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8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む

      □


 残されていたドゥロロが見たのは、おぞましい光景だった。


幸いにも、辺りは被害者が出るなどにはなっていないが、そういうことではない。そもそも、町の人を見るより前に、屋内での光景に、恐怖感を覚えていたのだから。


──ナリエが、自分に懇願する光景だ。
前にも、一度経験したはずなのに、どうして、今は、こんなにおぞましいものに感じるのだろうか。
情が移ったわけでも、ナリエが嫌いなわけでも、セイだけを、ただ守りたいわけでもない。


 単に、さっきまで息子と呼んでいた者を、手のひらを返したように、化け物扱いする光景が、怖い。彼女は、さっきから、動転しているままに、自分に何度も何度も、頼んでいた。
まるで、自分は悪くないと、聞かれてもいないのに主張されているみたいに。
やるべきことを、やろうとしたのだと、主張されても、それは、出来なかったと言われているみたいで、ドゥロロには、どうしても、悲しくなってしまうだけなのだが。


「……ほら、こうなるのよ。こうなる運命だったのよ! 理性なんてなくなって、人間と食い物に差を感じなくなるの。お願い、あの子を、殺して! すぐに!」

 いつの間にか外は阿鼻叫喚。さっきまでは、耳を隠しきれない彼に、町の大人がちょっかいをかけていたようだったが、ドゥロロはそのときは、さほど心配していなかった。


 こんな事態を、ドゥロロは予測出来なかったのだ。 大人たちが化け物と呼び、それに反応したかのように、瞬く間に、彼はその姿に変わってしまった。追いかけるよりも、ナリエが、部屋で動転しているのを見るの方が先で、そして、それをなだめずには、出て来られなかった。

 それから間もなくして、外で見たのは、まるで檻から抜け出した猛獣と、それを退治する人たちの光景。
──彼は、ただ、寂しいのだ。悔しくて、怖くて、不安で、どうしようもないはずだ。胸が痛い。


 今、ここで、自分が処分出来るのなら、英雄となることは容易いのだろう。
だけど、それが、なんだというんだ。8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む
8.痛みに慣れ、ぬくもりも痛む


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