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太宰

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 椿を、貴方に。感情のない笑みを浮かべて云うでしょう。「私には似合わない花だ」と。包帯の奥の右目に映らなくとも良いのです。私が、自らの感情を押し付けるだけです。どうか、貴方は其のままでいてください。
 蒲公英を、貴方に。一瞬きょとんとして、其れから笑って云うでしょう。「食用の花とは、ジリ貧の私達には丁度良いじゃないか」と。花を口に入れて咀嚼して、其のまま飲み込んでください。私の感情ごと、頂いてください。
 赤い天竺葵を、貴方に。沢山の幸せに囲まれて、貴方は笑って云うでしょう。「素敵な色だね、君のような女性に似合う花だ」と。貴方にこそ似合う花なのです。どうか、どうか。お幸せに。私の願いを、受け取ってください。

(君ありて幸福/太宰治)

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「生き物の神秘だねえ」腹に指先を当てて、彼は呟いた。幼い彼の顔には確かに笑顔があるけれど、何処までが本物か私には分からない。ゆっくりと指先が腹から離れた。「素敵な子に成るといいね」まるで他人事。指先まで包帯まみれで、嗚呼、そう云えば、彼は私に触れようともしないのだ。

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あの日以来、貴方は消えてしまった。友の死を目の当たりにして、あの人は、煙の様に。机の上の書類も、適当に置かれた外套も、すべて其のままで。私は何時だって貴方の影を追うのでしょう。そうして何時か私の心が凪いだ時に現れて、また乱して消えるのでしょう。嗚呼、なんてことなの。

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小指と小指が触れて私達は思わず顔を見合わせる。随分近くに居たのだと思って私は笑った。「君の様な素敵なお嬢さんのこんなに近くに居るだなんて、幸せな気分だよ」歯の浮くような台詞が妙に似合っている。だざいさんのいじわると私が耳まで赤くして云えば、彼は何時もの様に微笑んだ。

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「人のかたちをしているだけ」「おや、私が?」「そう、根本は化物か怪物。昔と何一つ変わってない」「背は伸びたよ」「死にたいくせに死ねない貴方、私が殺してあげましょう」「魅惑的な響きだなぁ。其の麗しい手で殺してくれるのかい?」殺させてもくれないくせに、うそつき。

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珈琲は子供と大人の境界線。砂糖入り、其のまま、飲めれば大人の仲間入り。そう思って毎日挑戦しては失敗する。「諦めないねえ」けらけらと笑いながら、噎せる私を見る。彼は包帯で隠した長い指で、カップの取っ手を取る。「可愛いのだから、子供ままでいたまえ」早く大人になりたいのに。

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やばいものには近づくなは此の都市の常識だ。人にしろ物にしろ、即刻逃げるが鉄則。例えどんなに幼い見た目をしている少年でも逃げなければならない。「お姉さん、其れは賢い選択だ」走る。息が切れて気持ち悪くなっても、靴が脱げて素足に成ろうとも。「ただし、私以外が相手ならね」

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いけないと分かっている。闇に自ら入ろうなんて、愚かなこと。其れでも私は歩みを止める事が出来ない。あの人を追いかけて、深みに嵌まって、堕ちていく。此処は闇の真ん中。「大丈夫、私がいるよ」君には私しかいないよ、と云われた気がした。闇の中に光なんてない。深い闇に堕ちるだけ。

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昔なんですけど政略結婚させられそうになったんですよ。父が危ない人で、年下の男と結婚しかけたんです。幹部とかで。怪我が多くて包帯してた?らしいんですけど。顔も知らないんですけどね。「其れ、私だね」は?「どうだい?もう政略的ではないけど結婚するかい?」はは、ご冗談を。

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「…桜桃」「そう」ふぅんと返す私に、彼は微笑む。一房取って口に放り込む。桜桃特有の甘みは少し苦手だ。「因みに桜桃の花言葉の其の一つはあなたに真実の心を捧げる…私の心を君に捧げようじゃないか」「…要らないわ」つれないねぇ、と云って笑う。貴方の心なんて此処にないくせに。

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記憶が消えていく。誰かと遊びに行った、仕事で誰かと話した、誰かに恋をした。もう全部覚えていない。ぽろぽろと消えていく。「こわい、わたしこわいんです」「うん、そうだね、そうだろう。大丈夫、私が必ず傍に居るよ」全部なくしてしまえば、怖くないよ。微笑んで言う貴方はだぁれ。

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菓子を食べる君の唇を、其のまま喰らってしまいたい。甘そうだ。紅色が砂糖で光っている。私の口の中に広がる甘さは、何の味だろうか。「あれ、食べないんですか?」「うん、私はお腹いっぱいかな」珈琲の苦味が口に広がる甘さを消していく。彼女を食べれば、また甘くなるだろうか。

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私が好きだと云ってるのに、一度も振り向いてくれないなんて!薄情な人だったなあ。其れは今でも変わらないんだろう?うん、私は君が好きだから何でも分かるんだよ。分かってしまうんだよ。「彼と仲良くしていてくれれば幸いだよ」皆天国には行けないだろうから、地獄で待っていておくれ。

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私にとって彼は神様なのだと思う。私の呟きに中島君は変な物でも食べたのかと云わんばかりの目を向ける。失敬な。私からしたら彼の体の無数の包帯も、癖っ毛も、声も、指先も、総てが崇拝対象だ。彼は存在が宗教なのだ。阿呆か貴様とか云わないでください。彼は私の神なのですから。

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今日は貴方が生まれた日なんですってね。きっとたくさん祝ってもらったでしょう。少し前まで祝うだなんてあり得なかったのだから。凄く嬉しそうで、私も幸せでした。優しい笑顔を浮かべて、マフィアだった頃の面影なんてないみたいでした。今日は貴方が亡くなった日なんですねってね。

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おめでとうなんて彼を現世に縛り付ける言葉だと思わないか。綺麗な言葉であると同時に非道な言葉だ。其れでも私は毎年彼に告げる。生きてほしい。其れは彼の親友だって思っていたこと。「毎度一辺倒で悪いけど、新しい包帯だ」飽きないねぇとけらけら笑う。今年も笑って過ごしてほしい。

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年末とてやることは変わらない。精々蕎麦を啜るだけだ。ちょっと高い海老天を蕎麦汁にひたしながら。国営放送から歌声が延々と流れる。「来年はウェディングドレスを着せてあげるよ」「は?」「いやいや、此方の話」気にしないでくれ給え。そう言ってそばを啜る彼をぽかんと見つめた。

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ダザイオサムはのろわれている!▼
男は呪われている。其の呪いは親友の恋人からのもの。寝取ろう等とは微塵も思わず、二人を心から祝福した。女は親友と共に死んだ。其れ以降男は呪われている。女と親友に言われた、お前は必ず生きなければならないという呪言が男を蝕んでいるのだ。

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あの人が女の人と歩いてるのを見た。数日後同じ光景を見た。別の人だった。また見た。自殺に女性を誘ってるとわかったのは暫くしてからだった。「私は誘ってくれないんですね」彼は私を見ずに云う。「私が君を死なせたいと思うのかい?」優しいんだか、優しくないんだか。

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靴底が取れて、何もないところで躓いて、傘を忘れて、定期を落として、電車に乗り遅れて。ついてない日はとことんついてない。満身創痍の私を見て、彼は笑いながら云った。「私に会うために全ての運を使ったんだねぇ、そう思うだろう?」思うけど思わないです。

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死ぬ前に君を愛せて、私は幸せだね。死ぬ前に出逢えた事も今生で一番の幸せだ。其の命を奪う瞬間も、其れを見届けたことも、其の時の手の感触も。全てが私の宝物に成って、そうして其れを持って逝く。なんとも幸せな事じゃないか。じゃあ、また来世で逢おうじゃないか。

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此の人何考えてるんだろう。敦は思う。目の前に対峙する女は隣の上司の様に包帯だらけで、曰く此の上司の妻だと云う。そして今上司も其れを肯定した。だがマフィアである。「いい加減離婚届を書け!阿呆!」「そうだなぁ、どうしようかなぁ」絶対殺す!と云う女。敦は心底同情した。

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此の男のくちづけは酷く女性的だ。其の白い細い指で私の顎を持ち上げて、緩やかに唇を合わせる。荒々しさや男らしさなんて皆無に等しいと感じる程だ。「こうしてくちづけをすれば、君と窒息死出来ると思うんだ」君と死ぬなら、優しい方が良い、と彼は云う。私もそう思う。

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前の首領に娘が居た事はあまり知られていない。よく寂しそうに微笑む人で、体が弱くて何時も床に臥せっていた。「私なんか、置いていきなさい」そう云って、彼女は笑った。憐れみによく似ていたかもしれないが、私は彼女を愛していたのだ。彼女は元気だろうかなんて、都合のいい話だ。

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正直に云って口五月蝿いあの同僚に此れ程までに感謝した事はないね!深夜の探偵社に二人きりだなんて彼も中々分かってるじゃないか。此れはもう、私が彼女を食べても良いって事じゃないか。「どうだい、此れから私と、」「口より手を動かしてくださいね」嗚呼、つれない所も素敵だね。

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彼女の誕生日に花束なんて如何ですか?なんと云う商売文句に、乗ってみた。乗ってみてから、私はこんな事をする柄でもないなぁと思った。案の定、彼女には怪訝な顔をされてしまった。「薔薇の数に意味があるそうだよ」苦し紛れの言葉でさえ、たどたどしくなってしまった気がする。

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死体の指先は冷たい。死者なのだから当たり前だ。それなのに、生者の彼の指先も酷く冷たい。「私の指先を弄んで、楽しいかい?」おちょくるように云う此の人は、本当に生きているのだろうか。至る所にある包帯の下の肌は、生者のものなのだろうか。ねぇ、貴方は生きているのですか?

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簡単に体を売るような女ではあるけれど、とある包帯の殿方が私に三万円を渡して、ベッドに押し倒すこともなく云ったの。「私は今三万円しか持っていない。けれど君の価値はちは三万円じゃどう考えても足らないんだ。だから、お喋りしようか」其の時私は初めて、女として扱われた気がするの。

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私、武装探偵社の下の喫茶店で働いているごく普通の女です。実は私、心の声が聞こえてしまう異能を持っているんです。でもまぁ基本、そんな能力いりません。普通の人相手でしたらどんなに卑猥な事でも無視しなきゃです。「良かったねぇ、私の心が読めなくて」「顔に出てますよ」煩い人。

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「心臓の音がする」太宰さんは時折私の胸に耳を当てる。初めこそ驚いてひっぱたいたものの、今ではすっかり慣れてしまった。「・・・生きて、いるんだね」「・・・生きてますよ」此の行為の意味は知らない。ただ、太宰さんは毎回悲しそうな顔をして笑うのだ。

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