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 あきひか

やっぱりいいなーーアキヒカ!!

ヒカ碁はDVD持ってるんで久しぶりに見てるんですけど
アキヒカの運命感好きやわ〜〜〜(^o^)


2014/06/01 11:28



 ひみつのせいかつ13

3話の続き




眼光の鋭い瞳を向けながら、アキラはヒカルをにらみつけるようにそう言った。
言われたヒカルは、思わず自分が責められているように感じてしまったが、それはないと思い返して恥ずかしそうに返した。

「へ、変なやつ………バッカじゃねーのっ」
いざ口を開くと、いよいよアキラの言葉の恥ずかしさを再認識してヒカルは軽口を叩いた。目を逸らし、アキラを見ようとしない。
その様子に、アキラは唐突に胸の中に温かいものが広がったように感じた。恥ずかしそうに目を逸らすヒカルが、可愛くて仕方がなく思えてきたのだ。

アキラは鋭い眼光を和らげて、はにかむように笑った。

「馬鹿なんかじゃないよ。だって、君が好きだから」


2013/09/24 23:43



 ひみつのせいかつ12

3話の続き




結局、芦原に相談するという手段は、ほとんど役に立たなかった。

とはいっても、アキラにこのような話題を容易に持ち出せる友人など、他にはいなかった。友人でなければいないこともないのだが、それにはリスクが高すぎる。きっと、からかわれるに違いない。昔からあの人はそうやって自分とヒカルの関係を面白がり、お互いが意識を向けまいとしているのにそれに発破をかけようとしていたものだった。
アキラは緒方のことをちらりとそんな風に評価し、夜風を身に沁みこませながら、帰路についた。

マンションを見上げると、部屋に明かりはついていた。
ヒカルが家にいる、とアキラは認識させられ、それと同時に昨日のヒカルの下着姿まで鮮明に思い出してしまい、やや顔を赤らめながら、想像を振り払うように軽く首を振った。
もう一度謝ろう、そう決意したのにヒカルを目の前にすれば昨日の姿を想像してしまいそうな自分を戒めつつ、アキラはエントランスホールを抜けてエレベーターのボタンを押した。
ウィン、とドアが閉まり、1と表示されていた電子モニターがどんどん数を上げて、たいして階数もない一般的マンションの5階へと着いた。

不安と、すこしの好奇心を胸に、アキラはそっと玄関のドアを見つめる。
手に持った鍵を鍵穴に差し込むのが、こんなにも難しく感じてしまうことはなかなかありえないだろう。

アキラは意を決して、鍵穴に差し込みまわした。
ガチャ、と金属音を立ててドアノブをひねる。
死刑台へとのぼる死刑囚さながらの、恐怖心でアキラが部屋に入ろうと一歩を踏み出すのと同時に、声はかかった。

「……とうや」

その瞬間、びくりとアキラは動きを止めた。
ぱっと弾くように顔を上げると、ヒカルが視線を俯かせて気まずそうに立っていた。

「その、…おかえり……」

ちら、とこちらを見て、すぐに目を背ける。
やや頬を赤く染まっており、やはり昨日のことをヒカルも気にしているのがわかって、冷静になりかけていたアキラも、急に顔を赤く染める。

「……ただいま」

そう言ったきり、二人はお互いに何も言わずに俯いている。
双方いつもなら言いたいことは言うタイプなので、このような煮え切らない状態になっているのはとても珍しかった。
何か言わなきゃ、とアキラが思ってふとヒカルの姿を見る。普段晒さないから、焼けていない真っ白な、ややむっちりとした太腿が目に入った。
ぎょっとしてアキラが凝視していると、その視線に気づいたヒカルが目を泳がせながら口を開いた。

「お、俺だってこんなピラピラしたの、着たいわけじゃないんだぞっ。趣味じゃないからな! こぉんな服ッ」
なぜかヒカルが憤慨した表情で、履いている短い太腿を露わにするスカートの裾を触る。

「でも……奈瀬が、…………言ったから…」
「………………何を?」

アキラはおそるおそる口を開く。
ぎゅっと拳を握って、ヒカルは真っ赤になった頬で顔を上げてアキラを見つめた。
緊張からか潤んだ瞳が、アキラに縋るような視線を向けている。

「塔矢には、これくらいしないと……わかんないって………」

そう言いながらヒカルは、一歩近づいた。
固まったまま動けないアキラに、そのまま歩み寄り、アキラの空いている左腕をつかんだ。
そしてそのまま、左腕を自分の胸元へと導く。
柔らかい感触が、アキラのてのひらを包み込んだ。

「……塔矢…。昨日あんな恰好だったのは偶然だったけど、俺…どうしたらいいかわかんなくて……だって、下着姿見られるなんて、恥ずかしいし…。だから…今だって、こんなにどきどきしてる」

その言葉で、やっとアキラはてのひらから柔らかい感触だけでなく、どくどくと早鐘を打つ心臓の鼓動を感じた。
けれど、今のアキラにとっては心臓の鼓動よりも、てのひらに伝わってくる柔らかな感触のほうがよほど、印象にある。

「塔矢は、俺に幻滅したりした?」
「えっ……」
「だってお前、あんなに怒ってただろ? それに俺の下着姿なんて見たくもないもん見せられて……」

ヒカルがあんまりにも浮かない表情だから、アキラは大きく首を横に振って否定した。

「そんなことない! ただ、びっくりしただけだよ」
「本当か? 気をつかわなくたって……」
すっかり落ち込んでいる様子のヒカルに、アキラは迷わず口走った。

「気なんてつかってない。君の下着姿にだって、幻滅なんてしてない! むしろ興奮したほうだ!」
アキラの怒涛の勢いに、ヒカルは気押されながら問いかけた。

「こ、興奮したの……? 俺に……?」
はっと我に返って、慌ててアキラはどうにかごまかせないかと何か言いかけたが、ここでわざわざごまかせたとしても、また新たに面倒くさいことが生じるに違いない、と思い頷いた。

「するよ。僕だって……おかしいことじゃないだろう」


2013/09/02 21:30



 ひみつのせいかつ11

お話とは全然関係ないことなんですが、パソコンを買い替えまして、
めっちゃキーボードが打ちにくいものですから
ワイヤレスキーボード買いました
USBポートに差し込むのがすげえ緊張だらけでやばい
しかしこの安キーボード…
なかなか優秀でありかなり驚いている


3話:酸素不足の男


棋界の若手棋士かつ将来有望がすぎる男、それが塔矢アキラ六段のことである。
棋力は然ることながら、テレビ受けも良い整った見た目と本人の物腰の柔らかさが世間一般にウケ、囲碁のプロ棋士という地味な職業のわりにメディアの露出が多い。
父親も棋界の人間であり、その上一時は五冠でもあった塔矢行洋である。その息子といえば、もちろんサラブレッドであり、その育ちのよさそうな様子から、老若男女にウケの良い男だが、彼には世間が思っているような、何のこともそつなくこなすことの出来そうな男、と言うにはずいぶんかけ離れている男であった。
かの棋士、塔矢アキラの最近の専らの悩みといえば、それは恋人であり同棲相手でもある進藤ヒカルについてだった。

***

「…ということがあって、もう僕はどうしたらいいのか……」

遠い目をしてそう言いながら項垂れたアキラに、芦原は気軽に返すこともできずに苦笑した。

「というか、俺はアキラが同棲してるなんて今日初めて知ったよ! 水臭いなあ、黙っているなんて」
とりあえずアキラの相談には答えずに、まず思ったことを芦原が口に出せば、アキラはああ、と頷いて恥ずかしそうに笑った。
その照れたような、はにかむような笑顔に、芦原はアキラが悩んでいるようすながらも、ヒカルとの同棲生活は本望なのだろうなあ、と漠然と思った。

「いつ言おうかなって思って……そのまま、みたいな。でも芦原さんだけに言わなかったとかじゃないよ。このことは進藤と僕の両親くらいしか知らないし……」
そろりと視線をやや背けながら言うアキラに、芦原はくつくつと笑った。

「責めてないよ、アキラ。そりゃあ俺だけのけ者とかだったらなんで!?ってくらい思うけど……。言えない事情もわかるしね」

芦原がにやりと笑ってそう言うと、すっかり汗が出てしまったグラスを傾けて口に含んだ。
入店してから三十分ほどが経ち、注文したメニューが並べられながらもあまり手をつけられていない。やや冷めてしまった中華を皿にとりわけながら、芦原は口を開いた。

「まっ、へーきな顔して顔をあわせるっていうのもありだと思うよ。進藤くんだっていつまでも気にしてるんだーって思ったらどうにもしがたそうだしね」
「……でも、僕は進藤の下着姿を見てしまったんです。謝った方がいいのでは…?」
縋るような瞳を向けられ、芦原はううんと唸った。

「今朝…謝ろうと進藤の部屋を訪ねたら、怒らせてしまったようで………」

今朝のことが、アキラの脳裏に浮かび上がった。
ヒカルの部屋の前まで来たアキラは、昨日のようになってはいけないと深呼吸をしてから意を決したように、扉をノックした。
コンコン、と乾いた音を立てた。すぐに反応が返ってくるだろうと思っていたアキラが、どうしてなかなか、これが返ってこないのであった。
アキラは首をかしげて、もう一度呼ぼうとノックしかけたが、アキラが拳を軽く握って扉に向かって振り下ろそうとしたそのときに、扉は開かれた。
そこには真っ赤に頬を染めたヒカルが、ちらりとアキラを見上げてすぐ俯いていた。こんなに自信なさげのヒカルの姿をアキラが目にするのははじめてのことであった。
「進藤、」とアキラが口を開きかけて、ヒカルが遮るように捲し立ててきた。
「いっ…いいから!! もうっ、聞きたくない!!」
怒鳴るようにヒカルが叫んで、走って玄関まで行った。アキラは慌てて追いかけるも、いつもなら寝坊でもしかけそうなヒカルは身支度を完璧に整えていた。止める間もなかった。
シューズを履いて荒々しく玄関を開けて、ヒカルは非常階段のほうから駆け下りて行ってしまったのだった。

そのこともアキラは芦原に告げると、芦原は先ほどのグラス一杯ですっかり酔ってしまったらしく、虚ろな瞳と赤らんだ顔でうんうんと頷いていた。

「それはさあ〜アキラぁ。しんどーくんも恥ずかしいんだよ〜」
エビチリをつつきながら、芦原はアキラを見た。
完璧に酔ってしまった男の戯言がはじまるのだが、いま心に余裕がなく判断力の鈍ってしまっているアキラはそんなことに気づいてはいなかった。
芦原はあくまで真剣に答えてくれている、と思っているのだ。

「だってお前と進藤くんってまだエッチとか全然したことないんだろ?」
唐突に出てきた性の話題に、アキラはぴしりと顔が凍張った。
酔っている芦原は、まったく気がついてはいない。

「女の子はね〜エッチのときのためにいろいろ準備するんだよ。見られてもいいように身体を締めてから、とかね。それを不意打ちだったからさあ……」
俺の元カノもそんな感じでさ〜胸が小さいから寄せてあげるブラ、とかして外すとき抵抗されちゃったよ〜。と言いながら芦原がけらけらと明るく笑っていると、アキラが神妙な面持ちで口を開いた。

「いえ……進藤の胸は、結構大きかったような…」
首を傾げながら、ヒカルの下着姿をアキラは思い出した。薄いパステルカラーのブラとショーツで、普段隠されているお腹は白く透き通っていて、綺麗に膨らんだ胸元は、意外にも豊かで柔らかそうだった。
そしてぱっと頬を赤らめたアキラに、芦原は目を丸くしていた。

「えっ…。へえ、あ……おっきいんだ、進藤くん……」
なんとなく気まずくなった空気に、お互いもぞもぞと落ち着かなくなる。
すっかり冷めてしまった残った料理を視界の端に入れたアキラが、ふと口を開いた。

「……変な想像はやめてください」
地を這うような声に、芦原は飛び上がるように驚いた。

「しっ、しないよ! そんな下世話な想像っ!」

どもってしまった芦原の言葉に、説得力はかけらもなかったのであった。



2013/07/27 19:14



 ひみつのせいかつ10

2話の続き


バタン、と大きな音を立ててヒカルはリビングへとつづく扉を閉めたが、閉めたというのに背中に刺さる視線を感じるような気がしてしまう。
どくどくと早鐘をうつ心臓と、どうしても赤みを帯びることが止められない、アキラに下着姿を見られてしまったという羞恥に叫んでしまいそうになる。

気持ちが静まったところで、ヒカルはそっと扉を少しだけ開けてリビングの様子をうかがった。そこにはもう誰もおらず、暗い廊下から続く灯りのもれる洗面所から水の流れる音が聞こえてくる。
そのことにヒカルにほっとして、ゆっくりと再度また扉を閉めた。
しばらく、アキラと平気な顔で合わせる気がしなかった。


2013/07/26 17:48



 暑い夏の日(R18)

※ワヤヒカ子注意

















和谷宅の研究会は、すごーく蒸し風呂のイメージ
夏とかすごそう
ワヤヒカ子だったら
茹だるような暑さのなかセックスしてそうだな、とおもうといいかんじ
研究会まであと二時間、とかなのにむらむらしてしちゃったりするワヤヒカ子
風呂にはいる間もなく賢者タイム突入のまま研究会はスタート
ひどい
ワヤヒカ子が成立するなら
性に積極的だとおもしろい
道具とかつかったりなんだったり


2013/07/21 18:55



 ひみつのせいかつ9

2話の続き



家に帰ると、ヒカルは夕ご飯を食べに行っただけなのに、それ以上の疲れを感じてすぐに浴槽に湯をはった。普段はアキラがあまり好きではないから入れることは少ない貰い物のやや値のはる入浴剤をいれる。
バブル系の入浴剤は、湯を少しかき混ぜると白い泡と酔ってしまいそうな甘い香りを発している。
その間に乾燥機にかけていた洗濯物を慣れた手付きで箪笥にしまうと、着替えをとって服を脱いだ。
緩い手付きで身体と髪の毛を洗って、ヒカルは待ち望んでいた浴槽に浸かった。
ふわふわとした泡が身体にまとわりつきつつ、甘い香りにヒカルは瞼を伏せた。
ぼんやりとした頭で身体をマッサージしながら、ヒカルは疲労を少しでも和らげようと一時間ほど入浴することとなった。

浴室から出ると、ヒカルは下着を身につけて家に他にひとがいないせいか、下着のままの姿で廊下に出た。
いつもならテレビなどをつけて適当にだらけて過ごすのだが、未だに疲労を訴えてくる身体に、ヒカルは寝室へと向かった。
アキラとはお互いに仕事も違うことがおおいため、部屋は別室にしている。小さめのテーブルに置かれたビビッドカラーのノートパソコンにちらりと視線をやって、棋譜整理でもするべきか、と思いながらも結局開くことはなく、ベッドに倒れ込むように寝た。
張り替えたばかりのシーツがやけに気持ちよくて、身体も十分に温まったせいか、眠気がどろりとヒカルを襲うように迫ってきて、ヒカルはそれに誘われるように力を抜いて身を任せた。


ふと物音がして、ヒカルは目を開けた。すると、少し開いていたドアから光が覗いている。
しょぼしょぼとする目をこすりながら、ヒカルがゆっくりとした足取りでドアを開けると、アキラの姿があった。

「あ………おかえり」
「ただいま。寝てて良かったのに。起こしてしまったかな?」
背中を見せたままアキラは返答した。手には大荷物があり、それを整理してるようだった。

「んー…ちょっとうたた寝してただけだから。それより、荷物大変そうだね。手伝おうか?」ぺたぺたと素足で歩み寄りながらヒカルがアキラのすぐ後ろまでいく。

「大丈夫だよ。僕一人で…、も……」
ぱっと振り向いたアキラが、ヒカルの姿を見て驚いたように目を見張った。
その様子に、ヒカルは不思議そうに首を傾げた。

「? 塔矢?」
「ふ、」
アキラの唇がわなわなと震えている。

「ふっ…服を着ろーっ!! なんで君はそんな姿なんだ?!」

アキラの容赦ない怒号にヒカルは身を縮こまらせた。

「僕が家にいないといつもそうしてるのか?! まさかそんな姿で玄関に出たりするのか?」
ヒカルがなにかを言い返す間もなく責めるように怒鳴ってくるアキラに、ヒカルはようやく自分が下着姿のまま部屋から出て来てしまったこと気付いた。
白く柔らかな肌が、隠されることなく照明のもと晒されている。普段は見せることのない曲線を描く胸元も、引き締まった太股もである。
ヒカルはぱくぱくと言葉にならない言葉を発しながら、目にも止まらぬ早さで部屋に戻った。


2013/07/12 17:14



 ひみつのせいかつ8

2話のつづき


ヒカルは少女たちから視線を外して、ガラス越しに外を睨んだ。夕暮れの赤みを帯びた光に包まれた高層ビルが、鈍い光を放っている。
今日、アキラは何時に帰ってくるといっていただろう、とヒカルは朝のことを思い出す。本日手合いのなかったアキラは、確か指導碁で呼ばれていたはず。
ヒカルはそっと笑って、先程頭に過ぎったことを振り払って携帯に手を伸ばした。カチカチとキーボタンを押しながら、文章を打つ。
――今日、夜ごはんどうする?



アキラから返信されてきたメールを見て、ヒカルはソファから起き上がった。じっとその文面を見つめて、安心したような、でもどこか不満な気持ちがわいてくる。

同棲をはじめたものの、ヒカルはとくに料理が出来て生活能力がある、というわけでもなかった。よく男のような性格をしている、と揶揄される通り、実際にヒカルは女の子らしくお菓子作りや料理を得意としてはいなかった。それでも親元を離れるにあたり、ヒカルもそれはいけないと自覚したのか、簡単なものならつくれるようにはなったし、部屋もある程度は片づけている。
意識して努力した結果のその状態だが、それもアキラと比べると落ち目に見えてしまうものだった。
真面目そうな印象を与えるアキラは、その見た目を裏切らず実際に真面目であり、なにより几帳面であった。生活を疎かにすることもなく、食事は決して多く量は取りはしないが、栄養バランスを考え野菜・魚を中心とした和食を好む。部屋も元々汚くなることはなく、取ったら元の位置に戻すということも徹底的であるし、食器もすぐに洗う。
そう、はっきり言うと、ヒカルの出る幕はなかったのである。そしてそれをアキラ自身も気にすることなく、自らその役を買って出ている。

だから、今日のようにアキラが夕食を共にしないとすると、ヒカルは途端に夕食をつくることが面倒くさく感じてしまう。アキラがいれば、ヒカルも気にして和食を頑張ってつくってみようとするものの、いないとなれば気にすることはない。外で適当に店に入り済ませてしまえばいいのである。

ヒカルは財布を手近なトートバッグに入れて家を出た。鍵をかけてエレベーターに乗り込むと、マンション近くの手近なチェーン店に入る。
ノートを開いて勉強をしている学生や家族連れもいる。なんか、浮いているかも、と思いながらヒカルは店員にメニューを頼んで運ばれてきていた水を飲んだ。
ざわざわとしているこの空間に落ち着かなくて、そわそわとしてしまう。さっさと食べてしまって店を出よう、と思った。
ぼんやりと暇を持て余しながら、ヒカルが携帯をいじっていると、「ヒカル?」と驚いたような声とともにヒカルは顔をあげた。

「あかり………」
ヒカルは驚いて声をかけてきた人物を見上げた。
淡い色のフレアスカートに同色のジャケットに白ブラウスを着た大人っぽい印象を与えるあかりが、そこには立っていた。薄化粧をして色づいた唇をしているあかりが制服姿のころとはだいぶ違うように見えて、ヒカルはぱちぱちと瞬きをしてその姿を凝視していた。

「藤崎さん、誰その子?」
「知り合い?」

不思議そうな声がいくつか聞こえて、ヒカルはあかりの後ろの方に目をやった。茶髪に染めた同年代くらいの少年や、あかりと似た背格好の少女もいる。

「ごめんなさい、幼馴染なんです…。久しぶりに会ったから、びっくりしちゃって」

えへへ、と笑ったあかりは後ろの友人らしき人たちにそう話す。
それを見ながら、ヒカルはあかりに声をかけた。

「よう。久しぶり、珍しいな。ここで会うなんて」
「ほんとだね。…あ、あのね! 私の行ってる大学この付近なの。だからなんだ」
「へえ……」

じゃあ後ろにいるのはあかりの大学の友人たちなのだろう。ヒカルは自分とは無縁だなあ、と思いながらじっと見つめる。
高校も行かなかった自分からしたら、大学なんてますます遠い存在だ。ヒカルは珍しいものを見るような目を向けながら、そう思った。

「ヒカルは? ひとり?」

あかりの言葉に、ヒカルはうっと言葉をつまらしかけた。困ったような顔をしてヒカルはううんと唸って笑った。

「いまさ、一緒に生活してるやついるんだけどさー。そいつが今日夜に帰るっていうからさあ」
あかりにアキラと同棲していることを、ヒカルは伝えていなかった。なんとなくいま言うのも気が引けて、ごまかすようにそう言った。
「そ、それよりさ。そちらの人たちはあかりの大学の同級生?」
話の矛先を変えて、ヒカルは笑って言った。

「うん。サークルの人たち。私、いまテニスサークルに入ってるの」
にこにこと話しながら笑うあかりに、ヒカルは苦笑した。
「なんだよーあかりがテニスぅ? 下手そう」
「もうっ。そんな運動音痴じゃないわ」

そんな二人の会話を聞いていたサークルメンバーの一人が、声をあげる。
「へー藤崎さんの幼馴染。君も大学生?」
にこっと笑いかけて友好的なようすで話しかけてきた男に、ヒカルは困ったように眉根を下げた。碁と縁のなさそうな人に言うのは、なんとなく躊躇いがあった。

「あー。俺は学生じゃなくって、棋士なんです」
「キシぃ?」
キシ、とぽかんとした顔でその単語をつぶやく男に、ヒカルは苦笑いをこぼしたくなった。キシと聞いて棋士、と即座に思い浮かぶ人は若い人ではそうそういないだろう。
かくいう自分も碁をはじめるまではキシ、と言われて棋士、とは思い浮かばなかったに違いないのだから。

「囲碁のプロ棋士なんです。ヒカルは」
見かねたあかりがフォローするようにそう言うと、男を含めたほかのサークルメンバーもはっとしたような顔でああ、と頷いた。

「囲碁かぁ。すごい変わってるねえ」
「私たちと変わらない年なのにすごーい」
興奮したようすはなく、ただただ本当に驚いているといったように言うようすに、ヒカルはそれもそうだよなあ、と感慨深くなった。
囲碁のプロ棋士なんて、普通の人からしたら縁遠いものだろう。自分にとって大学というものが縁遠くなったのと同じように。

それからも当たり障りのない会話を続けていると、ヒカルの頼んだ料理が運ばれてきて、そこであかりとそのサークルメンバーとは別れた。
楽しそうなあかりの様子を尻目に、ヒカルは運ばれてきた料理を口に運んだ。
なんとなく、このすこしの会話だけで疲れた気分になってしまった。
きっとあかりだけとだったら、そんな気分にはならなかっただろうけれど。


2013/06/22 23:36



 ひみつのせいかつ7

2話のつづき

***

カフェで奈瀬に相談をした結果、ヒカルは「キスをしたければ、迫ればイイ」という結論に達した。もちろん奈瀬からすれば、一種の冗談のように迫ればいいだなんて言ったのだが、恋人としての行為は初心者というかむしろ未経験であるヒカルにとってはその言葉は絶対的に服従すべきものに思えたのだ。
今日のアキラは手合いの後に、出版部からの取材が入っている。朝話した通りであれば、帰ってくるのはきっと20時以降になるに違いない。

ヒカルは緊張した足取りで、夕暮れ時の大型商業施設の並ぶ通りを歩いて、あるひとつの書店の前に立った。
いつもなら、碁以外のことで立ち寄ることがほとんどない、縁のない場所。今日は、自分の一大決心のためにここに寄る。

恥ずかしさから、ヒカルは書店に入ってから競歩のようなスピードでしゃかしゃかと店内を歩いた。目的の本――というか雑誌、女性向け雑誌を手にとって、じっと睨む。
化粧をほどこした、美しく若いモデルがヒカルに向かって微笑んで、表紙のあおりには「彼とのドキドキ 初デートのモテファッション」などというヒカルにとっては口元がひきつってしまいそうな言葉が並んでいた。「
ごくん、とヒカルは唾を飲み込むと、その周辺にたくさん並んでいるティーン向け雑誌を片っ端から購入するため手に取る。
その勢いに、まわりの客が驚いてヒカルを凝視している。
たくさんの客の視線を一身に浴びながら、ヒカルは顔から火が出る思いでなんとか大量の雑誌を抱えながら会計へとたどり着いた。
その量に店員でさえも目を丸くしている。

「か、会計っ! おねがいしますっ」



書店から出ると、紙袋ふたつ分になった雑誌がヒカルの手を痛める。腕痛い、重い、はやく家に帰りたい。そう思いながらヒカルはしかめっつらでそれを持ったまま電車へと乗り込む。まだ夕方のせいで、帰りがけの学生がたくさんいる。
制服に包まれた同年代の少年少女たちの姿を見ながら、ヒカルは嘆息する。
最近まではまったく気にならなかったことが、妙に気になるようになった。同年代の制服の少女が、同じ学校の生徒だろう少年と楽しそうにしているのを見ると、なんだか物悲しいような複雑な気持ちになる。

中学生のときに碁打ちになって、後悔など一度もしたことがない。碁を打つことは好きだし、なによりやめることは出来ないものだ。それは自分が一番よくわかっているし、佐為が消えてしまったときにしてしまった不戦敗を連続させてしまうようなことは二度としまい、とも思っている。
けれど、ふとしたときに、自分はいつの間にか同年代の少女とはまったくちがうところに身を置いてしまって、それはなんだかおいてけぼりにされてしまったような感覚に陥らせる。
週末によく見る、着飾った可愛らしい少女たちの姿を見ると、碁打ちになり、どこかに置き去りにしてしまっていた昔の、碁をまったく知りもせず触れもせずいたころの自分を思い出す。
アキラは、本当はこんな着飾りもしない女である自分をどうおもっているのだろう。
告白したのは自分からであったけど、アキラから充分すぎる愛情を感じるときもある。同棲だって、流されたからではなくアキラ自身も望んでいると言ってくれた。これ以上なんの不満があるのか。


2013/06/20 01:27



 ひみつのせいかつ6

2話:キスよりもはやく


カフェで頼んだアイスコーヒーにガムシロップを混ぜてから、ミルクをいれて黒く透明な液体をマーブルにしてヒカルはちらりと目の前で渋い顔をしている女を見る。
口をへの字のように曲げてううんと唸りでもしそうなようすに、話をもちかけた側のヒカルはなんだか申し訳ないような気持ちになった。

「いや、さ。まあ…そんな悩むことでもないのかも、うん。そう」
とかなんとか言いながら、ヒカルはストローからすでにカフェオレ味になってしまったアイスコーヒーをすする。
かなり甘くなってしまったそれにひとつも嫌な顔をせずに飲みながら、皿にあるケーキをフォークで切り分けて、口に運ぶ。

「……やっぱり、おかしいよな。こんな状態で同棲してるとか」

その言葉に、ぱっと奈瀬は顔をあげる。やや眉間にあったしわもほぐれて、すこしだけ緩んだ表情になっている。

「そうね。おかしいと思う」
「………………」
自分で言っておきながら、素直に同意するのもなんだかおかしいように思えてヒカルは視線を泳がした。
そんなヒカルを見ながら、奈瀬はくすりと笑みをこぼした。

「こっちは本当にビックリよ。一緒に住んでるってこともだけど、なによりまだあんたたちがそんな関係だったとは……」
奈瀬にそう言われて、改めてヒカルは恥ずかしく思ったのか、頬を赤くして頷いた。

「俺も今更ビックリしてる……。塔矢のお母さんに聞かなかったらしばらく気がつかなかったかも」
苦笑してみせたヒカルに、奈瀬は神妙にうなずいた。

「そうねー。進藤ならしばらく絶対に気付かないだろうから、親が騒ぎ出してようやく、って感じだとおもうわ」
奈瀬はようやく運ばれてきていたアイスティーに口をつけた。汗をかいたグラスは水滴を垂らしている。

「で、本題は? なんか言いたいこと、他にあるんじゃないの?」
ずいっと迫ってきて、奈瀬はヒカルの顔を見上げた。きらきらと輝いて見える奈瀬の瞳は、やや好奇心にも似た色が隠れている。
それにすこしだけ溜息をつきたくなりながら、ヒカルは言いにくそうに口を開いた。

「奈瀬は……年上の彼氏と付き合ってるじゃん」
「うん」
「キスとか…どうしてるわけ」
落ち着かないように視線をきょろきょろと動かして周囲を気にするヒカルのそぶりに、奈瀬はにやりと笑った。

「ああ。進藤、あんた塔矢とキスしたいわけ」
平然とそう言った奈瀬に、思わずヒカルは勢いよく立ちあがっていた。カタン、と椅子が後ろにいく音がして、まわりの客がヒカルのほうへと視線をよこした。
おもわず大きな声で全否定をしそうになったヒカルだったが、そんな他の客の不躾な視線に自分が注目されてしまったことがわかって、ごまかしにもならない苦笑いを見ている客に向けて、またゆっくりと椅子に座りなおす。

「………そうだよっ。なんか文句あるのか」

今度は否定の言葉をあげずに、素直に認める言葉を発したヒカルに奈瀬は微笑ましいものを見るような瞳でにこにことうなずく。

「十八歳、同棲済みでこれか〜。ある意味レアよ」
面白いわね、と続けて言った奈瀬にヒカルは嘆いた。
「笑いごとじゃねーよ。……俺にとっては重大な問題!」
「まあ問題よねー。一緒に暮らしててキスさえなしの健全生活。しかも親は勘違いしてるみたいだし……まあ、でも勘違いさせるようなことをした自分たちのせいでしょ」
「うっ……」
「でも別に急ぐことないじゃない。そういうのって大事にしてくれてる、っていう意味でもあるんじゃないの」

奈瀬の言葉に、ヒカルは黙り込んだ。いいや、それはちがう、と態度で否定していて、ヒカルは顔をしかめて奈瀬を見返した。

「それは…思わないでもないけど……一番の原因は大事にしたい、とかじゃなくて……お、」
ここで言葉を詰まらせたヒカルは言いにくそうに顔をひきつらせる。
「お?」
と先を促す奈瀬に、ヒカルは深呼吸をして言いなおす。

「俺に……セイテキなミリョクっていうのがないからじゃないのかな……」

そう言って、ヒカルは泣きそうに顔を歪めた。つぶれたカエルのような声で自分で言ってて悲しい、とつぶやいてヒカルはうなだれる。

すっかり気力をなくしてしまったヒカルに、奈瀬は困ったように眉根を下げた。ただの惚気でも語ってきてこようものならからかおうと思っていたのに、ヒカルから言われた言葉はやや斜め上の方向に逸れていた。
こういう問題ならば自分がなにか言うよりは、塔矢に問えばいいのでは…と思ってしまう。碁では言いたい放題の仲なのだから、こういうことにも言いたい放題になってしまえばいいのではないだろうか。

それに、と奈瀬はおもう。
「進藤、べつにスタイル悪くないじゃない。それとも塔矢になんか言われたりしたの?」
きっと塔矢は何も言ってないだろうけど、と奈瀬は思いながらわかりきったことを聞く。

「言ってはないけど……そういうことにならないっていうことは、そういうことだろ?」
ぽんぽんと自分の胸のあたりに手をやりながら、ぶつぶつとヒカルは愚痴を吐くようにつぶやく。
もっと胸が大きくなればアイツは満足するのか…?などとアキラの前では言えないようなことを口走りながら、うんうんと唸る。
中学生くらいの年の頃こそ、まるで少年のようだとも言われていたヒカルだったが、十八歳にもなるとさすがに身体つきも女らしくなった。元々丸顔だった顎のラインも、成長とともにすこしシャープになり年相応に見せている。
本人は悩んだようすで胸に手をやっているが、まろやかなラインを描く膨らみは存在するし、ふんわりとしたシルエットのカットソーからのぞく薄い肉の乗った鎖骨は綺麗だ。ヒカルが主張する性的な魅力。決してないとは言い切れないのである。

それをわかっている奈瀬からすればセイテキなミリョクがないから、などと言うヒカルが不思議に思えるのだが、本人がそう思ってしまっているのだからしょうがない。
奈瀬は椅子に座りなおすと、まだ唸っているヒカルに話しかけた。

「まあキスのひとつやふたつ。迫れば男なんてやっちゃうわよ」
にこっとその可愛らしい笑みを向けて大胆なことを言う奈瀬に、ヒカルは感心したように頷いた。

「伊達に男と付き合ってないな、奈瀬。……迫ればイイ、うん。わかった」
迫ればイイ、迫ればイイ。と何回もつぶやきながらヒカルは何度も頷く。
それを眺めながら奈瀬は溜息をついた。

「棋院に戻ったらその口閉じなさい。他の人が驚いちゃうから」

***


2013/06/18 22:27



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