Tin ice in the sun

あの人たちが本を焼いた日

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ポストコロニアリズムとフェミニズムの観点からよく論じられている作家だなーと思います、ジーン・リース。 最近思うのは、こういう文脈で語られるフェミニズムってある種の知識層による「それもまた女性の解放! フェミニズム!」と断じられているような感じもあります。 わたしはその「勝手に宣言される感じ」がすごい最近嫌いで映画の『哀れなるものたち』をフェミニズム映画として消費された時にちょっと嫌悪感があったのですが。 そんなおり、こちらの書評を読んでみたら自己責任論の視点が出てました。 https://koiw.info/?p=589 あー、これかぁ! と納得したんですけども。「フェミニズム」としてのお話が、社会的に悪い方向に向かった人間が人として何とかしようとしていると読んでいるわたしと、女性という性別の方でみている視点があるんだなと納得しました。 こんな仕事ついてる人達がここまで考えてるなんて! みたいな謎の感動により「フェミニズム」と言われてるのアホらしいなと思ってるから最近人の感想読めない。 余談おわり……!! この作品での主人公は大体社会的な弱者たち。そして不幸をかぶせてもいい相手だと思われている。 その不幸も難しいのだが、大体「自分がもっと楽できるならいいか」という安易さから主人公たちのスペースやプライベートが脅かされているのだが周りはそれを悪意なく行ってくる。 この原著が刊行されたのはもっと前のはずなのだが、今でも変わらない話に辟易する。 短編集なのでいつも通りハマらない作品もあったのだが、「あいつらにはジャズって呼ばせておけ」がいちばん面白かった。このタイトルに惹かれたというのもあって買ったのだが、自分を信じてよかった。 タイトルの意味を知る時のあの嫌な感じもいい。自分に残っているのはあの刑務所から聞こえてきた歌しかなかったのに。 まったく好転しない世界がつまっているのもいい。救われない、報われないフィクションのあり方だなと思う。


  • 22nd.Apr
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