ハリポタ 僕らの時代 | ナノ
●(最終話)
崩れるリドルの身体を抱く。
強制的に眠りの世界へ誘われたリドルは、眠る前に何を思ったのだろうか。
魔法を掛ける時に直視出来なかったリドルの顔。
きっと驚きと不安。それから怒り。
そんな感情が交ざった表情だったのだろう。
でも、こうするしかなかった。
リドルは勘が良いから、今から僕がする事に感付いて、後を付けてくるかもしれない。
そうなっては僕の計画は総崩れだ。
抱き上げて、部屋へと連れてゆく。
『そんなにこの者を巻き込むのが嫌か』
サラザールが問うてくる。
当たり前だ。
リドルにはリドルの生き方がある。
僕の問題に巻き込んで苦しめるなんて冗談じゃない。
僕の部屋に入る。
リドルをベッドに寝かせて、左手に持った杖をリドルに向ける。
「プロテゴ・ホリビリス」
盾の呪文なんて、気休めにもならないかもしれない。
けれどお願いだ、リドルを護ってくれ。
額にかかった前髪を梳く。
完全に眠りの世界にいるのだろう、リドルは目覚める気配もない。
それで良い。
「良い年を迎えてね」
サラザールが嗤う。
自分が居る限り、末裔のリドルに安らぎはないとでも言いたいのだろうか。
透明マントと杖、それからサバイバルナイフと残り少ないポリジュースを持つ。
ポリジュースとサバイバルナイフはポケットに入れた。
透明マントを羽織って部屋を出て、談話室へと向かう。
近付くにつれて談笑が耳に入ってきた。
新年を幸せな気持ちで迎えるのだろう。
彼等が望む新年がサラザールによって闇に染められて良い筈が無い。
だから僕はサラザールに勝たなくてはいけない。
サラザールに負ければ、サラザールは僕という枷も無くなって本当の自由を得る。
サラザールが好き勝手するなんて冗談ではない。
しかもサラザールが僕の身体を乗っ取ったら、僕の地位を利用するはずだ。
そんなの、許さない。
談笑する人達の間を抜けて、寮を出る。
向かう先は昨日明らかになった秘密の部屋のある場所だ。
冷え込む廊下を歩く。
静まり返った通路に僕の足音は反響して、絵画の中に居る人達は姿無い足音に騒めいていた。
階段を上って、マートルを殺した場所へ辿り着く。
静まり返った夜の水場。
それだけでも不気味なのに、ここで人を殺したのだと思えば胃の中の物を吐きそうだよ。
彼女も、死にたくなかっただろう。
最後に見た彼女の表情は驚愕だった。
それはそうだ、まさか安全と謳われるホグワーツ魔法学校で殺されるなんて思いもしなかっただろう。
頭を振る。
罪悪感に時間を費やす暇はない。
透明マントとセーターを脱いで、壁の方へ放る。
洗面台の、蛇の形をした蛇口の前に立つ。
瞼を閉じて、蛇を思い浮べる。
瞼裏に浮かんだ蛇はこちらを向いて、チロリと舌を見せた。
あ け ろ
口を動かして言葉を紡げば、昨日同様、ガコンという音。
秘密の部屋の扉が開かれる。
「さよならだよ、サラザール」
『どうやって私と別れるつもりだ』
「こうするんだよ」
右腕を秘密の部屋へ繋がるのだろう洞穴の上に突き出す。
腕の根元、脇の下に杖をあてた。
「君の巣がこの腕なら、この腕を惜しみなく君にあげる」
『腕を切り落とすと?正気か?』
「正気だよ。サラザール、君へのせめてものプレゼントだ。これと共に地下で眠ってくれ」
サラザールは待て、と言った。
敵に待てと言われて素直に待つ奴なんていない。
この腕が居場所のサラザール。
ならば、居場所ごと埋葬してしまえば良い。
この腕が永久に地上に現われないようにしてしまえば良い。
そうすれば、サラザールも地上には現われないのだから。
僕は息を吸った。
「エクスパルソ(爆破せよ)」
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「……」
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