SS

22 / 12 / 12
ポケモン - おしえておしえて(チリ)

GLD

22 / 11 / 29
ポケモン - こんなときが続けばいいのに(ナタネ)

 彼女の横顔は、いつもきらきらと輝いている。
 ジムリーダーとしてバトルに励むときも、草花を愛で、育てるときも。……もちろん、ポケモンの様子をうかがうときだって。
 いつもナタネさんはとてもきれいで、可愛くて、僕の視界をちかちかと弾けさせるのだ。
 ゆえに僕は、時おり彼女に話しかけることすらおこがましいと、まるで自分が夢のなかにでもいるような、幸せと背中合わせの恐ろしさを覚えてしまって、急に目の前がまっくらになるときがある。
 しかし、そうして暗く落ち込みそうになる僕を救ってくれるのもまた、他でもない彼女のかがやきであって。ナタネさんは僕が落ちくれそうになるたびに手をとって、微笑み、すくいあげてくれるのだ。
 ――大丈夫だよ、シラシメくん。あなたにはあたしがついてるんだから。
 そうやって僕のすべてを許し、認め、受け入れてくれる彼女の優しさに、僕はいつまでも包まれながら、赤子のようにねむるのだった。

22 / 10 / 23
ポケモン - 無題(グラジオ)

「グラジオさま、お出かけですか?」
 モンスターボールに収められたポケモンたちのコンディションを確認するグラジオさま。いつもどおり仏頂面のように見えるが、その横顔にはほんのりとした高揚感が見てとれる。
 わたしは知っていた。このお顔をしているときのグラジオさまは、いつも決まってお友だちの元へお出かけになると。
「ああ……少しな。ヨウとハウに呼ばれている」
「あら、まあ。バトルロイヤルですか?」
「どうだかな……アイツらはひどくきまぐれだから、すぐに言うことが変わるんだ。今日もどこに連れて行かれるかわかったもんじゃない」
 文句のように言いながらも、グラジオさまはひどくおだやかに微笑んでいる。


#いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

22 / 10 / 23
ポケモン - 無題

「ギンガ団について……? うーん、あんまり詳しくないんだよねえ」
 ハクタイ近辺にはギンガ団員が多い。理由など言わずもがな、町の北西に鎮座するギンガハクタイビルが団員を食らっては吐き出しているからだ。
 この町に住まう人間として、僕は何度もギンガ団について訊かれてきたけれど、そのたびにずっと知らぬ存ぜぬを貫いてきた。
 正直なところ、めんどくさかったのだ。僕の両親がギンガ団に所属する研究員だということを、他の誰にも知られたくなかったから。


#いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く
ナタネ夢主です

22 / 10 / 05
ポケモン - ポケットじゃないモンスター(セキ)

 よもや、こんなにもしみったれた想いを抱くようになるとは。
 色男が聞いて呆れる――なんていうのは、彼女を愛するようになってからきっと何度も思ったことだ。
 世間から見れば取るに足らないような娘で、老輩たちからすれば不釣り合いだとか、似合わないとか、そんな言葉ばかりを投げかけられる。それでも自分は彼女がいいし、もはや彼女以外目に入らない、と言っても過言ではないくらいだ。
 それくらいに自分は――コンゴウ団リーダーのセキは、細い肩で懸命に生きる少女を。ヨヒラのことを、このうえなく愛している。
 ――冒頭の想いはみみっちい嫉妬心から来るものだった。
 セキ自身、ヨヒラから目いっぱい愛されていることも、彼女が浮気な質でないこともわかっている。深く深く、理解しているはずなのに、反面、どうしても不安が拭えなくて困るのだ。
 まるで鉛のように腹の底に溜まるそれは、いっさいを発散させられないまま、少しずつ、ほんの少しずつだけれど、セキの心を暗くする。
 そして、気づけばみっともない独占欲まで頭をもたげはじめて――まるで猛獣のようなその激情を、ずっと腹の奥の奥の奥で抑えつけているのだった。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『誰にも渡さない』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 09 / 12
ポケモン - よい夢を(セキ)

 ふす、ふす。呼吸にともなって上下する頬が、プリンのようにふかふかしているように思えて仕方ない。
 体はひどく細っこいのに、頬だけはこんなにもふっくらしているのだから不思議なものだ。これが子供というものなのかと、隣で寝入るヨヒラを見ながら、セキはすっかり考え込んでいた。
 ――きっと、良い夢を見ているのだろう。安らいだような表情も、ほんのり桜色に染まった頬も、彼女の熟睡のほどをあらわしている。ほとんど眠れずに心身を悪くしていた頃に比べたら、本当に健やかになったものだ。
「このまま、何事もなく元気でいてくれたらいいんだがなあ」
 ふくふくの頬を数度つついても、ヨヒラはいっさい起きる気配を見せない。心を許しきってくれていることがじんわりと胸にしみた。
 感慨深さに身を任せつつ、セキはゆったりと姿勢を直して、寝入ったままの、ほんのりあたたかい体を抱きしめる。朝起きて一番に見る彼女が、やわらかに笑ってくれていることを願いながら。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『夢の中』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 09 / 08
ポケモン - 知っているんだ(グリーン)

 あの人はひどく気取っていて、格好つけで、プライドが高くて――ほんの少しだけ、とっつきにくいところがある。わたしもトレーナーとして出会ったばかりの頃、ミリほどの苦手意識があったくらいだ。
 グレンじまでナーバスになっているあの人を初めて見たときも、不思議な感覚にとらわれた。ほんのり空気が張りつめているような、反面、ひどく淋しげなような――
 けれど、今のわたしは知っている。本当のあの人が、とても面倒見が良くて、優しくて……じつはものすごく努力家だ、ということ。
 そして何より、わたしのことを目いっぱい大切にしてくれていることだって、この世の誰より理解している。
 だから、もしわたしがおばちゃんになって、今とは全然違う容姿になったとしたら。全然可愛くもなんともないふうになったとしたらどうしますか、と聞いてもきっと、あの人は一瞬訝しんだあと、すっかり受け入れてくれると思うのだ。
 べつに、何も変わらねえよ、と。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『私がオバサン(オジサン)になったら』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 09 / 07
ポケモン - なつかしいね(マリィ)

「……あ。マリィ、あれ、覚えてるかい?」
 ラベンダーが指差す先にあったのは、スパイクタウン郊外にある小さな公園。少しばかり寂れているし、遊具の痛み具合からは治安の悪さが見て取れるが、それでも二人にとっては思い出深い場所だった。
「ここ……そういえば昔、アニキとラベンダーさんに連れてきてもらったっけ」
「そうそう。あのブランコにマリィを乗せて、背中を押してあげたこともあったよ。ぼくが加減を間違えたせいでマリィはすっごく怖がっちゃって、降りたあとネズにひっついて泣いてたっけな――」
「そっ……そういうことは言わんでええの!」
 真っ赤になったマリィはラベンダーの背中をぽかぽかと叩き、全部忘れて! と何度も繰り返す。
 その取り乱した様子は普段とは打って変わった年相応なもので、日頃よりも愛おしく思えたのだった。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『公園のブランコ』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 09 / 04
ポケモン - 不可視の縁(リーリエ)

 目を閉じると、ぼくに笑いかけてくださるお嬢さまのすがたが浮かぶ。寝ても覚めてもぼくの心を占めるのはリーリエさまたった一人で、それはきっとこれからも、決して揺らぐことなどない。彼女がいるから今のぼくがいて、そうやって少しずつ積み重ねてきた歴史が、ぼくたちの間に横たわっているのである。
 だからこそぼくは恐ろしい。この壁を、関係を壊してしまうことが。積み上げてきた信頼なんてきっとぼくの指の動きひとつで簡単に崩れてしまうわけで、そんな不安定で不明瞭な不可視の縁に、ぼくは魂までもを囚われ続けている。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『積み上げてきた物』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 09 / 03
ポケモン - もしもし、ヒトモシ(セキ)

ほんのちょっとだけ雰囲気がアレ
← |
- ナノ -