネシウム合金製0203。
M+R製二穴式鉛筆削り三種で削った
北星9500とKoh-I-Noor1820の芯先。
細軸(ふつうの軸径)用は三種ともだいたい約22°。
太軸用は丸型602、本品603、マグネシウム合金製203の順で鋭くなります。