群衆心理(講談社学術文庫)

1895年に発表された社会心理学の古典。

　身分の貴賤、知恵の多寡に関わらず、ヒトは集団化すると各々の個性が沈潜して群衆心理が現れ、品性も知能も低下すると群衆を論難した。
論難だけに終わらず、群衆こそが社会を揺るがす力を持っているとも評価、だからこそ適切に指導されねばならない、とカリスマ指導者の必要性を主張する。
しかしその指導者が暴君へ変わる危険性を予見してか、終盤では議会制民主主義がマシとも述べる。
　また群衆心理に匹敵する無意識下の習性として種族性(民族性)を挙げ、これの影響力が失われると、社会が不安定になって群衆が発生しやすくなり変革期を迎えると分析した。

　本書第二篇第三章第三節「威厳」では古典芸術に対し前回のベンヤミンと似た意見が見られ、「複製技術時代における芸術作品」と比べて読めます。
著者ル・ボンは、群衆が牽引する世論は衰頽を招くと批判したのに対し、ベンヤミンは大衆の自律性に期待したのです。

　著者はフランス人で、しばしば人種差別的な表現をしていますが、それは母国フランスへ向けられており、民族主義を逆用して仏人をたしなめています。
フランス革命の挫折、パリコミューンの失敗、普仏戦争の敗戦に起因すると思われ、ちょうど戦後日本で、日本人はだからダメという言説が流行ったことと符合して馴染みやすいですね。

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　シルバーシリーズ(925 25シリーズ)の発売20周年を記念して2010年、色違いの925 35が復活しました。0.3mmから2.0mmまでの五芯径。日本製。
今回はそのうちの2mmをレヴュー。
　925 25シリーズは、芯硬度表示と4mmスリーブという製図用シャーペンの基本スペックを具え、円筒軸に押しやすいノックボタンを配し、前軸には効果的なローレット(滑り止め)を施した定番品。
　芯径はノックボタンと品名に表示されるだけで、二種の芯径を使い分ける際に見分けづらいのが難点でしたが、青軸35Nの登場により軸色で見分けやすくなりました。

　925 35の軸色が黒であったのに対し、復刻は同社コーポレートカラーである青へ変わりました。
"ナイトブルー"と命名されたつや消しの青はブルーブラックインクのような軸色です。銀色部分はギラギラのクロームめっき。
ステッドラー日本は鉛筆ホルダ900 35Nも発売すればいいと思います。

ノック式、簡易芯研器なし。
芯硬度表示4H - 4B (3H, F, 3B除く)。付属芯HB。2mmの場合3BやFを加えてもよいのではないでしょうか。

　本品の大きな欠点はステッドラー502バケツ型芯研器で芯を削れないこと。
適合芯研器はDUX3250や卵型芯研器等になり、この点ロットリング800/2mmに劣ります。
ロットリングR505 250Nの黄色差込口ならなんとかなりますが、あまりすすめられたものではありません。本品の口金と回転式芯研器の部品形状そのものが合わないのです。
ただ本品を携帯用と考えれば、(携帯に適さない)バケツ型は不要。

　また、前軸と後軸のねじが緩むことがあり、芯硬度表示がズレる難点があります。銀色の925 25-20は緩まないからハズレかな。
ねじの緩みは自転車タイヤパンク修理用ゴム糊を微量付けると抑えられます。

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　2mm芯はスケッチのほか、マークシート用(大学受験以外)としての需要が見込まれているのですが、2mm芯用というと旧態依然としたスプリングクラッチ式芯ホルダが主流なのに対し、本品はシャーペンに馴れた人々にも受け容れられやすい製品です。
バケツ型芯研器に合わない欠点も、写生やマークシート用ならあまり問題にはならないでしょう。
　とは言っても2mmはやはりマイナーな芯径ですね。私は数奇者なのでこれを選びましたが、一般には他の芯径をおすすめします。
　次回は、バケツ型に合わない本品のために同時注文したDUX3250芯研器です。

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