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  ばーさす太郎太刀 その3




頭を下げる太郎太刀さんに、私は震える喉を叱咤する。
大きな大きな体。何故だか今は私よりも少し小さく見える。…この気持ち、なんだかとても嫌だ。彼のこんな姿を見ていたくない。



「ま、待って下さい。
それは、貴方にとってなんの利があるのでしょう?

もう充分じゃないですか?

貴方は、反省をしたからこそ言葉を発さなかったのでしょう。
左文字の皆様に申し訳ないと思って居たからこそ、その行動に出ていたのであれば、貴方が望んでいる行為は、左文字の皆様は望まない筈です。
それに次郎太刀さんだって、どんな気持ちで私を呼びに来たのか…

貴方はそれを理解しなきゃ、いけない筈です。」


精一杯に絞り出た言葉達は全て不器用で、吹いたら直ぐに消えてしまいそうな、そんな弱々しさを持っていた。
わたしは、動揺をしてしまった。


「分かっています。それを理解した上で、貴女にお願いをしています。

安心して下さい。
貴女が私に刃を突き刺しても、決して私は動きません。
術を掛けて頂いた方が安心されるのであれば、それを受け入れます」


太郎太刀さんの言葉はひとつひとつがやけに心を抉る。
私の言葉なんて予想していたのだろう。
すらすらと返答を述べる、述べさせてしまうこの現状。現実。それが、なんだか私は恥ずかしくて、情けなくて。
涙腺崩壊とはこういう事を言うのだろうか。ぶわっと出た涙を、拭うことなく彼と目を合わせる。


「そういう、事じゃなくて!!

貴方は反省をしたでしょう、と言っています!!反省をしたのなら、左文字の皆様に謝って、それを受け入れてもらえるよう努力すべきだと言っているんです!!!」


荒げた声は部屋の中に反響するぐらいの叫びになった。

太郎太刀さんは、少しだけ目を見開く。そんな事もお構い無しに、私は彼の手を無理やり掴みながらそう言った。

ぽかん。

わたしに握られた手を振りほどく事なく、その手は寧ろ強く強く握り返して、彼は顔を漸く歪めた。



「私が、やった事なのです」


虚ろでいて、悲しくて、そんな彼が無表情を崩さなかったのには、きっと理由があるんじゃないか。
やっと見ることのできた変化がこんなにも痛々しいものであるのは悔やまれる。
彼は続ける。どばどばと黒い何かを吐いていく。


「小夜左文字を痛め付ける際に、宗三左文字を、江雪左文字を殺す際に私がした事です

貴女にお願いしているのは、私がやったことを、私に返して欲しい。ただそれだけなのです」



「…それを、されて、貴方は刀解されたいのですか」


ぎりぎりと爪が食い込む痛さなんて構っている暇はない。
彼はもっともっともっとこれ以上無いってくらい痛いのだ。


「…だって、そうでしょう。そうしなければ私は私を許すことが出来ません

面を挙げ、声を出すことすら出来ないのです。

可笑しいとは思いませんか?
自分がした行為が自分に返ってくる事を怯えながら生活する事が、贖罪だなんて。」


「私は声を、目を、全てを閉ざして、それに怯えていたのです。いずれ、必ずやって来るそれを見るのが、怖かった。」

「因果応報、自業自得。私は私がした行為を許す事が出来ないでいながらも、それが返ってこない事を願っているのです。


それが、それが何より腹立たしい。
それが何より怖いのです。

だからどうか、私を嬲り、笑って下さい。
そしてその後に刀解される事で、私は初めて、本霊へと還る事が出来るのだと信じています。信じたいのです。」




「…本当にそうでしょうか?」


「…は、」

「私は、左文字の皆様の思いも背負ってここにいるつもりです。果たしてそれが本当に贖罪になるのでしょうか?」







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