Tin ice in the sun

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

これから映画を観る人への注意書き ・犬が可哀想 ・下ネタはだいぶ入る (スイスアーミーマンと同じ監督なのでお察し) ・光の点滅かなり強め。怖い人は注意した方がいい。 ・クィアの家族へ精神的ダメージを負わせる演技がある ・キー・ホイ・クァンのことを大好きになりすぎてしまう。ほんとに とにかく楽しそうな映画だった。キャストの演技力もしかり、脚本のうまさと「それで戦うの!?」みたいなアクションの数々、突然にぶちこまれる下ネタ、奇抜だがとても可愛いファッションの数々。 娘がレズビアンであることに関してもうまく組み込んでいたと思う。 個人的にこのエンディングは最近なかなか見かけないのでよく描いたなーと思った。ここら辺はネタバレありなので追記にまとめる。 ジョジョの奇妙な冒険が好きなのでわりと何にも拘らずに素直に受け入れることができた気がする。 スタンド能力のようなもの、と思えばすべて受け入れられる。 キー・ホイ・クァンのことをより好きになる映画だった。彼のオタクの理想郷……? 感がある。ウォン・カーウァイをもう一度見たくなる。 マルチバースという、ともすれば「意味不明すぎて制作陣のひどいオナニーを見せられている」になりかねない作品でここまでエンタメに特化したおもしろい作品が作れるのは本当にすごい。 テーマが「家族」という一本にまとまっていることもある。描かている多様性もすべて収束していくのがとてもよかった。 特に、このお話はアジアの移民が主人公なので、その苦しさとかを描くかと思ったけど案外そういうのは「バックグラウンド」になっていて些細な仕草やフラッシュバックにより察せられるようになっていた。移民というカルチャー(という言葉をあえて使う。日本ではあまり馴染みがないな……。)のハイコンテクストな文脈がすごい。 Not for meな人も多いだろうが、ボロボロに泣いたので中の人と同じ感性してるわ〜〜な方はぜひハンカチを。 追記はネタバレです。


キー・ホイ・クァンが妻によわい情けない男も、昔好きな女に出会っても好きだからこそセックスしないことを選ぶ男も、アクションがんぎまりしている男も、クリームチーズに喜ぶ男も演じてくれる映画。それがエブエブ。 オタクの理想郷すぎる。誰か彼のガチ勢がいる。 ウォン・カーウァイパロディ時空の彼、雨に打たれてタバコ吸ってネオンに照らされてるの見て「え、絵画……?」と思いました。鵞鳥湖の夜もそうなんですけど、中国映画のネオンのあの効果的な使い方ってなんですかね。天才なんだよな……。 娘役の彼女、どこかで聞いたことある声だなーと思ったらスポンジボブミュージカルのカレンでした。彼女のファッションが本当に最高だったし、ペニスを模したディルド? ペニスそのものか? それでぶん殴って人を倒すのげらげら笑いました。 ミシェル・ヨーはやっぱりアクションがうまい……と思いながら見てたんですが、別にアジア系移民じゃなくても成り立つであろう物語で彼女が主役でふつうのおばさんの格好をして戦うというところがカッコイイんだよなと思います。 正義の味方はマントと仮面をつけてなくてもいいし、映画のヒロインは若い人じゃなくてもいいしアジア系移民がなってもいいってこと!! ミシェル・ヨーがいつも通り最高なのはそうなんですが、ジェイミー・リー・カーティスがほんとにおばさんのまま出てきて良かったです。 インタビューで「若返ったようにみせる特殊効果は使わないでほしい。ありのままの自分でやってほしい」とお願いしたのを聞いてまた彼女のことが好きになりました。 ていうか、RRRに続きまた最高の肩車映画がうまれましたね。どちらも見せてくれてよかった。 で、エンディング。 家族エンディングに「いやだ」と思う人もいるとは思います。ただ、ただね、これって感想の中に何度も書いてきた「移民」のお話なんですよね。 日本では馴染みがないんですけど、やっぱり自分の故郷というルーツをなくした世界ってちょっと違いますよね。わたしは少なくとも外国に行くたびにそういうことを思います。自分はお客さんというか、ここの人間じゃないんだな、と。 そんな中で、クィア(レズビアン)の娘のことを心配しすぎて過干渉する母親はアジア文学だとわりと見る。 移民じゃなくともわりと見る。 なので言わば、アジア人のステレオタイプと言えなくもないんですよね嫌だね。(アジア文学の話……) でもまあ、クィアがchoosen家族しかないのかと言われたらそんなことはない。自分の家族と折り合いをつけて一緒に過ごすこともありなんですよね。 だからあのエンディングにはわたしは泣きました。彼らの結末はあれなので。めちゃくちゃなままでも手を取り合うことを選んだので。確定申告うまくいくといいね……。 ということで、めちゃくちゃ面白かったよ、エブエブ。

  • 6th.Mar
  • Movie