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「……おい」




 窓際の席から放たれた言葉で、ホームルーム後の騒がしさもとたんに静まり返る。そんな教室に居た全員は間違いなく意識を向けたけれど、ほとんど誰もが応えなかった。ベクトル自体どこを向いているかわからない、正確には“恐くて応えられない”それを臆せず返せるのも、このクラスでは千石くらいだ。




「どうしたんだい。亜久津」


 彼が返事をするとわかって言ったのか、亜久津は声の主を見もせずに席を立って、梅雨空を隠した白い曇り窓を顎で差す。その動きを捉えた彼はとても良く日に焼けた髪を、かすかに揺らしてから歩き出した。

 近づいてもやはり視界は良くないので、左手で少しだけ結露を払う。


「…………」
「……うーん、」


 校門へと続く色とりどりの傘。その中にはひとつだけ、流れを塞き止めるかのように大きな黒が咲いていた。二人ともに覚えのある光景だ。










「違うのか」
「何で君が、先に気づいちゃうかなぁ」


 すでに、クラスメートの気配は散り散りに戻っていた。

 この亜久津も最初こそ興味を持ったが、今ではこの通りやる気のない物見役よろしく、呼びかけるだけにとどまっていた。そして千石にとっては、暴力沙汰など色々な面倒がなくなった反面、


「どうすんだ、博愛主義野郎」
「し、知らない。俺は知らないよ」


 本心を抉り出したがる彼の言葉がかえって“相手の肩を持ったのか”と疑いたくなるほどの公平さを発揮し始めたので、うっかり言葉に詰まらされたりもするわけだ。

 先ほどこすって出したガラス面は、再び水蒸気をまとい始める。代わってやりもしないくせに、覚悟だけを迫るような空気がなんだか疎ましくて、千石は亜久津から視線を逸らした。




―(……ああ、どうしよう、)




 その先に、今度は半分が欠けたあの黒い花びらがうっすらと、映るのだ。もちろん、眼の良い彼には持ち主までばっちり見えていた。

 ふたつの視線がかち合ったかはさておき、傾けられた黒い傘が大事に守っていたのがこれまた黒い帽子だったから。とりあえずあれくらいはツッコミ入れてあげなきゃいけないんじゃないの、と彼はカバンを掴んだ亜久津より早く教室を飛び出した。




end
※さなたん2010


レイニー


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