やはり初めに感付いたのは俺で、…しかし少女も同時に新たな敵に身構えた。どうやら見かけにそぐわず、俺と同等かそれに近く勘が鋭いらしい。

まだ彼方は片付いていなかった為、自然と二人で対峙する格好になる。少女の戦闘スタイルなど知らなかったが、訊いた所で合わせられる自信など欠片も無かったので勝手にやる事にした。この程度なら一人で対処出来るという確信もあったからだ。

間髪入れず幾度となく斬り付け、生暖かい体液を浴びる。──何を考えているのか、構えを取っているはずの少女は俺が好き放題やっている間、全く攻撃を仕掛けなかった。出る必要がないと感じているのか…それとも彼方の加勢に行ったのか?

反撃を避けるため飛びずさった時、横目で後ろを盗み見る。……少女は一見すれば装飾用か儀礼用にも見える、しかし明らかに実戦用の細い剣を真っ直ぐ構えていた。まるで…置かれた人形の様に。

だが少女が動いたのは当にその時だった。

小さな身体を生かして上手く魔法を躱し、素早く敵の懐へ飛び込む。右の長剣で一度突いて敵が怯んだ隙に狙いを定めると、急所がまるで見えているかの様に迷いなく、左手の短剣を突き刺した。

断末摩すら上げずに魔物が力尽きる。──一撃か。

だいぶダメージを与えたのが自分だという自覚はあるが、それでも短剣のたった一突きで仕留められるとは思わなかった。人は見掛けによらないとはよく言う……あんな格好をしているが、彼女の闘い方は例えるなら暗殺者(アサシン)のそれだろう。実体を保てなくなった魔物が跡形もなく霧散して行く。

彼方もほぼ同時に片付いたらしく、ジタンに呼ばれて少女は駆けて行った。──手招きされているのが見えたが行く気にはならなかったので無視する。

やがてあのノロノロとした歩みが再開された。今度はジタンを先頭に、少女と王女でガキを挟む様にして隊列を組んでいる。…時折ジタンが振り向いたが、一体何のつもりだろうか。監視にしては甘いものだ。

その後、何度か戦闘があったがどれも大したことはなく、わかったのはあいつらの個々の能力は悪くないのに詰めが甘いということ位だった。ガキ二人の魔法は不安定だが威力が高い。意外なことに召喚士だった王女の術も強力だし、少女は通常攻撃こそ威力が見込めないものの先程の様な場面では急所を確実に捉える。だが、年齢層が異常に低いせいなのか戦術から作戦まで至るところが未熟なのだ。無駄な動きだらけで戦闘のテンポも遅く、喰らう必要ない攻撃を喰らう羽目になったり雑魚一匹に異様に時間を掛けたり……やはり子供のお遊びにしか見えない点も多い。

特に顕著なのは体力のなさだった。ジタンは流石に別だが、女子供らは見た目通り打たれ弱いのだ。取分け少女は剣士でありながら後衛という有り様だ……もしかするとガキ共より脆弱なんじゃないだろうか。たまに咳き込んでいるしまさか病気持ちか?

「…サラマンダー!」

そういえばその名を教えたんだったか…とぼんやり考えながら顔を上げる。するとこんな樹の上だというのに開けた場所からジタンが呑気な顔で手を振っていた。

「飯にしよーぜー!」

もうそんな時間なのか。……感じていたよりも更に歩みは遅かったらしい。空を見上げれば太陽は中天を過ぎていた。

いそいそと袋を漁り始めるジタンを横目に、少し離れた場所に生えていた中木の木陰に陣取る。本当に似合わない場所にいるものだと、改めて溜め息が漏れた。

「さ、これおまえの分な。…足りないか?」



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