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満月の下、獣が2匹

 うちはサスケと日向ヒナタ。同じ暗部小隊に属し、同じような名門一族の出身である2人だが、彼らはお互いどこか馬が合うのか、比較的一緒に居ることが多かった。日向ヒナタ愛好者だらけの第3小隊――通称“獣”――においては、彼らの仲を勝手に邪推した挙句、サスケに対して明確すぎる形で殺意を抱くような輩が現れるのも、ある意味必然だとも言える。

 そんなある日の真夜中。ヒナタと別れた後、すっかり静かになった木ノ葉通りを1人で散歩していたサスケの後ろに、気配を消して忍び寄る影。サスケはズボンのポケットに手を突っ込みながら、鬱陶しそうに振り返った。

「1日中ストーカーとは、ご苦労なことだな。キバ」
「へえ……? 気づいてて見せつけてくれたってことかよ、サスケ君?」

 背後に真っ黒なチャクラを渦巻かせつつ現れたのは、犬塚キバ。第3小隊の中でもとりわけ熱烈な、ヒナタ好きの代表格である。

「見せつけた? 何のことだ」
「……ケッ、ほんっとに白々しいなお前はよォ……!! あぁああっ、ムカつくっ!!」

 キバの言う“見せつける”の意味をこれ以上なく理解しているのに、あくまで知らない風を装うサスケ。そんな余裕ぶった男に対する止め処ない憎悪の念は、極悪なチャクラといった形状でキバの体外へ次々と流れ出ていった。まるで隠すつもりがないのだから、いずれ感知に優れた忍が大急ぎで止めに来ることだろう。だがそんな事情は、キバの知るところではない。

「いっつもいっつも、それが当たり前みてーな顔して、ヒナタの隣に居座りやがって……」

 普段なら強がって、あるいは格好つけて口にしないような本心も、今夜はお構いなしに打ち明かす。キバの双眸は飢えた狼のように、爛々と禍々しい光を放っていた。どうやら完全に戦闘モードらしい。
 木ノ葉の大きな戦力同士の、それも何とも下らない理由での喧嘩なんて、上層部に知れたら大変なことになる。しかしこの獣男にそんな頭ごなしの理屈は通用しない。そんなキバの滅多に見られない本気のオーラにも決して気圧されることなく、サスケはうっすらと写輪眼を開眼した。普遍的という言葉は間違っても適していないが、とにかく普遍的な、真紅のものである。

「……普通の写輪眼だと!? てめーどこまで余裕ぶってんだよコラァ!!」
「お前程度の相手に、蒼輪眼を使う必要はないからな」

 サスケははっきりそうだと解るように、キバのことを鼻で嘲笑った。キバの怒りのボルテージは最高潮に達した。我を失った獣のように、キバはサスケに向かって突進する――が、瞬時に背後に現れた何者かによって、キバの動きが止まった。

「――せっかく月の綺麗な夜なのに、どこかでうるさい馬鹿が吠えている。ああ、素敵な月夜が台無しだ」
「…………ヒナ、タ」

 少しばかり怒った表情を浮かべるヒナタは、次の瞬間には二人の間に割って入っていた。

「私と同じことを思った人は、沢山居るはずだと思った、から……面倒だったけど、止めに来た」
「違うんだヒナタ、こいつが……」
「どう考えてもてめーのせいだ、犬野郎」

 真っ先にサスケを指差すキバ、それに反発するサスケ。ヒナタは呆れたように小さく言った。

「子供じみたこと、しないで。お陰で私が、妙に大人びていると勘違いされてしまう。他人が常に自分のことを誤解している状態は……それなりに、辛いものがある」

 最後の方は、もはや苦情だ。これ以上話すべきことはないと判断したのか、ヒナタは2人の反論を聞こうとする素振りも見せず、姿を消した。

「……やーい、サスケ怒られてやんの」
「お前いったい何聞いてたんだ。てめーもだろーが」

 そういったものの、2人の口元は僅かに緩んでいた。彼らが溺愛してやまない少女の扱いの難しさを再認識したことにより、心のどこかで仲間意識が芽生えたのかもしれない。

 そんな獣たちの、一夜の出来事。



読んでくださってありがとうございました♪
本当このサイトはスレ含め、誰か→ヒナタ作品ばっかりだ。
片想いが報われるのはよっぽど難しいようで……(笑)


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