PM3:35 西京にて
2013.06.10.Monday
腐った果実の匂いがする。
足元でびちゃりと音がして、彼は視線を落とした。
背の高い建物に挟まれた路地は、数日前の雨でぬかるんでいる。通学用の革靴に泥が跳ねるのも気にせず、制服姿の青年は薄暗い路地へその身を滑り込ませた。
この一帯は治安の悪さと異様な外見から、地元では有名な場所である。内部の構造は迷路のように複雑で、迂闊に入れば迷いかねないが青年は躊躇いも無く進んでいく。
ばさりと。
不意に頭上から音がして、彼は振り仰いだ。その左目は眼帯に覆われ、反対の右の瞳は葡萄色をしていた。それが、蜘蛛の巣のように張られた洗濯紐と、はためく布の合間から細切れになった青空を捉えて、そっと細められた。
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00:18