SS

22 / 10 / 26
プロセカ - 無題

「はいはいっ、はーい! できたよたまちゃん、おそろいツインテール!」
 言いながら、咲希は私の目の前に手鏡を持ってくる。楕円の板を薄目で覗くと、そこには普段と似ても似つかない女がいた。
 咲希と同じように高い位置で結ばれたツインテールは、いつもなら絶対にやらないような髪型だ。物珍しさと気恥ずかしさに私が何も言えないでいると、咲希は眩しい笑みを浮かべながらうきうきとした調子で口を開く。
「なんか、こうしてるとミクちゃんみたいだよね。そっくりそのままってわけじゃないけど……なんか、急にそう思っちゃった」
「え……そう、かな」
「うん! アタシ、自分の髪の毛見てもそんなふうには思わないんだけど……なんでだろ? 髪の色のせいかなあ」
 うーん、と首を傾げながら咲希は言う。その後も何やらむにゃむにゃと言っているようだったが、私は咲希の言葉が頭の奥で反響し続けていて、もう何も入ってこなかった。
 初音ミクに似ている――それは、私にとってひどく喜ばしくも、口惜しくもあるひと言だった。
 ……憧れていたのだ、かつては。カイトさんと同じ世界で生きている歌姫に。カイトさんと共に歌って、カイトさんの隣に立って、カイトさんと並び立つことをたくさんのファンに認めてもらえている、彼女に。
 初音ミクは唯一無二で、私のほしかったすべてを持っている存在だった。


#いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

22 / 10 / 25
プロセカ - 無題

 私は、みんなのようにショーにたいして特別に努力してきたわけじゃない。
 思い入れならそれなりにあるけれど、しかし、ワンダーランズ×ショウタイムのみんなを見ているとそれすらもちっぽなものに感じてしまう。その段差を前にするたび、ひどく居心地が悪くなって、足元がガラガラと崩れ去っていくような錯覚を見てしまうのだ。
 ――私は、なんのためにここにいるんだろう。
 頭上にやってきた分厚い雲が、いつまでも私のことをあざ笑っているようだった。


#いいねされた数だけ書く予定のない小説の一部を書く

22 / 09 / 10
プロセカ - 君をおもえば(絵名)

GL

22 / 08 / 26
プロセカ - 横顔と視線の先は(司)

「――元気にしてるかな」
 ぽつりと落とされた輝夜のひと言が、頭の奥に突き刺さったまま抜けないでいる。彼女の思う人が誰なのか、もはや訊ねずともわかってしまったからだ。
 輝夜の脳裏に浮かぶ人。彼女にとってはとても大きくて、けれど、向き合う勇気を持てないでいる相手は、みだりに触れるのが憚られるくらいにはデリケートな問題を抱えている。
 彼女の家庭事情を知っているからこそ、無駄な理性が邪魔する。おとぎ話の王子様のように手を引いて連れ出せない自分が、ひどく歯がゆくてもどかしかった。


あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『母さん』です
https://shindanmaker.com/613463

22 / 01 / 06
プロセカ - 水面の君(司)

別に、何とも思ってないけど――うつむいて言う輝夜のそれが、ただの強がりであることを知っている。両手で握り込んだグラスに、赤くなった頬が映っていることも。水面でゆらゆらと揺れる表情が、やけに愛らしい色をしていることも。正面に座り、ぬるくなり始めたアイスティーを飲み干す司には、すべて丸見えなのであった。


貴方は×××で『グラスにうつった真実』をお題にして140文字SSを書いてください。
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shindanmaker.com/587150
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