日頃の寝不足が祟り眠くて仕方なかった俺は、来て早々これでは悪いとは思いつつもあいつを一階(した)にひとりきりにしてベッドに入った。起きたら存分に構ってやろうと思いつつ瞼を閉じる。

しばらくして目が覚め、どれくらい寝ていたかと確認するとまだ然程経っていなかった。あいつを放置した事が気になって眠れなかったのかとも考えたが…あの瞼が重い感じは解消されていたので下りる事にする。

「………。」

あいつはいま何をしているのだろうかと考えながら階段を下りきった俺は──真っ先に目に入った状況に思わず固まってしまった。

「………何やってんだ?」

「きゃあっ!」

大きく肩を跳ねさせて高い声を上げる少女。背を向けた状態から一瞬振り向き、何故か慌てて逃げようとして思い切りすっ転ぶ。

「…おい…!」

駆け寄って助け起こした少女は、文字通り[手も足も出ない]状態だった。何故なら──俺のコートを着ていたからだ。

「………っ!」

あっという間に真っ赤になる少女。袖から出ない掌で顔を覆う。

「……一体何やってんだ?」

「な…な…なんでもありません…!」

その状態でなんでもないも何もないだろうと言いたいところだが、少女は赤面したままそれきり何も言わなくなってしまった。はっきり言って…扱いに困る。

「………。」

「きゃっ!」

脇の下に手を入れ少女の身体を持ち上げると、先ほどこけたのは裾を踏んづけたせいなのだろうとよくわかった。俺が着ると丈はちょうど合うはずのコートから、彼女の足は出ないのだ。袖も8インチ(約20センチ)は余っているし肩の線も上腕部まで落ちている。

「…ぶかぶかだな。」

「はっ、…はい…。」

俺としては確かめるために持ち上げただけなのだが…少女にとってはそうでもなかったらしい。先ほどより更に紅潮した彼女の頬は、もはや熟れた果実の様だ。

「………。」

その様子を見て、得体の知れない──少し苦しい程に暖かな感情を覚えて抱き締める。折れそうに細い身体…これじゃ丈も余る訳だな。

「サ…サラマンダー様…?」

「何だ?」

「…い、いえ…。…重くないですか?」

「おまえ俺を誰だと思ってんだよ。」

今まで何度も抱き上げさせといて今さら重いも何もねえだろ…つーかこんな程度で重いとかどれだけ軟弱なんだ。──そう含んで告げれば、やがて少女はそっと首に腕を回して抱き着いてきた。背中の辺りで袖の余りがぱたりと音を立てる。

「……あったかい……。」

「あ?……そりゃ、家ん中でコートなんざ着てりゃあな。」

「…そうじゃないです……くっついてると、あったかい…。」

「………。」

甘えるように首筋に擦り寄ってくる少女。なんだおまえは…ガキか?

「……あったかい。」



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