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鴎台

 わたしだけの星だった/星海

夜空はこんなにも広くて、数えきれないくらいの星があって。だからもしかするとまだ誰にも名前を与えられていないちいさな星が、何となしに空を見上げた視界にもひとつくらいあるのではないか。そしてひょっとすると、彼がそうだったり。それは無尽の熱のように活力をもった幼少期の無邪気な空想。でもほんとうに、星だと思っていたの。私だけの星だって。




稲荷崎

 ひとでなし/侑

まるでおままごとのようだ。宮侑の恋愛は、全部がぜんぶ真似事だった。この男はバレーボールに対して誠実であるけれども、その他の物事については大抵、どうでもいいと思っている。どうでもいいと思われていることを自覚しつつ、私は深夜、彼の思いつきのまま、朝日に輝く海を見るべく車を走らせている。限界までリクライニングした助手席に、アイマスクをして眠るクソ野郎を積んで。ひとでなしとはよく言ったものだ。確かに私の目に映る彼は、ただのヒトではない。こうまで安直だといっそ月並みにも聞こえるが、それでも私にとって宮侑とはまさしく神の如きであった。いいよ、ままごとでも。彼がコートに立たない僅かな時間を消費する供として私を選び、ごっこ遊びに過ぎぬとは言え、心中のように、海を目指して良いと言った。バレーをできない夜の闇を、共にして良いと。




井闥山

 リバースデイ /古森

そのうち書きたいオメガバース古森さん。文体が定まらず書きかけが無数にある。女性性に対する苛立ちと男性性に対する憎悪など、思想が強い。

>>追記



稲荷崎

 見合いの話/北

北信介に不満をもった嫁が北信介に大切にされているということの本質に気付く話を書きたかったけど途中で飽きたもののシーン抜き出し。北信介という人間について考えていたい。(追記に続く)

>>追記



白鳥沢

 人間離れ/牛島

若者のナントカ離れならぬ、若利の人間離れ。咄嗟にそんな文言が過るほどに、近頃の若利くんはますます極まっていた。
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使いどころが、ない。




井闥山

 「幸せになろうな」/従兄弟

入籍の予定を報告すれば、驚くでもなく「やっとか」とまるい眉を下げた。古森は昔からの友人であり、私と聖臣を結び付けた立役者であり、そしてここに至るまでに数多の恋を経た私の、最初の恋人でもあった。ともすれば寡黙な婚約者よりも多くを共有してきた男、なのに。
「聖臣ならお前のこと逃さないと思ってた」
うっそりとした微笑、こんな表情は見たことがない。息を呑む間も無いほどなめらかに、左手の薬指を捕らわれる。大きな手で逃げ場なく包み込まれ、やさしく摩られる指輪は、別の人との永遠を誓ったものだ。それなのにどうしてか、この人のものにされたような気がした。

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恋多き幼馴染を佐久早と結婚させて得る古森




他ジャンル

 虫螻の祈り/幸村精市

蝉の死骸はみな一様に指を組み合わせている。路傍のそこかしこで、まるで殉教者の如く。無論其処に祈りはない。果てた虫が縮こまるのは、単純に死後硬直だとか。しかし、仮に彼らが神をもつとして、一体何の意味があるだろう。
肌をぬるりと撫で抜けた風が、他方この足元ではかさついた。さり、かさり、と、乾涸びた虫の屍を掠めて。蝉が身の内に湛える虚は、ずいぶん淋しい音を立てるものだ。あのがらんどうの腹に呑まれると、炎昼の空気の不快な湿度さえ、すっかり干上がってしまうらしい。風に転がる死骸から、渇いた、死の音がする。しかしこれは、神をもたぬがゆえの末路ではない。熱風が吹き抜ける。死者にも生者にも。神をもつ者にも、もたぬ者にも等しく。
祈りは無意味だ。
近頃はほんとうにそのように思う。私の全霊をかけた祈りは、道端の空蝉と差異がない。きつく握り合わせた両掌の、そこにできる隙間すら埋められないまま、無力に眸を瞑るばかり。あの日も。私が瞳を開いたときには、幸村精市は負けていた。あの瞬間を何度も夢に見る、眼裏にこびりついてしまったかのように。
その刹那まで、彼が主人公であることを、私は終ぞ疑わなかった。最後の最後まで気付かなかったのだ。あまりに出来すぎていたから。実のところ彼は、真理の対極にあった。一番テニスを楽しむことが一番強いことと同義――完璧なアンチテーゼは、まるで鏡写しの像だ。彼は強かった、“主人公”と同じくらい。主人公と見紛うほどに。
皮肉なことに、彼はまさしく神に選ばれていたのだ。十字架を背負う神の子として。そんな風に選ばれていたことを、ただ誰も知らなかっただけ。
道の先には延々と蝉の死骸が散らばっている。神を失くした信徒の如くに、人の足元を汚す虫螻。祈りのかたちのその抜け殻を、踏み出した足で踏みつけた。靴底に擦り潰され、ひしゃげ、粉砕される感触。既に失われた生。
晩夏の風は吹く、神が在ろうとなかろうと。何も変わらないはずなのに、どうしてか虚しい。

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天衣無縫になれない幸村精市を愛しています。




白鳥沢

 神たらしめるもの/牛島

「ねえ、白鳥沢は。若利くんは、負けるはずがないんだよね?」会場を揺らす熱狂的な歓声に掻き消され、誰の耳に届くこともない。その問いは、それ自体が既に答えだった。神とは絶対。揺るぎないもの。つまり彼の勝利は常に確信でなければならず、疑念に翳ること自体が異常であった。この程度の舞台で。彼女は頽れんばかりの身体を、転落防止の手摺に齧り付くことでやっと支えた。浅い呼吸の中、深い混乱の内に、王者たるべき人の名前を譫言じみて繰り返す。だってまさか。県内の代表決定戦、そんなところで彼が。
体勢を崩しながらもブロックを躱した、彼のスパイクを相手が繋ぐ。あと一点。獲られれば終わる局面で、彼女の両手は無力にも境界線の外。指を組むことすらできず、観覧席の周縁を握り締めているだけだ。
祈ろうにも彼女は、いま震える唇から零した音の他に、縋るべき神の名を知らない。




鴎台

 白色に就いて/星海

白色ほど排他的な色はない。
たとえばその対極に位置する黒も、確かに強力であるものの、性質としては寧ろ受容的な側面をもつ。黒色は同化を促すのだ。己の色を保ったまま、あらゆる絵の具を受け入れる。或いは自ら他の色を包む。夜闇が物体も生命も、その生み出す陰影までも等しく染め変えるように。
そこへくると、何にも染まらずに保たれた純白というのは、最も高潔な拒絶の色だ。彩色を悉く不純物と見做し。ただの一滴触れ合えば、たちまち別物に変容する。
孤高。尊ぶべき不可侵。星海光来を象徴する色は、少なくとも私の眼には、まさしくそのようにまばゆく見えていた。




白鳥沢

 自転車で撥ねられた。/牛島

こちらが乗り物に乗っているのにただランニングしていただけの牛島若利にはねられて20m吹っ飛ぶ体験したいと思って書き始めたが、秒で飽きた。(追記内に関連ツイートもまとめてあります)

>>追記



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