羽化に唇 ▽▽▽ ( UNION / GARDEN )

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「やっぱり下準備もこちらでやりたいものだよね」
「オレは恥ずかしいんだけど……」
「最初から最後まであなたを大切にしたいという意味だよ」
「ううう……」
 たくさん調べたけれど、全てが冬眞くんに当てはまるとは限らないから……と言いながら、春継はひたすらゆっくり事を進めてくれた。きっとオレも大した経験は無いのを察してくれたのだろう。さっきから体がじんわり熱くて、もどかしいようなむずむずする感じが続いてる。
「ぁ、あ、ぅ」
「冬眞くん、苦しくない?」
「んっ……へ、き」
 ちょっとじれったいくらいなんだけど、言ったら呆れられるかな……。
 そんな風に思っていると、春継は一体どんな天啓に導かれたのかリンスをワンプッシュ手に出してオレの息子をぐちゅぐちゅと扱き始めた。急な刺激に思わず声をあげてしまう。腰の下にクッションが挟まっていて腰が浮いているせいで、快感を逃がそうにもいまいち体に力が入らない。
 そいつは気のせいでなければちょっと得意気に笑ってキスしてきた。
「好きなひとがおれの手で気持ちよくなってくれているのを見るのは気分のいいものだね」
「ふ、ぁ、ぁあっ、も、なに、とつぜん」
「ええ? だってあなた、物欲しそうな顔をしていたから」
 羞恥で顔から火が出そうだ。そういうの思ってても言ったら駄目だろ、と息も絶え絶えに言うと、春継はやっぱり笑って「おれがそうさせているんだね。やはり気分がいいよ」とオレの耳元で囁く。
 そいつの手はとても器用に動いて、玉をやわやわと揉んだり裏筋をゆっくりなぞったり、なんだろう、まるで、観察するみたいな触り方だなと快感にぼうっとする頭で思う。日常的に絵を描く奴だからだろうか。
 前も後ろも同時に刺激してくる辺りマジで器用だなと場違いな感想を抱きつつ、オレも春継に触りたくて頑張って手を伸ばす。
「冬眞くん、おれの体力のなさを知っているだろ? お手柔らかにね」
「そこまでっ……大人げないつもりは、ねえよ」
 優しくするから。オレの全部使って優しくするよ。
 そっと手を這わせるとぴくりと反応するのがなんだか可愛く見える。こうやっておとなしくしてるとちゃんと年下って感じ。
 撫でて、擦って、やがて少しずつ水音が混じってくるのが妙に恥ずかしい。同性の恥部をこんなまじまじと見たのなんて初めてだ。自分にも付いてるんだから……と思ってもやっぱりどぎまぎしてしまう。
 春継のを触りながら興奮してしまっている自分に気付く。リンスのせいだけじゃなくどろどろになっているそこは萎える気配は無い。オレあんまり頻度高くない方だと思うから、溜まってんのかも。羞恥を誤魔化したくて自分のもまとめて一緒に握り込むと当たり前なんだけど春継の体温を感じて余計に顔が熱くなった。
「冬眞、くん」
「んんっ、ぁ、ね、一緒にさわっていい? あったかい、ん、すき、」
「ふ、は、……あなたの望むようにするよ、おれは」
 一体何を口走っているのかよく分からなくなってきたけど、春継は優しく笑ってくれるのでオレは安心して続きをすることができる。リンスと先走りでいやらしい音をたてるそれを弄っては春継の反応を見て、時折オレの真似をするように触り返してくる春継がまた愛しくなって、泣きそうだ。
「は、っん、ぅう」
「っあなたは、いつも泣きそうだね」
「だ、だって、だって」
 うれしいから、とやっとの思いで伝えると春継はオレの髪を撫でてくれた。
 おれもだよ、と言ってくれた。
 こんな幸せを感じたままイけたらどんなに気持ちいいだろう。そう思ったオレは一物を擦る手の動きを激しくする。春継もオレに応えるように触れてくる。嬉しい、気持ちいい、幸せ。
 もうイく、と我慢の限界を感じた瞬間、春継が舌を絡めるキスをしてきて気持ちよすぎてトぶかと思った。
「――――ッ! っ……ん、ぁ……ふ、」
「っう、……っ、とうまくん、へいき?」
「ん、きもちい……は、ぁ」
 喘ぐような呼吸しかできなくて、今までの人生で感じた一番の快感がここにあるということに改めて驚いてしまう。びっくりした。気持ちよかった。一人で触るのなんて問題外に思えるくらい。
 視界が涙でぼやけている。春継が宥めるように軽くキスしてくれるのすら気持ちいい。やばい、オレおかしくなっちゃうんじゃないだろうか。
「……はるつぐ」
「なんだい?」
「もっと、して」
 アンタにだったら何度でもしてほしい――なんて、流石にそんなことは言えなかった。未練を残さないようにこういうことをしているつもりなのに、想いばかり募っていく気がする。
 春継は息を整えて、自分のをちょっと乱暴に勃たせてからオレの後ろの穴が十分に解れているのを確認するように指で探る。「……挿れる、よ」あ、緊張してる。こいつでも緊張することがあるんだ。ちょっと嬉しい。
 茶化してる余裕はオレにも無かった。頷いて縋りつけば、穴の縁に春継のが擦りつけられるのが分かる。ちょっと迷うようなそぶりは遠慮なのだろうか。もどかしい。早く入ってきて。ねえ、早く。
「っ、ぁ、ああぁ……! っ、っ、」
「ぅう、あー……すごいな、これ……」 
 しきりに結合部のひだの部分を触ってくるのがくすぐったい。血が出ていないかと思って、と気遣うような声に、この状況でなんでそこまで気が回るんだよと感動してしまった。
「も、いいからっ……うごいていいから、はやくっ」
「あんまり……っ初心者を、煽らないでくれ」
 動物ではなく人間でありたい、と言ってそいつはオレの腰を支える。自分の指が中にあったときは異物感ばかりだったのに、春継が動き始めるとちょっと擦れただけで声が出てしまう。なんだこれ、やばい、ほんとに頭ばかになる。
「ひっ、あっ、ぁあ、うぅぅ……うー……っ」
「ん、冬眞くん、っは、あ」
 息遣いが荒いのが分かる。腰を動かしてナカを擦ると春継もちゃんと気持ちいいみたいで、中でびくびく動くのが分かって嬉しい。どんな風に動いたらもっと喜んでくれるかな、気持ちよくなってくれるかな、って考えながら腰を振った。自分のいいとこにも当たって危うく腰砕けになるかと思ったけど。
 ……ね、分かる? 今繋がってるんだよ、オレたち。
 やっぱり奇跡みたい。
「はぁっ、ぁっ、んんっ、んっ」
「っ、あのね、ここで言うのはっ……ずるい、けれど」
 聞こえていなくても怒らないから、言わせてくれ。春継はそう言って身を寄せてきたかと思えば、耳元で囁く。
「――――迎えに来るよ。そしてもう一度好きと言うから、待っていて」
 オレ待ってていいの? ほんとに? ずっと待ってるかもしれないよ? 実はさ、結構一途なんだよオレって。後悔しても知らないからな?
 一瞬で色々な言葉が頭を駆け巡る。けれど意味のある言葉が口から出るより先に、春継のものがオレの最奥を抉って瞼の裏でちかちかと快感がスパークしたような錯覚を覚える。
「ひっ――ゃ、そ……な、きゅうにっ……」
「イっていいよ、おれも、一緒だから」
「ッぁ、ぁあっいく、いっひゃう、いっ――――!」
 ひときわ強い快感がはじけた瞬間にまたキスされた。酸欠で頭がぼうっとして、音がすーっと遠くなって、全部あったかくてふわふわしてて、それで。
 オレは半ば無意識のうちに、目の前のそいつにぎゅっと抱き着いた出来損ないのコアラのような恰好で体を震わせて達したのだった。

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