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井闥山

 アホエロ/従兄弟

アホエロは記号の関係でこちらに載せられないので追記に以前書いたやつのURLを追記に置いておきます。
R18ですがひたすらしょうもないだけです。

>>追記



他ジャンル

 なんらかのNTR

ずしりと重たい。冷たい躰であった、きっといま触れている皮膚の裏側、そのずっと奥底まで、芯から凍えているのだろう。この星のいちばん寒いところにたったひと幹、千年も密やかに佇んでいる聖樹のように。耳を寄せれば、胸の内には戦慄きに似た動悸の気配。か細く、哀れな響きであった。こうも弱々しくては、今しも凍り付いて、彼に息衝く貴い血脈は呆気なく絶たれてしまうのではなかろうか。こんな淋しい夜の只中、罪に塗れた不実の寝台に頽れて。気付けば女は恍惚としてその鼓動を聴いていた。ああ、この人は死ぬのだ。堪え難い孤独のうちに、こんな凡庸な女に縋り付いて!たまらない気持ちになって、女はとうとう自身の心に不貞の情の芽生えを許した。頑なに己の身体を抱き締めていた腕を、凭れ掛かる男へと開き、その背を抱き留めて、己の心音をくれてやった。愛してほしいと乞われること、それは他者から齎される如何なる愛の言葉よりも甘美に脳髄を揺らす。許婚は彼女に愛を囁きはしたが、このように彼女を求めたことは一度たりともなかった。彼女は彼女に愛を与える男よりも、彼女の愛を必要とする男をこそ愛したいと思った。
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本当に覚えがない。なんだこれは。




井闥山

 似てないとこ/古森

同い年の従兄弟なのに似たとこなんか殆ど無ぇの。その数少ない共通項が見た目に顕れなかったことについては喜んだらいいんだか悲しんだらいいんだか。俺と聖臣はたぶん端から見ても全然似てない、なのに心は同じ女の子を好きになった。そして彼女は聖臣に恋をしたのだという。「へえ、ちなみにどういうところがいいの?」平静を装おうと咄嗟に質問なんか投げちゃった時は、そりゃあ後悔したよね。はにかみながら挙げられる要素は俺にないもの、ないもの、ばっかり。ちょっと可笑しいくらいだった。あーあ。折角全然似てないんだから、キスのひとつでもできたなら、間違えようもなく彼女の中に俺を刻み込めたのかな。




鴎台

 星に呪われている/星海

あの人が私の夜空の意味を変えてしまったという言い分は、愛の言葉としては些か非難がましく、或いは夢見がちに捉えられてしまうだろうか。それでもあながち冗談とも言えないのだから始末に負えない。大袈裟でなく、いま私の仰ぐ夜空は以前とはまるっきり別のものに変質している。
あの人はその名のはじめに星を戴く人だった。
あの人と出逢うより前には、私は星空を大層美しいものだと信じ込んでいた。もはや幻想は晴れている、私は既に、ぽつぽつと二、三たよりない光を震わせるだけの都会の夜空よりもずっと美しいものを知ってしまったのだから。そうして何の感動も齎さないくせにどこまでもついて回ってくる星は、呪いとなった。あの人じゃないくせに、あの人の名を思い出させる。夜の空が恐ろしかった。あの人のいない夜に点在する光が。




音駒

 寝息がか細い/孤爪

酸を孕んだ夜雨が都市を静かに浸食している。その音が知覚の全てを占めていたために、暫くの間、己の目が見開かれていることにすら気付かなかった。いつの間に眠りから醒めたのだろう。光源のないまったくの闇の中では身体感覚さえ曖昧になるらしい。記憶も。自我さえも、まるで未だ底無しの夢を揺蕩うように寄る辺なく。味気ない清音のみで構成された雨音はあまりに不快なく耳に馴染むために、自他の境界を曖昧にさせるのだ。
不意に、恐ろしくなった。私が今そうなりかけているように、彼の人もこの部屋を満たす闇にすっかり溶け出してしまったのではないかと。
それもこれも、研磨が省エネ過ぎるせいだ。




井闥山

 弱点の話/佐久早

彼のためにホットミルクを注ぐことが、自分だけに許された特権であると知っていた。歯の浮くような台詞はなくとも、この部屋を満たす穏やかな許容は、何より雄弁にとくべつを示す。
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佐久早って牛乳好きじゃなさそう(偏見)だけど、腐ってなければ食えないものないらしいし大抵何出されても真顔で摂取しそう。どちらかと言うと、見てないところで勝手に淹れた飲み物を飲んでくれるという方が特別。
に関連して(?)、追記はなんの脈絡もない弱点の話。

>>追記



鴎台

 冬の影/星海

迷いのない彼の歩みに引き摺られるように着いて回る、その儚く惨めな冬の影こそが己の鏡だと気付く頃には、既にどうしようもなく彼に心酔していた。
眩しい光には、相応の影が要る。彼が伴うに相応しいのは、ひ弱な冬の陽射しの下に生まれ出る仄かな翳りなどでは決してない。




白鳥沢

 すれ違う/牛島

「たまに本気で牛島くんが同い年ってこと忘れるわ。もうあれだよね、ズレたお父さん。お父さんって呼んでいい?」
「? 俺はお前の父親ではない。可能性があるとすれば夫だろう。子供がうまれればお前が俺を“お父さん”と呼ぶこともあるだろうが、」
「待って待ってズレ過ぎズレ過ぎなにそれ今どういう感情で喋ってる??」
「感情?……すまないがよく分からない」
「いや、初めて“心”という概念に触れたロボット!!?」
「俺をお父さんと呼びたいのでは?」
「ド天然結婚詐欺師!!!?」




白鳥沢

 初夜失敗タイムリープアホエロ/牛島

まあ実際悲惨な死に方だったと思う、それこそ神様に同情されてもなんら不思議はないくらいには。けれど私の本当の不運は初夜失敗で命を落としたことでも、憐れに思った神様から初夜に限りコンテニューできるタイムリープ能力を授かってしまったことでさえなく、そもそもこの牛島若利という人に心底惚れ込んでしまったことなんだと思う。だって、まじで、顔がいい。通算五十回以上もセイコウに失敗(※性交と成功を掛けた高度なギャグ)して尚揺るぎないのだから、この感情は本物だろう。身体の相性など問題でない、恋愛とは心が全てだ。現に微動だにしない若利くんの腿に跨り、彼の口内に唾液を押し込みながら、今の私は殆ど一人で勝手に快感を拾っているような有様だ。ちなみに若利くんに一切動かないでいただくようお願いしたのは他でもない私だ。なにせ三十六回目の失敗の原因が、若利くんに力強く抱き締められての圧死であったのだから、慎重にもなる。




鴎台

 うじうじする女さんと幸郎/星海

光来に愛されていると実感するのが恐ろしい。
そう零せば、昼神は心底面倒臭いという感想を隠しもせずに眉を顰める。惚気は身内で食傷気味だとぼやいていたっけ。でもこれは惚気なんかじゃ断じてない。私にとっては深刻な悩みだ。飲む気の起きないアイスコーヒーの氷をからころとかき回しつつ、私は姉が弟に語り聞かせる恋の模様というものを想像した。惚気る、というくらいだから、その多くはきっと恋愛の幸福な面の切り抜きだろう。さして親しくもない元同級生から聞かされる親友の恋路と、より胸焼けを増長させるのはどちらだろうか。手慰みに弄んでいた飲み物を気まぐれに舐めてみて眉を顰める。昼神が嫌がらせのように勝手に注文したコーヒーは、ミルクやガムシロップを足してみたところで、やはり苦みを抑えられない。ああでも、少し似ている。少なくとも私は自分の恋愛が幸福なばかりのものでないとは自覚している、自分が相当に重たい女であることも。そうだ。荷となりかねない女など、あの人の隣に相応しくない。
ほんと、腹いっぱいなんだよね。黙りこくったままいっそう肩を落とす私を見て、昼神はうんざりと首を振った。




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