はしれ、今剣








さいきん、あるじさまがおかしいのです。


あるじさまのおへやを、だれもはいれないようにしてしめきってしまって、あうことができません。おとものこんのすけにきいても、いまはあえないというばかり。

あわたぐちのみんなと、さよと、らいはのふたりと。
たくさんたくさん、おやさいをしゅうかくしても、おいしくなる“まほうのて”の、ごはんはつくってもらえないのです。ほかほかのにくじゃがも。かれーらいすも、はんばーぐも、もうとてもながいことたべていないようなきがします。


おはなをつみました。あるじさまのつくったかだんのおはなではありません。おやまの、かわいらしいちいさなおはなです。
たくさんあめがふっているので、おやまのはなならつよいとおもったのです。なまえがわからないしろいちいさなおはなを、
たくさんたくさんつんで、あかいひもをむすんで、はなたばにして、おへやのまえにおきました。

でも、いくにちもいくにちも、それはつみかさなっていくばかり。



『あら、すごく綺麗ですね。

え…私のために…?
今剣さん、とってもとっても嬉しいです。ありがとうございます。』


そういって、やわらかいてであたまをなでてもくれない。だきしめてもらえない。
それが、とてもとてもさびしいのです。


ぼたぼたとぬれたふくからすいてきがおちます。
ないているのではありません。あめがつよいから。


だきしめてもらうと、あたたかなにおいがするあるじさま。
やわらかくて、やさしい。ぼくは、それがだいすきです。

こんのすけをといつめるはせべや、いちごをまいにちのようにみかけます。

かしゅうだって、すごくすごくさびしそう。
たろうたちやじろうたちだって、さもんじだって、おなじです。
こぎつねやみかづきも、あめがつよくふっているのに、えんがわにすわり、そこから、あるじのへやをまいにちみつめています。

いわとおしにおねがいしました。
あるじさまのおへやに、いっしょにいきましょうと。

いわとおしは、さびしそうなかおでわらいました。


「主は今、きっと戦っている。我等に出来ることはこうして待つ事。それが我らの信頼の証ではないか?今剣よ。
そりゃあ主の飯は喰いたいが、主には、ただ、笑っていて欲しいが、このまま我らだけで楽な思いをしていればこんな悲しみをこれ以上背負わなくていいが、

それと同じくこの本丸を救って欲しい。
それが、主の役割である事を救ってもらった我等は忘れてはならんと、俺は思う。
なあ、今剣よ。」


あたまにおかれたては、あまりにもちがかよっていなくてつめたくて。
ぼくは、それがたまらなくて、たまらなくて。


はしりました。
いしきりまるのへやへ。
はしって。はしって。はしって。



「ーいしきりまるっ!!あるじさまを、たすけてください!!」



勿論、そのつもりだよ。
少しだけ手伝ってくれるかい?



いしきりまるは、いつものようにめをやさしくほそめてそういいました。
あるじさまをひざにのせながら。






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