ひまです。
今日は彼が来ていますが、来てすぐに寝室へ行ってしまいました。いつもは眠そうでも一応は構ってくれるから、きっとすごく疲れているのだと思います。
ひとりっきりで、とっても暇です。
ご飯の仕込みもお洗濯もしてしまったし、彼を起こしたらいけないのでお掃除とか術や歌の練習はできません。困ったことに持っている本はみんな読んでしまったし、お裁縫をしようにも材料を切らしてしまっています。
…暇です!
いっそのこと私も寝てしまおうかとも思いましたが、全く眠れそうにありません。暇をもて余すなんていけないことだと思いますが、暇なものは暇です。
(…あ…。)
なんにもすることが思い付かなくて、だらんとソファに寝っ転がった時…あるものが目に入りました。
彼の、外套です。
不思議なこともあるもので、ソファの一角に無造作に放られていたことに今まで気づかなかったみたいです。大変です、このままではシワになってしまいます!
「………。」
急いで起き上がって彼の外套を手に取った私は──その場で固まってしまいました。なぜって、いっぱい驚くことがあったからです…!
まず、床に裾がつきました。
両肩の辺りを持って、万歳するみたいに持ち上げているのにです!寒くないようにか丈が長い造りだというせいもあるのかもしれませんが、もしかしたら私の身長より長いかもしれません。
そして、腕が広がっています。
両肩を持っているはずなのに、どうして腕がこんなに開くんでしょう!確かに持ち主が彼なのだから、あの体躯に見合うだけの肩幅があるのは当然なのですが…思っていたよりとても大きいです。
「………。」
…ほんの…ほんのちょっと…ほんのちょっとした、好奇心のようないたずら心のようなものが心をくすぐります。
しばらく悩んだ末、私は思い切って実行してみることにしたのでした。
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