PRoject[←Main] 外部企画@mi sangre ■真田弦一郎 @01三昧 ■橘と切原 @0815 '10 サイト内企画10000jane-no! @home≫Request■シュウさま『銀と?』 ≫fRee enquiRy ■『切原と千石』 ■『?と千石』 Sanatan 2010 @home■千石 ■木手 □丸井ImpeRatoR 2009 anniveRsaRy @home≫Request■綴さま『白石と真田』 ■NTKさま『真田と切原』 ≫title Request ■『夢に果てる』真田と木手 ≫fRee enquiRy ■『仁王と真田』 ■『手塚と不二』 ■『真田と手塚』 | ――扉は、閉ざされていた。 就寝前に少し出来た時間をぬって、真田弦一郎はお目当てのフロアに訪れた。せめて覗くだけでもとガラス張りのドアへ近づいても、濃い緑のカバーがかかっていて残念ながら機器類さえ見られない。 けれどフローリングは薄暗い中でも美しい光沢を描いているから、きっと全て手入れが行き届いているはずだ。そう思えば、ここで過ごすこれからの生活が楽しみになった。 ―(入ってみたい、が) それにしても、元より滞在している高校生はさておき中学生は誰も下見になど来ないものだろうか。今この辺りには誰も居なかった。 筋力トレーニングが夜向かないことを知っていて、なおかつここが開いていないことまで推測しきっている――そんな輩が、『行っても無駄だぞ』と彼を引き留めたチームメイト以外にもたくさん居るのか。それとも自分たちの知らない情報があったのか。 「お、立海の真田君やないか」 そんなことを考えながらも鍵が開いていないかとドアに触れた時だった。声がしたのは、先ほど彼が通ってきた階段の上からだ。 視線をやると、手すりからちらりと見えたのは顔ではなく、肘まで包帯の巻かれた腕だった。それはするすると左へ流れて、やがて同じGの位置まで移動してくる。 「やっぱりや。真田弦一郎君」 そう言いながら現れたのは彼よりも少し小柄で、そしてだいぶ細身な少年だった。首を傾げる仕草で目にかかるほど長い前髪が、ふわりと揺れる。 「お前は、大阪四天宝寺だな」 「学校呼びかいな……つれんわぁ」 白石や、白石蔵ノ介。包帯巻きの左腕をひらりと振りながら、白石蔵ノ介はやたら愛想良さげに笑んだ。 その柔和な印象を見るに合わせて、真田は何故か軽く眉をひそめる。そのまるで『お前のような類の人間は好かんな』とでも言いたげな顔に、白石はやれやれと肩をすくめた。 「そんな気張らんでぇな。真田君」 ――うわぁ残念、開いてへんやん。どんなん揃ってるか一足先に見ときたかってんけどなぁ。あ、なぁあれってバタフライと違う? それでも調子は変えないで、白石は隣へやって来て、そのままガラス戸にべったりと貼り付き中を覗き込んだ。更に勝手に話し始める―しかも最後はしっかりと疑問文だった―ので、その様子を見ていた真田もとうとうつられて口を開いた。 「……そのようだな」 「お、あっちのはプレスっぽいな」 けれど答えは必要ではなかったのか彼の返事は軽く流されてしまい、それなら答えるんじゃなかった、と思った社交性の乏しい少年は唇をまたしても引き結ぶ。 「なーんや、おカタいんやな」 「……?」 そんな真田の様子を、白石も窺っていた。今度は自分を間近で覗き込まれたので、顔をさっと引いた真田は『何だ』とだけ返す。けれどお堅いと言われた原因も思いつかないし、その質問のベクトルはうまく向かなかった。 ――閉まっているんだ、一体他に何を話すことがある? 「プレイスタイル通りや、真田君」 またしてもへらりと笑われ、真田は馬鹿にされた気になる。 何度も呼ばれ続けている自分の名前が普段のアクセントと異なるのもなんだかむず痒かったし、話の流れと自慢のプレイスタイルもうまく関連付けられなかったのだ。 「俺は、真田だ」 「あ、そこ今更ツッコむんか」 「…………」 ひとつ息を吐いてからやっと言えたのがそんなことで、そしてそれも軽くあしらわれた。もし関西人とやらが皆いつもこんな調子なら、真田は西へは足を運ばないかもしれない。顔にそう書いてあるからだ。 ここへ人付き合いをするために通いたいわけではないけれど。下見に来るほどだ、目の前の彼もきっとここへはよく通うのだろうと至って思わずもう一度吐き出しそうになったため息は、それより先に大きなそれによって遮られた。 「すまん。悪ノリしすぎたな」 あかんわ、なんやテンション抑えられへんかった。その時、髪をくしゃりと掴みながらすっと姿勢を正した白石が、それでも柔らかい表情のままそう呟いた。 彼と目線がそんなに変わらないことをようやく知ることが出来たものの、その言葉の意味はやはり真田に分からない。 「好きなん、筋トレ?」 「……日課だからな」 本当に悪ノリだったのか、白石は先ほどとは比べ物にならない落ち着いた口調で話し始める。当初の勢いが緩くなったおかげなのか、真田もそれには素直に返せるようになってしまった。 それから、筋トレなど出来もしないのに未だトレーニングルームのドアにへばりついた二人は、お互いの部屋へ戻るまでぽつりぽつりと少しずつ会話を続けたのだった。これからよろしくな、という文句はどちらからか、いつあったのかも分からなかった。 「はよ開かへんかなぁ」 「今日は無理だろうな、白石」 「……しもた、録音しそこねた」 「何をだ?」 ――閉まっとんなら、頑張って開けてみよか、って思わへん? end PostscRipt→# ネクストドア |
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