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2013.09.30.Monday
放課後の教室で、雨粒が窓にぶつかる音をぼんやり聞きながら帰り支度をしていた八代は、隣の席に誰かが座る気配を感じて視線を上げた。
「珍しいね、八代君が帰るの遅いなんて」
「……雨降ってるし、濡れたくないなと思って。止むの待ってたんだけど無駄みたいだ」
「そっか。なんかね、夜まで降るらしいよ」
「そうなんだ」
PM3:35 西京にて
2013.06.10.Monday
腐った果実の匂いがする。
足元でびちゃりと音がして、彼は視線を落とした。
背の高い建物に挟まれた路地は、数日前の雨でぬかるんでいる。通学用の革靴に泥が跳ねるのも気にせず、制服姿の青年は薄暗い路地へその身を滑り込ませた。
この一帯は治安の悪さと異様な外見から、地元では有名な場所である。内部の構造は迷路のように複雑で、迂闊に入れば迷いかねないが青年は躊躇いも無く進んでいく。
ばさりと。
不意に頭上から音がして、彼は振り仰いだ。その左目は眼帯に覆われ、反対の右の瞳は葡萄色をしていた。それが、蜘蛛の巣のように張られた洗濯紐と、はためく布の合間から細切れになった青空を捉えて、そっと細められた。
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