野球日和 | ナノ


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07

「Ho〜……」
「なんですか」

やはり身長差があり、虎鉄はひかるを見下ろす風になる。
負けじとひかるは虎鉄を睨む。

「N〜、やっぱ女の子みてーだNa〜☆」
「……どーも」

ウィンクして茶化す虎鉄にひかるは睨んだままだ。

「こら虎鉄。海堂が威嚇しとーとな」
「猪里!」
「遊んどらんで、はよアップばしとー」
「ヘイヘイ」
「すまんね、海堂。コイツすーぐ女の子にちょっかいば出しよるから」
「お……女の子……」

猪里はあまりフォローになってないフォローをし、虎鉄を連れていった。

「じゃーNa、ひかるちゃん」

三度目のウィンクをして去っていく虎鉄にひかるはあっかんべーで見送った。



グランド整備が終わり、ウォーミングアップが済むと各ポジションごとに別れて守備練習になる。

「次、海堂くん」
「うっす!」

つい先ほどひかるの特大ホームランを目の当たりにした部員たちはやはり守備のほうも気になり、ひかるに自然と注目が集まる。
――キィィン!!

「うへぇ。牛尾も厳しいなぁ」
「ありゃ完全にセカンドだろ」

牛尾はセカンドベースの、セカンド寄りにゴロを打った。セカンドの守備範囲である。
だがひかるは怯むことなく走りだした。

「! 取りにいくのか!?」

ミットを差し出したまま横へ飛び込んで捕球し、倒れないようそこから片手をつき、ひかるはグラブトスでファーストに送球した。
――バスッ
見事なストライクでボールは天国のグラブに納まった。

「おお! すげーアクロバティックな守備だな!」

周りからは感嘆の声があがる。
小柄でいかにも軽そうなひかるだから出来る芸当だろう。

「あの体勢からグラブトスとは……」
「……」

蛇神、司馬も驚いているようだ。
バッティングにも長け、その上守備も鉄壁となると流石の蛇神でさえ舌を巻かざるおえない。

「海堂くん、もう一球いくよ」

牛尾の声で守備位置に戻るひかる。その目は獲物を狩る猫のように爛々と光っている。
――キィン!!
今度はサード寄りのボテボテのゴロだ。
ひかるは駆け出す。
が。

「ぅお、わ!?」

グラウンドにつまずき、激しく転倒。
ボールは虚しくレフトへと転がっていった。

「なっ……」

部員達はみな、呆気に取られた。
アクロバティックな技を見せられたあとだったので、より一層部員たちの不意を衝いた。

「……大丈夫か? 海堂殿」

あまりに派手なコケ方だったので、見かねた蛇神がひかるに話しかけた。

「……平気っすよ、へびかみ先輩」

鼻を強く打ったのだろうか、鼻が赤くひかるは立ち上がろうと腰を上げるが……

「ぶ!!」

今度はスパイクの靴紐を踏み、同じ格好でまた転んだ。

「あんなにスゴイのに……もしかして、ひかるちゃんってドジ?」
「いや……もしかしなくても……かなりのドジっすよ……」

悲しげに兎丸と子津の会話がグランドに響いた。






「ナハハハハ!」
「笑うな!」

辺りはすっかり暗くなり、冷えた空気がまだ四月を思わせる夜。
大波乱の部活が終わり、ひかる、天国、凪、子津が並んで帰宅していた。

「だってよ、あんだけ大口叩いてたやつが、あんな……あんなっ……大ドジだったとはな!! ガハハハハ!」

守備練習、バッティング練習と進む中で、すっかりひかるは『ドジなひかるちゃん』として定着してしまった。野球がかなり上手いことには変わりないのだが、その差が激しすぎて暖かな笑いがこみ上げてくる部員たちだったが。

「さ、猿野くん……笑っちゃ可哀想っすよ」

恋のライバルとして敵視している天国には、もってもない特ダネだったのだろう。
天国が笑うほどにひかるの頭に怒りマークが浮かぶ。
恐れをなした子津が、まったく気づいていない天国を止めようとするが調子に乗った天国は誰にも止められない。

「もーひかるちゃんたら、あんだけエラソーにほざいといてぇ、プラスマイナスむしろマーイみたいなぁ〜?」

わざと女子高生風に言う天国。金髪のカツラに小指にマネキュアを塗る真似をする。

 



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