悪魔のささやきを行動に移してみたまさにその時に彼が降りてきた時は、心臓が破裂してしまうかと思いました。

「………何やってんだ?」

「きゃあっ!」

急に声をかけられてすごく驚きます。振り返って彼の姿を見た瞬間とんでもなく恥ずかしくなって反射的に逃げようとしたら、裾を踏んづけて思いっきり転んでしまいました。彼があきれたようなため息を吐きながら助けてくれます。…どうしましょう…まともに顔が見られません!

「………っ!」

恥ずかしくて恥ずかしくて顔を手で覆うと、嗅ぎなれた煙草の香りが…いいえ、彼の匂いがしました。ふわりと立ち上って私を包みます。

「……一体何やってんだ?」

「な…な…なんでもありません…!」

正直に話すことなどできそうもなくて、ごまかそうとしてみるけれどうまくいきません。まさか、どのくらいおおきいのか、気になったなんて…着て、みたかったなんて…。

「………。」

「きゃっ!」

急に脇の下に手を入れられて、軽々と身体が持ち上がります。い、一体なにを考えてらっしゃるんでしょう…!私は高い高いされるような子どもじゃないんですよ…!?

「…ぶかぶかだな。」

「はっ、…はい…。」

たしかに私の手は袖から出ないし足は裾から出ないしぶかぶかです。です、けど…お願いですおろして下さい恥ずかしいんです…!

そう思っていたら、なぜか彼は私をおろすどころかいきなり抱きしめました!…ほ、ほんとにもう何なんですか…!

「サ…サラマンダー様…?」

「何だ?」

「…い、いえ…。…重くないですか?」

「おまえ俺を誰だと思ってんだよ。」

こうしてふれあうのはすごく幸せだけどこのままだと心臓がもちそうにないので暗に「おろして欲しい」と言おうとしましたが、簡単に失敗してしまいました。あ、あなたが力持ちとかそういう問題じゃないんです…!

「………。」

もうどうにもならなくて、ほてった頬を鎮めたくて、彼の肩に顔をうずめます。

「……あったかい……。」

「あ?……そりゃ、家ん中でコートなんざ着てりゃあな。」

「…そうじゃないです……くっついてると、あったかい…。」

「………。」

もっと彼の温もりを感じたくて首筋にほおずりすると、彼が困ったように小さく笑ったのがわかりました。…さんざん困らせてくれたんだから、このくらいのわがままはゆるされても良いと思います。

「……あったかい。」

だいすきなだいすきな人。

その匂いが染みついた外套に包まれて、がっしりとした腕に抱きしめられて。

こころが、すごくあったかいです。

「…サラマンダー様。」

「……何だ。」

「………あなたが、だいすきです。」

彼はまた、ちいさく笑いました。




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