「はあ……エリザさん、今日も可愛いナ……」
うっとりと、のぼせたように呟くガジさんは、ほんの数分前に去っていった彼女の背中の幻を、いまだに追いかけつづけている。
その夢中な様子を見れば、彼が本当に彼女を――エリザさんを強く思い慕っていることが簡単に見てとれる。少なくとも、私がこのシアレンスに来てから今日までのあいだ、ガジさんはずっとエリザさんのことを想い続けているふうだった。
一途で、熱烈で、でも少しだけ不器用なガジさんの恋心。けれどそれを向けられている当の本人は素知らぬ顔で過ごしているのだから、私はそんな毎日がとてももどかしくて、どこか腹立たしくもある。
私ならこんなふうにはさせないのに。私がその対象であるなら絶対一方通行にはならないし、むしろガジさんが思うより何倍も強い想いでもって、それをお返ししてやれるのに。
でも、きっとそうじゃない。ガジさんが求めているのは私なんかの答えじゃなくて、ずっとずっとエリザさんに、エリザさんだけにその気持ちを向けているのだ。
私が眼中にないってことくらい、他でもない私自身がいちばん理解している。
一方通行の矢印のみで象られている多角形を、今すぐにでもぶち壊してやりたい。そんな苛烈な思いを抱いてしまうほど、私は現状がひどく歯がゆくて、苦しかった。
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『私だけのあなたでいて欲しいよ』です
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