* 小話・剣八
満月が夜空を飾る。
それがよく見える座敷で、お酒の肴にして飲んでいた2人だが、何時しか1人だけ本を読み耽って話しかけても相槌しか返さないし、自分より夢中になっていることが面白くない。
「……何、見てンだ」
「商品目録」
「アン?」
「ハロウィンの衣装のな」
ハロウィン・という単語に剣八の頭の中で去年の記憶が走馬灯のように駆け巡る。
「……燈華」
「何だ?」
「ヤんのか?」
「いや、莉杏姉さんに渡されただけだ。――今年は……静かに過ごしたい」
燈華も去年のことを思い出してか、遠い目をして言う姿に呆れ返った。
「それは、俺のセリフだ。好き勝手ヤリやがって……!」
「なっ!剣八だって、好き勝手したじゃないかっ」
「当り前ェだ。慰謝料、貰って何が悪い」
「――だ、だからって、あんな……」
段々と歯切れ悪くなり、最後には頬を染めて剣八を睨みつけた。
「煽ってンなら、乗ってやるぜ?」
「う、わっ――」
天井が目に入ったかと思うと、その手前には剣八の姿。
「……押し倒すのが好きだな、剣八は」
「お前だからな」
「やれやれ……」
燈華は溜息をつく。
「――静かに過ごすなら、ソレは、もう見なくていいんだろう?」
「ああ」
「なら、今から俺を見とけ」
瞬いて、剣八を見つめた。
いい年した大人がするような顔じゃないことに目を見張る。
「――ぷっ!剣八ぃー。商品目録に妬いたのか?」
剣八の下で足をバタつかせて笑いを噛み殺していたが、我慢出来なくなって声を出して笑い始めた。
「あははっ!!本当、私が好きだな。剣八は」
「……笑っていられンのも今の……」
「ああーっ!!つるりん、ちかちか、見てっ!剣ちゃんがくーちゃんイジメてるっ!!」
「あ゙ぁ゙?」
2人が聞き覚えがある声がする方を見れば、塀の上から顔を覗かせている桃色頭。
「邪魔してんじゃねェよ、ドチビ!!」
「僕達を殺す気ですか!?」
それと、他2つ。
「くーちゃん、今、助けるからねっ」
「待てコラァ!」
「失礼しましたっ!」
突然、現れた3人は嵐のように剣八達の前から消え去っていった。
残されたのは、静けさの中の鈴虫の鳴き声のみ。
「――ククッ」
「――あはは」
同時に笑い声を上げた2人の声は収まることなく、暫く続いた。
END
* マルコとセルリアでおまけのおまけ
※会話文多め
1人1箱持って部屋から出てくる光景に首を捻り、すれ違った1番隊クルーに声をかけた。
「何してるの?」
「お前が、前に使ってた部屋あっただろう」
「うん」
「そこ、モーブが使うんだとよ」
「モーブ、お泊まりっ!?」
「あぁ。だから片づけてんだ。セルリアも手伝ってくれ」
「いいよっ。私、お手伝い……」
途中まで言いかけて辞めたセルリアの顔を覗くと、ばつの悪そうな顔をしている。
今度は、クルーが首を傾げた。
「どうした?」
「……この前、マルコに買ってきてあげて、棄てろ・って言われたムチとかいっぱい隠してたんだ」
「…………」
「早く、隠さなきゃ怒られちゃう!」
***
「……隊長」
「……あぁ」
「リスみたいに溜め込んでますよ……」
「全くだよい」
マルコが部屋のドアを開けると、知らぬ間に物置小屋になっていた部屋。
自分の部屋に持っていけ・と隊長命令を出して15分。棄てろ・って言ったはずの物に辟易する。
「ごめんっ。通して!マルコにバレ、る……」
「――おれに、何だって?ん?」
持ち主の到着に、極めて優しく声をかける。
「マルコ!どうして、こここにいるのっ!?」
“こ”が1個多いくらいには慌ててるんだな・と思いつつ、獲物を確保するべく間合いを詰める。
「隊長のおれがいて、何が悪い?」
「そ、そんなこと言ってないよ!」
「そうかい――なら、コレの言い訳を聞こうか。セルリア」
「――っ!!」
「……部屋でじっくりな」
名前を呼ばれた瞬間、蒼白になったセルリアを担ぎ上げて部屋を出て行く。
残されて呆然としていると、荷物を取りに来たクルーが呆れながら尋ねた。
「何だ、ありゃァ?」
「この前、あっただろ。サッチ隊長が言った『アメとムチ』をセルリアがそのまま捉えたこと」
「あぁ。思い出した!んで、サッチ隊長にアメやって、マルコ隊長にムチやったんだよなァ」
その時のことを思い出して笑い声をあげると、それは、部屋中に広がっていった。
END.
* ハロウィン小話・エース
会話文多め
「トリックオアトリート!」
「はい?」
「お菓子くれなきゃ悪戯するぞ」
「今日って31日だったわね……」
すっかり忘れていたわ、と呟けば目の前のエースは、ショボーン、としょげた。
夕食をとりに部屋を出れば、ばったりとエースに会った。昼出歩いた時にはなかった可愛い飾りが天下の白ひげ海賊団の船を彩っているではないか。
そして、白ひげ海賊団2番隊隊長火拳のエースの肩書きは何処へやら。
「可愛い子犬ちゃん。がっかりしないで」
「……可愛い子犬ちゃんじゃねェ。狼だ」
ピョコン、と頭に乗っかった耳に、尻尾もつけて。手と足には犬猫を催した手袋と靴を履いていた。
「格好いいわね、狼(何よ、この愛らしさ。反則じゃない!)」
「だろっ!モーブは着替えないのか?」
「ええ。持ってないもの」
「なら借りてくっか!」
「はい?」
■■■
「ジブリール!モーブに衣装頼む」
「どんなの?」
「似合いヤツ!」
「――じゃあコレ」
「……なぜ?」
「女王様か?」
「狼を調教する女王様なんてどうかな?」
「…………(こう見られてるのかしら)」
「……可愛いヤツにしてくれ」
「――じゃあコレ」
「……はい?」
「おおっ!いいんじゃねェか!!」
「仲良し狼と兎なんてどうかな?」
出されたのは兎の耳と尻尾。それと手足を催した手袋と靴。
トリックオアトリート!
「モーブ可愛い!!(喰いてェ喰いてェ喰いてェ!!)」
「どこがよっ!!」
「サッチー!写真頼むー!!」
「嫌よ!写真なん……」
「ほら、笑え!おふたりさん」
これもまた平和な感じで(笑)
ほのぼのが一番。
でも、女王様似合いそう(笑)
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* ハロウィン小話・シャンクス
会話文多め
「……何だァ?このカボチャづくしは?」
「今日はハロウィンですよ、シャンクス」
今日は、10月31日。
確かにハロウィンだ。
何時ものように宴をしているとシャンクス達の目の前に、大皿に盛られたカボチャの山に否応なしに認識させられる。
「これ何だ?」
「カボチャお化けの姿煮です」
「……ベン」
「振るな、お頭」
「美味しいですよ。召し上がれっ」
美味しい・と言われても。
召し上がれ・と言われても。
飾りを施されたカボチャが味付けされながらも睨み付けているではないか。
シャンクス並びに以下クルーは、このカボチャ料理に戸惑うが、船医とコック達は栄養を考えると、毎日の肉とお酒をメインに食べている奴らにはちょうどいいと考える。
「(……鷹の目。お前、これ食ってたのか?)ウチのハロウィンはちょっと違うんだぞ」
「シャンクスのところのハロウィンはどんな感じ何ですか?」
「知りたいか、ロゼ?(来年は鷹の目も呼ぼう)」
「是非っ」
「よっ、と」
「きゃっ!」
腕を引っ張られて。
気が付けば胡座をかいている中心に、ちょこん、と座っていた。そして、腰にはシャンクスの腕が巻き付いている。
「可愛い可愛い女の子を膝の上に置いてな、ご飯を食べさせて貰うんだよ」
「まさか!?」
「その、まさか何だよなァー」
「…………(アンタって人は……)」
「…………(世間知らずで良かったな、お頭)」
「…………(何やってんだ、コノヤロー)」
トリックオアトリート!
「今日が終わる前に菓子くれねェと、一緒に寝る羽目になるぞ(……やっぱ鷹の目呼ぶのは無しだ)」
「そんなバカなっ?!」
「ロゼの寝顔、楽しみだなッ!」
「神様っ!!違った!!コックさーんっ!!!!」
まぁ、平和な感じで(笑)
次の日、二日酔いじゃなくて胸焼けに悩まされ…。
本編頑張りまーす!
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* ハロウィン小話・日番谷
会話文多め
――10月30日
ハロウィン前日
「今年は何着るんだ?」
「何がです?」
「ハロウィン」
「きっ、着るわけないじゃないですか!!」
「そうか(着るんだな、何か……)」
冬獅郎の所へ茶葉の配達に来てみれば、今から休憩にするから・と誘われて、冬獅郎の休憩に便乗した。一緒にお茶を飲んでいると、明日のハロウィンの話題になったが、思い出すのは『入浴未遂事件』と流々が銘打った出来事が走馬灯のように甦る。
お陰で、変な汗が出てくるばかりだ。
「今年は十番隊が仕切ることになって、人手が足りねェ。協力してくれるヤツ探してたんだが……」
「私で良ければ、お手伝いさせてください」
「着ないんだろう」
「えっ?」
「着るのが義務なんだよ、仕切るからな」
「なら、着ていきますっ」
「いいのか?」
「はいっ!」
「悪ィな(……何を着て来んのか、楽しみだな)」
――10月31日
ハロウィン当日
「日番谷隊長様」
「オウ、来たか。妖精」
白をベースにした、ふわっふわっ、な服に身を包んで現れた流々は、背中に何かを背負っていた。
「……羽、か?」
「はいっ。今年も動くんです、ほら!」
蝶のように頼りなさげに羽ばたく様子に守ってやりたくなってしまう。
やはり、良かった。
運営拠点の奥、隊首室にいるから必要になったら呼べ・と部下達に言っといて。この姿は見せたくない。
「何をお手伝いすれば宜しいでしょうか?」
「そうだな。とりあえず……」
トリックオアトリート!
「えっ!?不意打ちぃっ!!」
「吸血鬼のオレを祓う菓子がねーとイタズラだぞ」
「血でご勘弁をっ!!」
「……血より、お前を喰わせろ」
時間がなかったのでこんな感じで雰囲気だけでも。剣ちゃんもシロちゃんも揃って隊首室で何を(苦笑)
妹sよ。
店はどうしたよ(笑)
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