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  なまぬるい


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皆さんと久しぶりに朝ごはんを食べて、少し食休みをしたあとは今日の当番の割り振りである。

基本的にはローテーションを組んでいるけれど、今回から太郎太刀さんと次郎太刀さんもお手伝いをしてくださるとのことなので、お言葉に甘える事にした。

梅雨なので、畑の水捌けはだいぶ悪い。
それでも次の日には野菜が出来ているのがこの本丸の謎であり、力の凄さだ。

粟田口の皆さんか作った畑は最近ではかなりの大きさになりつつあり、今日スナップえんどうやきゅうり、なす、つる紫の収穫が出来ると喜んでいらっしゃった。種を植えれば次の日にはもう実がなる。時間の流れ、それすらも畑には関係無いので我が本丸としては助かる。
そんな6月の旬の野菜が収穫できるものが多い今日。ほとんどの皆さんには収穫をお願いして、少ない人員であとの当番を回す事にした。

粟田口の皆さん、左文字の皆さん、それに堀川さんと和泉守さん、岩融さんと今剣さんは収穫部隊。
和泉守さんはもうすっかり力持ちポジションになっていて、岩融さんと並んで収穫の時は大活躍である。

太郎太刀さんと次郎太刀さん、長谷部さんはお馬さんのお世話。
長谷部さんはなんだかんだでやはりお世話好きで、人になにかを教えるのは凄く得意みたいだ。

その他の皆さんはお部屋の掃除やお風呂の掃除をお願いした。愛染さんは明石さんのお尻をたたき、蛍丸さんはそれでも動かない明石さんを引きずって掃除に連れ出していた。…いいのかな?
小狐丸さんと三日月さんには、お座布団に座ってお茶を飲んでいただいている。美味しいお揚げスナックを作ったのだ。


雨なのでカッパをお渡ししたら、皆さんなんだかすごく嬉しそうに笑った。めんどくさい作業でしょうに、とてもありがたい。

わたしはというと、割り振りをした後に後片付けをすべくまた厨にやってきていた。

加州さんと大和守さんに運ぶのを手伝って頂いて、かなり時間を短縮できそうである。
お皿や湯飲み、まな板や調理器具を洗って、消毒して、拭いて。意外とこの単純な作業もやってみると無心になれて楽しい。

最後お皿を拭く。とんとん、と肩を叩かれた。


「あーるじ、これで最後?」


ひょっこりと背中から顔を出したのは加州さんだ。相変わらずお顔が良い。


「はい、加州さん。お手伝いありがとうございました」

「いやいやいや…お礼を言うのはこっち。
病み上がりなのにありがとね。あとは俺た ちでやるからさ、主は少し部屋で休みなよ」
「あら、そんなにヤワじゃないんですよ?」

「あ る じ」

「…お言葉に、甘えます。」


妙な圧を感じる。
後ろで大和守さんは苦笑いをしていた。
お皿を拭き終わって、食器棚に閉まって、割烹着を脱ぐ。今家事をすれば、きっとまた怒られてしまう。
大人しく、部屋で事務作業でもするとしようか。



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最近寝てばかりだけど、実はご飯を食べた後からどうにも眠気が治らなかった。
加州さんは流石だ。その辺はよく見ていらっしゃる。少しだけゆっくりさせてもらえるのなら、すごく助かる。

あの一件以降、私の部屋に居座るベッドに乗り、薄手の毛布を足にかける。ベッドに備え付けられた机に、報告書を書くためのパソコンを置いて仕事だ。
皆さんが頑張っているのに私が何もしないわけにはいかない。刀装作りのノルマだってあるのに。



そんなことを考えていたら、


音もなく、その人は現れた。



「こんにちは」


いつから窓は空いていたのだろう。
霧のような雨とともに、生温い風と共に、その眼帯の神様は現れた。

右目には眼帯。黒い表地に燕尾部分の裏地の華やかな赤い模様が印象的な燕尾服。
右目側にかかるその長い前髪が濡れて揺れる。
目の色が綺麗だと思った。
そう、金に燭台の火が当たったような色合いの、金色。
恐ろしいくらいに整ったお顔のその神様は、私見るとにこりと笑った。


「………い、いつから居ました?」


ついつい目を見開く。全く気が付かなかったからだ。


「えーと、驚かせるつもりは無かったんだ。こんにちは、審神者さん。少し、話をしても良いかな?」

「…はい、勿論。はじめまして、貴方は…」


「…名を名乗ると、契約になってしまうから。お兄さん、とでも呼んでくれると嬉しいな。どうぞ宜しく。敵なんだけどね。」



その神様は笑って、窓を閉めた。






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